艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!

登録日:2014/07/31 Thu 11:55:01
更新日:2022/12/11 Sun 17:48:23
所要時間:約 34 分で読めます





ここで引いたら駆逐艦( おんな )じゃない!



艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!』は、DMM.com提供のブラウザゲーム『艦隊これくしょん』のメディアミックス作品の一つ。
単行本レーベルはファミ通文庫。作者は『まぶらほ』『けんぷファー』等を手掛けた築地俊彦で、イラストはNOCOが担当。単行本は全7巻。
3~5巻、並びに最終7巻は通常版の単行本の他に、小冊子付属の特装版も刊行された。




【概要】

『艦隊これくしょん -艦これ-』のメディアミックス作品の一つであり、小説作品の媒体では実質初陣を切って発表された。展開時期は2013-2015年。
主人公は陽炎型駆逐艦一番艦「陽炎」、そして彼女を含めた第十四駆逐隊の6人の駆逐艦。

基本的に駆逐艦目線かつ、作者の作風でもあるのか戦艦空母は駆逐艦にほとんど関わりを持たないという異例の作風を持っている。
艦種が完全にヒエラルキー化した縦社会世界でありその辺りもまた「体育会系的」である。
駆逐艦組がローティーンからミドルティーンの少女コミュニティだとすれば、戦艦・空母組は20代より上の「大人のコミュニティ」の人々と言った感じ、
その為艦種を問わず関わりを持たせるのが好きな人にはこの作品は向かない。
代わりに消耗率の高い過酷な艦種でありながら、実際の「車曳き」を思わせる勇敢で気持ちの良い、駆逐艦と書いて「おんな」と読む少女たちの物語が展開されている。

メインキャラに死亡者は出ないものの、その裏では多くの犠牲者が出ていることを匂わせる描写、
戦艦や空母に比べて駆逐艦の死亡率は高い、年端もいかない少女を兵器として戦わせる倫理観の問題など、舞台背景にはブラックな要素が多い。
しかし、メインとなる艦娘たちは皆心に熱いものを秘めた前向きな性格であり、
過酷な世界観はスパイス程度に、艦娘たちの軽妙なやり取りや少年漫画的な友情を楽しめる王道スポ根物語と言える。

後述のキャラ紹介の通り、本作では「複数の鎮守府が有り、それぞれに別な提督が在任している」設定になっている。
他の作品では鎮守府は一つで提督も一人しかいなかったり、提督自体は複数でも同じ鎮守府内に居るケースが多いが、
本作では鎮守府間の提督の方針やキャラクターの違いを見る事が出来るのも特徴である。

羅針盤やE(イベント)海域などのゲーム内の設定や史実要素を小ネタとして落とし込んでおり、ニヤリとできるかもしれない。
また毎回のように行われる駆逐艦同士での拳で語る殴り合いや、深海棲艦へのインファイトはこの作品の名物でもある。

ちなみに、企画当初は吹雪に第六駆逐隊という当時からゲームの方で人気を博していた面々を主役にする予定だったが、
既に進行中だった別メディアミックスと布陣が被っていたため*1、代わりに陽炎型睦月型を勧められて現在の形になったとのこと。


【あらすじ】

呉鎮守府から横須賀鎮守府に突然異動となった駆逐艦娘「陽炎」は、転属早々第十四駆逐隊の嚮導艦(駆逐隊の指揮艦)を任されるが、
そのメンツは一癖も二癖もある問題艦が集まった「寄せ集め」駆逐隊だった。
笑いあり涙ありの、陽炎の奮戦の日々が始まる。


※以下、作品内容のネタバレを含んでいるので注意。


【世界観】

  • 社会情勢
舞台は三浦半島、横須賀、呉など日本と同じ地名を持つ島国(国名は明言されていない)。
これまでの戦いにより防衛ラインは押し上げられ本土近海で深海棲艦が発見されることは稀になってはいるが
深海棲艦により大陸との海上交通網が封鎖されているため物資不足は深刻であり、
牛肉や甘味が貴重品であるなど艦娘の船団護衛をもってしても物資情勢は依然として厳しいままである。
技術レベルは現代日本とそう変わらず携帯電話スマートフォンが普及しているが
機密保持の名目で艦娘は外部との連絡が制限されており、手紙でのやりとりが主流となっている。
なお、この世界でも広島にはカープサンフレッチェがあるらしい。


10年ほど前に世界中の海に突如出現した正体不明の敵性存在。
海を通る船舶および海上を飛ぶ航空機を問答無用で攻撃し、事実上世界の制海権を握っている。
一説には古来からの沈んだ船の怨念が形を持ったものと言われている。


