こんごう型護衛艦

登録日:2014/9/15 (月) 9:36:00
更新日:2023/07/12 Wed 23:52:07
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こんごう型護衛艦は、海上自衛隊ミサイル搭載護衛艦 (DDG)。


【スペック】

諸元
基準排水量 約7250t
満載排水量 約9485t
全長 161m
全幅 21m
深さ 12m
喫水 6.2m
速力 30ノット+
航続距離 6000浬(20ノット)
乗員 300人


兵装
54口径127㎜単装砲(OTOメララ127mm単装砲) 1基1門
Mk.41ミサイル垂直発射装置 (VLS) 前29セル 後61セル 計90セル
高性能20mm機関砲(Mk.15ファランクス) 2基 (CIWS)
4連装艦対艦誘導弾発射管 2基
3連装短魚雷発射管 2基


レーダー及び電子兵装
AN/SPY-1Dフェーズド・アレイ・レーダー(対空)
OPS-28Dレーダー(対水上)
OPS-20レーダー(航海)
OQS-102艦首対潜ソナー
OQR-2曳航ソナー
Mk.99/SPG-62 FCS(ミサイル) 3基
81式射撃指揮装置2型-21 (FCS-2-21) FCS(砲)
NOQ-2統合電子戦装置
Mk.137電波欺瞞紙(チャフ・フレア)発射管 4基


機関
COGAG方式IHI LM2500ガスタービンエンジン 4基2軸
最高出力 100000馬力


艦載機 無し(ただしヘリの発着艦及び給油機能は存在する)



前級 はたかぜ型護衛艦
次級 あたご型護衛艦



【概要】

こんごう型護衛艦は、昭和63年度の中期防衛力整備計画に基づき建造された海上自衛隊の第四世代のミサイル搭載護衛艦 (DDG) で、海上自衛隊に配備された初のイージス艦(イージスシステム搭載護衛艦)であり、アメリカ海軍以外が初めて保有したイージス艦でもある。
本艦の完成によって、それまで太平洋戦争の教訓とアメリカ海軍第七艦隊の下請けとして対潜水艦戦闘に特化していた海上自衛隊にとっては初の本格的な艦隊防空能力を有する艦となり、艦隊防空能力向上に繋がった。
また、後継艦であるあたご型が就役するまでは、海上自衛隊が保有する戦闘艦の中で最大の排水量を持っていた。
一隻当たりの建造費は約1200億円(現在の海上自衛隊の主力艦であるむらさめ型が約600億円、たかなみ型が650億、あきづき型で約750億円である)。
同型艦は4隻。


【特徴】

本艦の艦体はアメリカ海軍のイージス艦アーレイ・バーク級駆逐艦フライトⅠを基に設計されているが、日本独自の要求として艦隊旗艦としての能力追加。さらにダメージコントロールや冗長性、艦体強度向上を考慮して艦体には高張力鋼などの頑丈な特殊鋼を採用。
その結果こんごう型はアーレイ・バーク級に比べCIC(戦闘指揮所)と通信機能が大幅に強化、充実され艦体は一回り大きく艦橋は2層高いものとなり、排水量ではタイコンデロガ級巡洋艦に匹敵するほどとなった。
その一方でアーレイ・バーク級がステルス性を意識した塔型マストを採用したのに対し、こんごう型は従来の鉄骨を組み上げたようなラティスマストを採用。対艦ミサイルを独立した発射管に収める、煙突部分のエッジ部が丸いなどステルス性への配慮がやや欠けている。
また後述のように武装や電子機器類などもオリジナルのアーレイ・バーク級駆逐艦と異なる点が多い。

建造当初こんごう型護衛艦のイージスシステムは、1番艦こんごう、2番艦きりしま、3番艦みょうこうがベースライン4を4番艦のちょうかいのみベースライン5の日本仕様である「J1」を搭載していたが、現在はBMDへの対応のため全艦改修受けており、ベースライン5.2へとアップデートされている。
このイージスシステム、実はアメリカから輸入された完全なブラックボックスで、核心技術に関する情報を日本は一切関知しておらず、さらにイージスシステムのコアと同等の機密を有する一部の装備品(イージスシステムを構成するサブシステム)がオミットされたいわゆる輸出版のモンキーモデルである。