  • 艦娘
深海棲艦に対抗するため人類が開発した特殊な装備を扱うことができる女性たち。
装備は一揃え纏めて「艤装」と呼ばれており、各艤装ごとに適正が合う人間にしか本来の力は発揮できず、
適正のない者が使えばただの服とガラクタに成り下がる。
またゲームで言う所の装備に相当する追加の艤装類は他の艦でも使い回し可能だが基本の艤装(服など)は他の艦娘では使えない。
同型艦なら調整を行えば他の艤装と合わせることもできるようだが、設備が必要なため現場での交換は不可能。
艦娘は艤装を装着している間は特殊なフィールドで守られているため通常の人間よりもずっと丈夫であり、
加えて着ている服が「装甲」として受けるダメージを軽減するため人間サイズでありながら軍艦と同等の耐久力を持つ。
武装も人間サイズではあるが通常兵器と同等の破壊力があり、駆逐艦が片手で持つ小口径砲でも建造物を容易に破壊できるだけの威力がある。
背部に背負う「缶」で推力を発生させ、足に装着し浮力を発生させる「主機」から出力することで推進しており、主機が破壊されると沈没する。

元は普通の人間で、志願制で様々な検査の末に適性を認められた者だけが艦娘候補となり、
江田島での基礎訓練を終えた後に各々の適正の合った艤装が与えられ、以後はそれまでの名前を封じて艦名を名乗ることになる。
軍属として給料も出ており食事は三食支給、定期的に休日もあり制限はあるものの外に出ることも許されている。
定年は特に定められていないが、本人の希望もしくは傷病により再起不能となった場合退役し、艦名と装備を返還した上で元の生活に戻れる。
艦娘に志願するにあたっての動機は、主に深海棲艦に対する義憤もしくは食うに困った末の選択肢であることが多く、
場合によっては提督の身内が艦娘として活動しているケースも存在する。

艦娘は時折過去の映像のフラッシュバックや記憶のフィードバックのようなものが発生することがある。
これは艤装にかつて在った艦の魂が宿っているためと噂されているが、
世論の批判をかわすなどの目的のため艤装の製造過程などの詳細は艦娘本人にさえも明かされていない。

ゲームの方には「疲労度」のシステムがあるが、小説においても赤色や黄色といった形で艦娘内輪のスラングとして用いられている。
目の充血などといった形で具体的な兆候として表れる場合もあるらしい。

ちなみに近代化改修や改造などといった作業は、各鎮守府に務める人間の技師さんによって行われる。
妖精さん?そんなファンタジックなものはない。

これら綿密な設定もあってか、所謂プレイヤー間の「My鎮守府設定」談義における艦娘=人間説の最右翼とも言えるのが本作であり、
そういう話題で盛り上がった際には『陽炎抜錨』の名前が挙げられる機会が多い。


  • 鎮守府
艦娘たちの前線基地であり活動拠点。
寮は戦艦、航空母艦、巡洋艦、駆逐艦と艦種ごとに分かれており、大型艦ほど人数が少なくなるため相対的に待遇が良くなる傾向にある。
特に駆逐艦は圧倒的に人数が多いので相部屋が基本で待遇はあまり良くない。
なお、駆逐艦寮は大人数で利用する為か浴場の大きさだけは他の寮より大きい。

なお他メディアミックスにも言えることだが、作中に出てくる鎮守府及び泊場は全て実在した基地名(及び艦これサーバー)を元にしている。


【登場人物】

主に作中で台詞付きで登場している人物を紹介。
直接登場していない人物・本編外に出番が割り振られている人物は「☆」を併記する。


◆第十四駆逐隊

横須賀鎮守府に転属した陽炎が嚮導艦として任された駆逐隊。
鎮守府でのはぐれ者を集めた部隊のようで、どの艦娘もどこか一癖ある事情を隠している。
実際の歴史での第十四駆逐隊は太平洋戦争中には空席となっており、それを活かしたものだと思われる。


  • 陽炎
陽炎型駆逐艦1番艦。主人公。
呉から横須賀に転属してきた駆逐艦娘。着任早々第十四駆逐隊の嚮導艦を任される。呉では第十八駆逐隊に所属していた。
陽炎型の長女らしく、明るくて努力家。
当初は第十八駆逐隊のアクの強さ、纏まりの無さに投げ出しそうになるが、持ち前のリーダーシップで駆逐隊を纏めあげ、艦娘として成長していく。

誰にでもすぐ「可愛い」「好き」という癖があり、天然のたらし気質とも言える。
呉の不知火は深く通じあっている相棒で、横須賀に移ってからもよく手紙を描いている。
彼女が横須賀に来ると聞いた時は周りが呆れるほどに舞い上がっていた。
2巻で行方不明になった不知火を救出するために第十四駆逐隊全員で「改造」を受けている。

時折挟まれる描写から艦娘になる前は相当荒んだ環境にいたことを想像させる。事情があってバイトも出来ず料理全般と接客も苦手。
艦娘になる前の本当の名前は不知火のみに教えているという。7巻ラストでは曙と別れ際に本名を明かし合った。
呉での新人時代では史上最低の訓練成績を叩き出した落ちこぼれだったが、
神通の猛訓練と持ち前の努力により立派に一人前の駆逐艦へと成長。
一方内心どこかで死ぬほどキツい訓練を求めてしまうほどの訓練ジャンキーとなっている。

本編1巻の少し前、予想だにしていなかったまさかの文化祭代表の一人に選ばれる。
本人は向いていないと言ったが次第に熱が入り、不知火達の制止すら耳を貸さなかった。
張り切りすぎて仕舞いには熱を出して倒れてしまったり。

6巻では第十四駆逐隊と共に一時的に佐世保鎮守府へ転属に、さらに秘書艦に抜擢されてしまう。
前線での戦術的な観点での戦いとはまた勝手の違う、戦略的な観点からの戦いを経験することになる。

イラスト担当のNOCO氏の意向か、挿絵や表紙に描かれる彼女の姿は原作ゲームに比べても胸部装甲が明らかに増し増し
ぶっちゃけ十四駆のメンバーでは潮の次点レベルのサイズを誇っている。


綾波型駆逐艦8番艦。1巻のヒロイン。所属は横須賀鎮守府で元第七駆逐隊。
とにかく口が悪く常に不機嫌そうな、全方位ツン娘。
当初は駆逐艦の仕事もバカにしているひねくれっぷりで、陽炎とは度々衝突していた。
その一方で操艦や砲撃技術など艦娘としての能力は非常に優秀であり、不知火曰く「天才」。
技術は文句なしに優秀だがメンタルに弱点があり、仲間の危機などに際するとパニックに陥りやすい。

元は任務に忠実で、駆逐艦であることを誇りに思う真面目な性格だったが、
ある船団護衛に失敗し惨憺たる被害を出してしまったことが原因でこのような性格になってしまった。
1巻では周りが徐々に仲間として打ち解けている中、頑なに歩み寄ろうとしなかった。
その後演習中に発生した深海棲艦による船団襲撃を、自身のトラウマを払拭するためか単艦で飛び出しあわや轟沈しかける。
沈没寸前のところを陽炎ら第十四駆逐隊に助けられ、遂に陥落。

この一件で陽炎に対しては中々本音を言わないものの信頼するようになり、
以降はすっかり素直になれない態度を周りからからかわれてムキになる、弄られ役と化している。
陽炎が元相棒である不知火の名前を出すと不機嫌になる節があり、2巻では不知火と実戦形式のキャットファイト(という言葉では生ぬるい戦いだが)を行った。

過去編では嫌々ながら騙されながら呉の文化祭に赴く。
鬼怒にしっかりと報復したり騙されたことに怒りながらも、潮らに止められて呉に留まる。
案内役の霞と口論になり、翌朝のランニングでも罵り合いながら張り合ったりと真っ向からぶつかる。
騎馬戦では売り言葉に買い言葉で禁句を言ってしまい、騎馬戦を挟まずに殴り合いへと発展させる口火を切った。


  • 皐月
睦月型駆逐艦5番艦。佐世保鎮守府からの転属。元は第二十二駆逐隊所属。
陽炎の横須賀鎮守府でのルームメイトとなる。
トレーニングが好きで座学が苦手な筋肉バカ。常に体を鍛えてるのは睦月型の艦としての性能の悪さを補い、
ひいてはその性能への自身のコンプレックス、正確には同じ睦月型ながら優秀な二十二駆の同僚文月への劣等感の解消のためだった。
また以前は、体が弱い上体力が少なく、どこか諦めたように過ごしていたことが明かされ、
自分でもどうして艦娘になれたのか不思議なくらいだったらしい。
魚雷から自分を守ってくれた霰を見て、自分の虚弱を旧式の睦月型艦のせいにしていてはいけないとトレーニングを決心した。

明るく人懐っこい性格で、第十四駆逐隊の中でも陽炎と早くから打ち解けていた。同室ということもあり、陽炎との絡みは多い。
3巻では陽炎の代わりに不知火の手紙を受け取っていた。
最近は飲めもしないビールを飲むのにはまっており、鳳翔からよくビールを貰っては部屋に隠している。


  • 長月
睦月型駆逐艦8番艦。皐月と同じく佐世保鎮守府からの転属かつ元第二十二駆逐隊所属。
古風な喋り方をする艦娘。霰を一方的に気に入っている。
初期の第十四駆逐隊は長月と霰の二人だけであり、その間に入ってこようとした陽炎に対しては当初激しく拒絶していた。

1巻の時点では威勢のいい武人めいた言動は実は虚勢。
睦月型の性能の悪さのために砲撃がド下手であり、霰を守ると言って側にいたのも、実際は腕のいい彼女を頼っていただけだった。
これは皐月同様真の原因は文月への劣等感だったりする。
そのコンプレックスを克服した2巻以降では大きく成長し、言動に見合った頼もしさを身に付けた艦娘となった。

同型艦の皐月とは同じ佐世保からの転属であるが、当初は「筋トレマニア」扱いし疎遠だった。
しかし第十四駆逐隊で組んで以降は徐々にコンビを組む機会が増えている。
現在ではそのリーダー適性から、陽炎不在や部隊を分けた際には代わりの嚮導艦を任せられるようになっている。