【武装】

  • 54口径127㎜単装砲(OTOメララ127mm単装砲)
こんごう型の艦首に装備されている主砲にして原型のアーレイ・バーク級駆逐艦とのパッと見の相違点その1。
イタリアのOTOメララ社が開発した傑作砲。製造は日本製鋼所がライセンス生産。
アーレイ・バーク級フライトⅠが搭載するMk.45Mod2と比較するとやや重量があり、構造も複雑であるが発射速度が約2倍以上もあり対艦対空どちらにも適応可能な万能砲としての性格を持つ。
本砲は後に建造されたたかなみ型の主砲としても採用されている。
余談だが本砲は、元来イージスシステムのサブシステムとは異なるため国産の81式射撃指揮装置2型-21 (FCS-2-21) によって管制され、イージスシステムへのすり合わせに大変苦労したという逸話がある。

  • Mk.41ミサイル垂直発射装置 (VLS)
御存知イージス艦の主力兵装。こんごう型では艦首側に29セル、艦尾側に61セル装備されている。
米軍ではここに対艦ミサイル、巡航ミサイル、対空ミサイル、対潜ロケットが混載されているが、こんごう型の場合巡航ミサイルは装備されておらず、対艦ミサイルは発射管ごと独立しているため対空ミサイル(SM-2MR)と対潜ロケット(VLA)及び弾道ミサイル迎撃ミサイル(SM-3)のみを装備していると思われる。
なおどのミサイルがどの程度何発装填されているかは、最大級の軍機とされている。

  • 高性能20mm機関砲(Mk.15ファランクス)
対空及び対艦防御用のの最終兵器。いわゆるCIWS。艦の中心線上に2基装備されている。
現在のこんごう型では最新のBlock1Bに更新されている。

  • 4連装艦対艦誘導弾発射管
こんごう型最強にして最長のリーサルウェポン。いわゆる対艦ミサイル。煙突脇の両舷に1基ずつ装備されている。
搭載するミサイルは米国製のハープーンミサイル。最大射程は推定100~150km程。

  • 3連装短魚雷発射管
対潜水艦用の短魚雷を収納した魚雷発射管。対艦ミサイル同様両舷に1基ずつの装備となっている。潜水艦用なので対水上目標には使えないらしい。


【レーダー及び電子兵装】

  • AN/SPY-1Dフェーズド・アレイ・レーダー(対空)
イージス艦の目にして最大の特徴ともいえるパッシヴ式のフェイズド・アレイ・レーダー。対空レーダーで、パッと見は艦橋に装備されたクリーム色の八角形の巨大な板。
原型となったレーダーが70年代の設計であるため構造的には旧式であるが、その性能は現在でもトップクラスで、最大探知距離は500km、同時に追尾できる目標数は200以上と言われ、BMDの際には、レーダーのエネルギーを集中させ走査することで、1,000km以上の最大探知距離を実現するとされている。
またいくたの実戦を潜り抜けているため、信頼性も高くある米海軍士官はSPYレーダ表示画面に目標を視認すれば、そこには目標が存在する。表示画面に目標を視認しなければ、そこには絶対に目標は存在しない。と言い切っている。
ロッキード・マーティン社製。

  • OPS-28Dレーダー(対水上)
汎用護衛艦 (DD) にも搭載されている対水上捜索・低空警戒用のパルス・ドップラー・レーダー。
水上目標のみならず、低空警戒レーダーとして低空を飛行する対艦ミサイルなどの探知にも使用できるが、遠距離における精密捜索を重視したことで近距離での捜索能力が低下し、これを補うため、OPS-20航海レーダーが搭載されることが多い。
日本無線社製。

  • OPS-20レーダー(航海)
航海用の近距離探査用のレーダー。主にOPS-28の補助。
日本無線社製。

  • OQS-102艦首対潜ソナー
艦首水線下に装備された潜水艦捜索用のアクティブ・ソナー。電子装備面で原型となったアーレイ・バーク級との相違点1。
アーレイ・バーク級ではAN/SQS-53というソナーを装備している。がこのソナー、イージスシステムの対潜システムであるはAN/SQQ-89統合対潜システムの一部で、このシステムの機密レベルが高かったためこんごう型のイージスシステムからオミットされて輸出されたのである。
そこで海上自衛隊はAN/SQS-53の代替としてしらね型護衛艦に装備されていたOQS-101艦首対潜ソナーを基に本ソナーを開発した。その性能は流石対潜バカの海自というべきかオリジナルのAN/SQS-53と同等といわれている。
実際あたご型建造の際には最新のAN/SQS-53Cが輸出されている。
余談だが対潜戦闘システムもしらね型護衛艦に装備されていたOYQ-101対潜情報処理装置を基にOYQ-102対潜情報処理装置を開発。こちらもAN/SQQ-89統合対潜システムに匹敵するものと言われている。米帝ザマァ。