過去編では、日々の砲撃訓練でも底辺層の成績しか出せない自分を嫌悪し、
武士然とした性格が暗くなっていっそ陰鬱とした後ろ向きだった様子が描かれた。
やる気に技術が伴わないためネガティヴになっていて、二言目には「とうとう左遷か」と嘆き出しかねないほど。
呉の騎馬戦で危うく駆逐艦玉の下敷きになりそうだったところを霰に助けられたことや、
皐月を魚雷から守ってみせた霰の雄姿に感化された過去が描かれた。


綾波型駆逐艦10番艦。曙と同じく元第七駆逐隊所属。
お節介扱いされながらも曙をかばう弱気な艦娘。隠れ巨乳。そのせいで大抵14駆メンバーに胸ネタで弄られてるが。
曙がプライドを踏みにじられた船団護衛任務で唯一無傷であったことが、彼女に対する負い目となっている。

普段は臆病な面もあるが、芯は強い。
1巻で曙を救出した以降は臆病さも改善され、曙があまりにツンな態度を取った際は強気に釘を刺すなど、むしろ彼女を尻に敷いている面も出るように。
「スクラップが喋りました、どうしましょう」

過去編ではツッケンドンしていた曙とどうにかして付き合おうと苦心していた様子が描かれた。
半ば騙すように曙を呉に連れて行き、到着早々に世紀末豆まきに巻き込まれる。
復讐鬼と化した駆逐艦から逃げる鬼怒に鬼の面を被せられ、鬼と認識されて豆をぶつけられる。
無論抗議したが「お前のような巨乳の駆逐艦がいるか」と(なまじ呉に浜風という前例がいて、別の場所で行動してことも災いした)一蹴され逃げ回るはめに。
外せばいいのに「勝手に捨てたら悪いです……」とどこか抜けた良識を発揮した。
料理が上手で、5巻では食材がホタテしかない状態で様々なホタテ料理を作ってみせた。

6巻の最後に決意を固め、7巻にて「改二」となった。


朝潮型駆逐艦9番艦。
元は呉の第十八駆逐隊所属であり、陽炎とは旧知の仲。先に横須賀に転属になっていた。
作中文章では小柄と書かれていたが、挿絵では背は陽炎の次に高い。彼女しか被ってない煙突帽子の分を差し引いても。

超絶無口。第十四駆逐隊に回されたのは駆逐隊の割り振りの際に黙っていたせい。呉から離れる際も喋らなかったので陽炎は霰の行方を知らなかった。甘党。
普段はあまり目立たないが、比較的新鋭の朝潮型であるため砲撃の腕は非常に優秀。 第十八駆逐隊時代よりも腕前は上がっており陽炎を驚かせた。
そのためかつては長月に依存されていたが、自身もそれに甘えているところがあったと言っている。時々それをネタに長月をからかう一面も見せるようになる。

過去編では相変わらず無口だが、騎馬戦で見知らぬ長月や皐月を助けたり、敵の攻撃から二人を守ったりと活躍。
皐月に向かう魚雷を主砲で早期爆発させる高度な砲撃を披露した。
その在り方は長月と皐月に多大な影響を与え、陽炎着任前までの彼女らの言動を築き上げるに至った。


◆横須賀鎮守府


1-2巻の物語の舞台。
戦艦・空母などの主力艦が揃った比較的規模の大きい鎮守府。


横須賀鎮守府の主。陽炎を呉鎮守府から引き抜いた張本人。
E海域への対策などでよく他の鎮守府から一時転属扱いで艦娘を引き抜くことが多く、呉鎮守府からは借りパク司令官として噂されているとか。
何かと艦娘に触る、戦艦や空母や駆逐艦である雷に甘えようとするなど、一見すると典型的なセクハラ提督のダメ男。艦娘の足の裏を見ることとうなじを舐めることが好きと語る変態。

その一方で曙を気にかけていたり、命令違反した第十四駆逐隊を不問にする、時には汚れ役を一身に背負って艦娘の嫌われ役になるなど、まともな面もある。
本人は「俺は艦娘と仲良くなるために提督になったんじゃない」と語っている。
指揮官としては作戦の前には十分な資材を確保してから臨むなど、周到な準備を好む慎重派。

多くの艦娘の命を預かる提督というものは、まともな神経では務まらないとリンガの老提督は語る。
その老提督によれば、着任当初は艦娘とまともに話せないほど臆病だったらしい。当初は失敗を繰り返し、秘書艦である鳳翔に何度も支えてもらっていた。
恐らくその時に多くの艦娘が犠牲になったと思われ、よく艦娘に触っているのも身体に触れることで彼女たちが「生きている」ことを確認したいためだという。


  • 愛宕
高雄型重巡洋艦2番艦。横須賀鎮守府の現秘書艦。
金髪で巨乳、ふわふわとした喋り方の艦娘。
何かと駆逐艦娘に「お姉ちゃん」と呼ばせようとしている。本人は大真面目のようだが、駆逐艦にとってはもはや脅し文句と化している。
ちなみに呼ばされた犠牲者は転属したてで事情をよくわかっていなかった陽炎のみ。
もっとも最近は上手くはぐらかされたりするので阿武隈に「お姉ちゃんと言ってくれなくて(14駆メンバーは)冷たい」と愚痴ったりもするが。

陽炎曰く「お色気担当」。この世界でも彼女の画像が大量に出回っているらしい。
言動や見た目に反して聡く、気配り上手の実力者。陽炎にとっては隠し事のできない相手。
1巻では第十四駆逐隊のピンチに、高雄と金剛型を引き連れて救援に現れた。
普段は掴みどころのない性格であるが、姉妹艦である高雄のことは大切に思っており、彼女を救出した陽炎に珍しく涙を浮かべてお礼を言っていた。
提督のセクハラにはやんわりとかわして釘を刺しているが、気遣う素振りも見せたりもする。


  • 高雄
高雄型重巡洋艦1番艦。
愛宕とは違って常識的。また、以前は高雄も秘書官を務めていた事もあったが、現在は妹に譲り前線での活躍に注力している。
普通人ゆえに横須賀鎮守府の癖の強い人材相手には苦労が絶えず、あまり余裕の無い面がある。お陰で胃薬が欠かせないとか。

妹艦である愛宕の助けになろうと決めており、
また艦尾を損傷しながら終戦まで生き残った「重巡洋艦高雄」の記憶からも、全ての艦娘に生きていて欲しいと願うなど、根は強い意思を持った勇敢な人物。

2巻では旗艦として摩耶・妙高・五十鈴・不知火を伴ってE海域への強行偵察を行う。
その撤退戦で不知火と共に壮絶な死闘を繰り広げ、度重なる航空攻撃と潜水艦からの雷撃により重傷を負うが、
不知火を助けるためボロボロの身体で、戦艦タ級の口内に魚雷の弾頭を突っ込み起爆させるという壮絶な戦法を行い相討ちとなる。
しかし、奇跡的に生存しており、陽炎らに救出され一命を取り留めた。


鳳翔型空母。穏やかな性格で母親のような雰囲気を持つ。
鎮守府の最古参で、ほぼ半退役状態だという。鎮守府内で小料理屋を営んでおり、評判が良い。
横須賀提督の初期の秘書艦であり、しばしば彼を支えていたらしい。彼女が現役だった頃の鎮守府は深海棲艦への対策も手探りな故に、もっと殺伐としたものだったとか。

皐月は彼女からよくビールを頂戴しているが、これは常に死と隣合わせの艦娘、特に撃沈率の高い駆逐艦に、せめて酒が飲みたいのなら自由に飲ませてあげたいという彼女の気遣いがある。


金剛型戦艦の金剛・比叡・榛名・霧島の四人。鎮守府の主力。
概要に前述した通り戦艦・空母は「雲上人」であり、彼女らの出番はあまり無い。

1巻で第十四駆逐隊の演習を見学に来ていた。
船団襲撃への救援は一度は「羅針盤が狂った」ため失敗するが、二度目の第十四駆逐隊の救出作戦に愛宕・高雄らと共に救援に現れ、瞬く間に敵艦を撃沈してみせた。


  • 摩耶
高雄型重巡洋艦3番艦。E海域強行偵察のメンバー。対空戦が得意。
威勢の良い姉御肌的な性格で、面倒見が良い。
姉である高雄の安否は彼女も心配しており、彼女を助けた陽炎たちに借りを返そうとしていた。


  • 五十鈴
長良型軽巡洋艦2番艦。E海域強行偵察のメンバー。
軽巡であるため、駆逐艦である不知火のことをよく気にかけていた。


  • 妙高
妙高型重巡洋艦1番艦。E海域強行偵察のメンバー。
落ち着いた性格。偵察中に敵艦隊の主力である南方棲戦鬼と遭遇してしまい負傷。摩耶・五十鈴と共に撤退する。


夕雲型駆逐艦の新人たち。呉で第十四駆逐隊と合流し、そのまま横須賀へと転属する。
短縮訓練しか受けておらず航行もままならないレベルのド新人だったが、陽炎を始めとする第十四駆逐隊から徹底的に駆逐艦としての手ほどきを受けることに。
7巻発売当時で最新の夕雲型だった「風雲」もいるが、艤装に必要な「艦の魂」が未だ見つからなかったため一人就任できておらず、7人が気負ってしまう原因となっている。


  • 那珂
川内型軽巡洋艦3番艦。横須賀鎮守府水雷戦隊の長で、説明不要の「艦隊のアイドル」。
戦闘中の激戦区であっても満面のパッション気質で指揮を牽引するなど生粋のカリスマ気質で、戦闘とそれ以外の差があるものの、ふざけた事によるミスは全くない、誰もが頼れる軽巡洋艦。
7巻での殲滅作戦出撃に際して改二となっている。