  • OQR-2曳航ソナー
OQS-102艦首対潜ソナーを補完する曳航型のパッシヴソナー。OYQ-102対潜情報処理装置の管制を受ける。

  • NOQ-2統合電子戦装置
こんごう型の艦橋に装備された電子戦装置。原型となったアーレイ・バーク級との電子装備面及びパッと見の相違点2。
アーレイ・バーク級ではAN/SLQ-32という電子戦装置が装備されているがこれはryというわけで代替として開発された。性能はオリジナルのAN/SLQ-32v3と同等とされているが、こちらはあたご型建造の際にも輸出されなかった。

電子戦って?
ざっくりかいつまんで解説すると現代兵器はレーダーをはじめ、ミサイルの誘導や射撃管制装置などに多くの電波を利用した兵器が利用されている。
そこで戦闘を有利にするためいち早く敵側の電波を探知(ESM)してこれを妨害(ECM)、無効化することが重要となってくる。
そしてこれら電子戦を行うのが電子戦装置である。かつてはESMとECMで別の装置を装備する必要があったが本装備品はESMとECMの能力両方を持っている。
また現代艦はかつての戦艦のように重厚な装甲が廃れたのは、兵器一発あたりの威力の向上や建造時のコスト削減といったほかに、このような電子戦装置によって敵の攻撃を無力化する方が効率的と判断されたのも一因である。
まさにあたらなければどうというものでもないわけである.

  • Mk.137電波欺瞞紙(チャフ・フレア)発射管 4基
チャフとフレア。アメリカからの輸入品。


【機関】

ゼネラル・エレクトリック社が開発したゼネラル・エレクトリックLM2500ガスタービンエンジンをIHIがライセンス生産したものを4基シフト配置で搭載している。
因みにこのLM2500ガスタービンエンジンは航空機用のジェットエンジンを基に船舶用に再設計したものである。
ガスタービンの利点としては、軽量大出力であること。従来の艦艇用主機に比べて整備性が良いこと。出力の増減が迅速に行えること。高速時の燃費が良いこと。静止状態から急発進ができること。低周波の振動が少なく、高めの周波数の騒音対策だけで済むこと。等が挙げられる。
反面欠点としては、小型軽量であるがゆえの重心上昇などの点を、艦艇の設計にあたって留意する必要があること。基本的に燃費が悪い。といった点が挙げられる。


【同型艦】

DDG-173 こんごう
こんごう型護衛艦1番艦。
1990年5月8日起工。1993年3月25日竣工。第1護衛隊群第5護衛隊所属(司令部:横須賀基地)。定係港:佐世保基地 。

DDG-174 きりしま
こんごう型護衛艦2番艦。
1992年4月7日起工。1995年3月16日竣工。 第4護衛隊群第8護衛隊所属(司令部:呉基地)。定係港:横須賀基地。

DDG-175 みょうこう
こんごう型護衛艦3番艦。
1993年4月8日起工。1996年3月14日竣工。 第3護衛隊群第7護衛隊所属(司令部:舞鶴基地)。定係港:舞鶴基地。

DDG-176 ちょうかい
こんごう型護衛艦4番艦。
1995年5月29日起工。1998年3月20日竣工。 第2護衛隊群第6護衛隊所属(司令部:佐世保基地)。定係港:佐世保基地。


【余談】

我が国がイージス艦を導入したのは、シーレーン防御への対応を迫られる中でソ連海軍の海洋戦略爆撃機・長距離対艦ミサイルに対抗する必要があったからだった。
ところが、「こんごう」の登場に前後してソ連が崩壊。最大の脅威がなくなってしまった。

このことに対するこんごう型への評価は二つに分かれた。

一つが「脅威がなくなったのだから、もうイージス艦なんて金食い虫いらないだろ」という否定的な意見である。ソ連海軍の後継者であるロシア海軍はズタボロだし、中国海軍はやる気はあっても質が伴っていない、だから軍事的価値などない、という論調である。

もう一つが「ソ連以外の脅威があるのだから、まだイージス艦の価値はある」という肯定的な意見である。冷戦体制が崩壊したので領土・宗教・民族対立が軍事衝突に結びつく可能性があり、ロシア海軍の勢力は馬鹿にできないし、さらには北朝鮮の核兵器・ミサイル開発も見過ごせない、だから軍事的価値はある、という論調である。

……結局どちらの意見が正しかったのかは、今般の情勢を見ればわかるだろう。


追記・修正はBMDの改修を受けた方からお願いします。

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最終更新:2023年07月12日 23:52