  • 鳥海
高雄型重巡洋艦4番艦。殲滅作戦に際しては、夕雲型の駆逐艦たちを率いて南方海域に出陣した。
理論派の気質。


島風型駆逐艦1番艦。小説本編では連装砲ちゃんが訓練のターゲット代わりに引っ張り出されたのみで本人の出番は無し。
4巻特装版の冊子収録の漫画(著:BLADE)で登場し、訓練機材不足に悩む第十四駆逐隊を相手に連装砲ちゃんのぬいぐるみの使用権を駆けた勝負を挑んでいる。


  • 朝潮 ☆
朝潮型駆逐艦1番艦。第八駆逐隊所属で、小説中では7巻で名前のみ言及される。
ギンバイ上等の駆逐艦娘たち、もとい「駆逐艦マフィア」が寄り集めた商品を均等に分配するブラックマーケット市場を開き、取り仕切っている模様。


◆呉鎮守府

陽炎が元いた鎮守府。
陽炎・不知火・霰と同じ第十八駆逐隊のメンバーである霞や、陽炎型の黒潮・雪風も呉鎮守府に所属している。
ゲリラ戦のような豆まき、騎馬とは名ばかりの殴り合い合戦を行う特異な鎮守府でもある。
豆撒きのゲリラ化は駆逐艦娘の暴走が主な原因だが、騎馬戦は観客・主催・提督ら全員が公認の殴り合いである。
というかギャラリーが一番盛り上がっているあたり乱闘騒ぎを見たいがためにやっている節がある。


  • 提督
横須賀の提督とは同級で仲が良く、何かと張り合っているらしい。
気心の知れた間ではあるものの、最近陽炎を始め横須賀に艦娘を引き抜かれていることには流石に不満気。
尤も本人も大淀を横須賀から引き抜いているので人のことを言えた立場ではないが。


  • 不知火
陽炎型駆逐艦2番艦。かつての陽炎のルームメイトで相棒。2巻のヒロイン。
冷静で無表情、目つきが鋭くドスの効いた声が特徴で、劇中でも怖がられている。深海棲艦のどてっ腹に穴を開けるのが趣味(by陽炎)。
常に丁寧語を崩さないが、陽炎相手には軽口めいたことを言うことも。食事の際も手袋を外さない。
呉では着任直後から秘書艦を任せられる優秀な駆逐艦で、砲雷撃戦の技術も非常に高い。
陽炎にとっては何でもできる頼れる相棒であり、困った際は彼女のことを思い浮かべることが多い。
呉所属であるため本人が劇中に登場する時間は少ないが、陽炎がことあるごとに彼女の名前を出すため存在感は大きく、
最終7巻でも最後の最後で陽炎を迎える役目を務めるなど、メインキャラクターを除けば全7巻唯一の皆勤賞

2巻では「E海域」への対抗のため、一時横須賀鎮守府に転属する。
その際に陽炎を元の呉鎮守府に帰ることを提案しており、第十四駆逐隊の反発を買う。
そのため曙と賭けとして演習での対決を行う(しかも曙がお互い一発だけランダムで発射する様実弾を混ぜていた)、
最終的に弾薬を撃ち尽くし拳での殴り合いになるが結果は引き分け。

普段は冷静な反面キレた時は恐ろしく、一度頭に血が上ると止まらない。
E海域攻略戦では高雄を雷撃し重傷を負わせた潜水艦に激昂し、潜望鏡を掴んで引きずり出し、
ゼロ距離で砲撃を加えて粉々にしてしまうという艦娘ならではの斬新な対潜攻撃を見せていた。
その敵艦隊との死闘で消息不明となるが、陽炎ら第十四駆逐隊の働きで救出される。

その後は短いながらも第十四駆逐隊のメンバーと親睦を深め、呉に帰っていった。
3巻では西方海域の攻勢に参加しており、終盤熊野らと共にリンガ泊地救援に駆けつけた。


  • 黒潮
陽炎型3番艦。
ほんわかとした関西弁娘。
「夏潮」等の姉妹艦が未実装のため*2、彼女が所属する第十五駆逐隊は黒潮一人のみ。寮でも一人部屋。
それでも駆逐隊の立派な一員なので神通の訓練生。敬語で話す際は標準語になる。
よく陽炎と不知火らの部屋に遊びに来ていたようで、情報力に定評がある。
完全にイメージだけでたこ焼き屋に任命された際、「こういう言葉遣いやからって、たこ焼き作れるとかは偏見ちゃうか?」とこぼした。でもやっぱり作れるらしい。
血気盛んな駆逐艦にしてはそれらしいところは見せなかったが、球磨を木から落とすためにチェーンソーを持ち出すあたりしっかりあの二人の姉妹艦である。
本人と示し合わせたとはいえ皆を説得して止めようとする神通を取り押さえようとするなど度胸も相当。かなり戦々恐々とはしていたが。


朝潮型10番艦。
指令駆逐艦。呉に所属して長いらしく、神通や大淀に霰や陽炎の転籍について意見を求められるほど。前回の文化祭代表駆逐艦でもある。

基本ツンツンしてはいるがかなりのお節介で、「自分でやりなさい」と言っても聞かれれば無意識に答えてしまうなど相当。
ただし上司不信は変わらないようで「クズ提督」呼ばわりしたらしい。本人曰く噂の「クソ提督」艦娘よりはマシ。
昔は仲間を嫌い一人でいることを望んだようだが、何かを経て現在の仲間思いな性格に。
自分と似ていると感じた曙を説得しようとしたが、あの調子なので上手くいかず喧嘩ばかりに。
騎馬戦では曙と相打ち。

陽炎のジゴロっぷりや不知火のクーデレ、霰の無口に呆れながら過ごしていた。
無口過ぎる霰を心配しながらも横須賀への転籍に賛成。「お姉さんのようですね」と言われて赤くなった。ちなみに霰の方が年上。
陽炎の件でも「出来れば横須賀には、ずっと探したままでいていて欲しいです」と本音をぽつりともらした。


  • 神通
川内型軽巡洋艦2番艦。呉鎮守府の第二水雷戦隊旗艦で、陽炎と不知火の上官。
一見気弱そうに見えるが、容赦の無い訓練を行う鬼教官。

本人が登場しない巻でも、毎度陽炎らによってその鬼教官ぶりに触れられている。
(例:「陽炎が吐く程の訓練に耐えた不知火にはその倍の訓練を課して吐かせた」「気絶するまで訓練、気絶したら叩き起こして訓練」等々)
海が荒れていればいるほど笑顔になり、快晴で穏やかな波になるほど悲しむ。
ただ、その厳しさは駆逐艦たちを誇りに思う故であり、勇敢で面倒見も良いとのことで、陽炎は憧れの人物として尊敬している。
呉所属の駆逐艦たちが優秀との評判が多いのも、おそらく彼女の指導の賜物なのだろう。

豆撒きで日頃の鬱憤をぶつられる、と燃えに燃える駆逐艦でさえ、彼女を前にすると威圧されて何も出来なくなる。
あの不知火ですら例外ではなく、陽炎に攻撃を押し付ける始末。一応言っておくが豆をぶつけるのが目的の行事であり「遠慮しないでください」と本人からも許可が下りている。


  • 熊野
最上型重巡洋艦4番艦。第七戦隊所属で旗艦。神戸生まれのお洒落な重巡。
2巻で名前のみだが鈴谷・三隈と共に横須賀に一時転属したことが語られており、3巻で登場。呉所属のため以前から陽炎とある程度の面識はあった。

お嬢様な口調だが、戦闘では優雅かつ苛烈で頼もしい面を見せる。鈴谷からは「お嬢様なのに雄々しすぎる」とのこと。
「鈴谷さえいればどれだけの敵がいようと切り開いて見せます」と相方への信頼は厚い。
第七戦隊はよくぶつかったり道に迷う癖があるらしい。そのため西方海域からの帰りに「道に迷って」リンガ泊地の救援に現れた。


  • 鈴谷
最上型重巡洋艦3番艦。第七戦隊所属。
軽い口調だが気さくな性格。相方の熊野とはよく軽口を叩いているがその絆は深い。


  • 三隈
最上型重巡洋艦2番艦。第七戦隊所属。普段は第八駆逐隊(朝潮型)を護衛につけているらしい。
相方の最上は秘書艦に抜擢されているため(最上型姉妹の「借りパク」に備えての采配)、最上型の中で唯一呉に残っている。

陽炎らと熊野・鈴谷と出撃していた北方海域からの帰り道に潜水艦に狙われ、陽炎に庇われ小破する。
その借りもあって、リンガ泊地の危機には不知火・熊野・鈴谷・飛龍・蒼龍らと共に救援に駆けつけた。


工作艦。呉鎮守府所属だが、一時横須賀に転属している。
海上でも軽く修理を行える、艦娘修復のプロ。北方海域からの帰投時に損傷した三隈と陽炎の修復を行う。
その後、曙に(半ば強引に)応急処置の方法を教えていたが、この一件が後の第十四駆逐隊の命運に影響する結果となった。


大淀型軽巡洋艦1番艦。4巻(前日談)の時点で呉鎮守府の秘書官を務めている艦娘。
元々は横須賀鎮守府所属だったが、呉の提督にヘッドハンティングされる形で呉に移動となった経緯を持つ。
ネジ一本、ワッシャー一つの場所すらも把握している、と評される程の高い管理能力を持つ極めて優秀な秘書艦。
もっとも更に「実は二人居るのでは」という任務娘の仕様に基づいたネタが有ったりする。
軽巡洋艦である為神通同様駆逐艦娘には畏れられているとの事。


4巻で登場。鎮守府付近で敵潜水艦を発見するが駆逐艦達に祭りを楽しんでもらうために
あえて対潜能力に優れた駆逐艦を呼ばず、かろうじてながら対潜戦闘が可能な自分たちだけで解決しようとした。
その一件を通して駆逐艦一同から贈られた名誉駆逐艦の記章は彼女たちの誇りであり、
伊勢は本来必要の無いものをつけてはならない戦場でさえも胸から外さないでいる。


  • 千代田
千歳型軽空母2番艦。深海棲艦の殲滅作戦に際して呉に派遣され、配属直後に艦隊に組み込まれる。


陽炎型駆逐艦8番艦。
『陽炎、抜錨します!』では彼女自身の出番はないが、地の文や他の人物の台詞で示される描写だけでも
「抽選会では強運を危惧され出張任務に回される」「射的屋台では百発百中で、更に追加料金で代打ちサービス開始」
と相変わらずの幸運艦ぶりが語られ、大淀からも「感性で動く天才」と評されている。


◆リンガ泊地

3巻で第十四駆逐隊が転属となった泊地。本土と西方海域の中継地点。
庁舎は粗末な作りで、艦娘は叢雲とあきつ丸のわずか二人しかいない。
深海棲艦は殆ど出ず、気候は穏やかで泳げる海もあるが、食料は蛇などを調達し雑魚寝することになるためここで休息を取ることは艦娘からは賛否両論とか。
碌に娯楽も無く、庁舎の門をくぐる蟹の数を数えることがリンガで二番目の楽しみだとか。
1番目は叢雲曰く「聞かない方が良いと思う」とのこと。エロい事を想像するのは致し方なし

実は中間拠点である故に、西方海域攻略艦隊を孤立させるために深海棲艦に狙われており、提督と叢雲はその情報を掴んでいた。
上層部は苦渋の決断ながら西方攻略を一刻も早く終わらせるために全力を注ぐことを決定し、リンガは無防備の状態で半ば見捨てられることになる。
残された二人は第十四駆逐隊とあきつ丸を追い払ってからここで果てるつもりだったが、陽炎の説得を受け、泊地を守るため共に戦うことを決める。


  • 提督
リンガ泊地の提督。皺が多く、軍帽から覗く髪は白い初老の男性。
よく釣りをしており、他の鎮守府の提督と違い形式張った上下関係は殆どなく、隠居老人のような雰囲気がある。
かつては多くの鎮守府を転属して戦績を積んでおり、叢雲はその最初の秘書艦。
多くの提督や艦娘を見てきた年季の入った人間らしく、色々な事を知っている。

泊地での戦いが終わったあと、横須賀で退役式を行い引退。陽炎や叢雲はじめ多くの艦娘に見送られ去っていった。
その後は6巻で再登場、隠居後は呉近郊の実家で年金生活を送りながら畑仕事に精を出す日々を送る姿が描かれている。
叢雲との仲も継続している様子。


  • 叢雲
吹雪型駆逐艦5番艦。
クールで落ち着いているが、どこか気怠げな態度を取る駆逐艦。よく細長いマストを持ち歩いている。庁舎のソファーでしか寝られない。
やたらと陽炎らにこの泊地で休息を取ることを進めており、泊地の不自然な様子を追求されてもどこ吹く風だった。

老提督の初期の秘書艦であり、多くの艦娘を見てきたベテランの駆逐艦。そのため実力も当然高い。
長年の付き合いである老提督とはお互いの深いところを理解しており、熟年夫婦のような雰囲気すらある。

どこか冷めた態度は深海棲艦にリンガごと滅ぼされるであろう運命を受け入れているからであり、当初は戦場になる前に第十四駆逐隊とあきつ丸を逃がすため追い出そうとしていた。
リンガを襲撃しようとした強襲揚陸部隊との戦いで、輸送ワ級を仕留めるも大破する。その状態でも二つしか無い泊地のドックがふさがってしまうと入渠しようとしなかった。
更にその大破した状態から痛み止めを飲んでまでリンガを守るため出撃、ボロボロになるものの陽炎と協力し最後の輸送ワ級を仕留め勝利した。

戦いの後はリンガ秘書艦の任を解かれ、横須賀鎮守府に所属。呉への派遣任務の際には元老提督の実家で時間を過ごしている模様。

余談だが、外見上は陽炎達とさほど変わらない年頃だという地の文と、老提督との付き合いが長いベテランという設定の齟齬とも言える記述から
3巻発売当時は読者間で「艦娘になった人間は年を取らなくなってしまうのでは?」と物議を醸した。
とはいえ、『陽炎、抜錨します!』における艦娘は明確に「人間」扱いで、作中を通して人外めいた描写がされた事は一度もないため
案外見た目若作りした20代とか、比較的幼い頃から艦娘をやってるとか、その程度の理由に過ぎないと思われる。


揚陸艦。生真面目な性格。
陸の人間として訓練を積んでいたが、賑やかしのつもりで艦娘適性試験を受けたら合格してしまい、直後にリンガに送られた。
そのため鎮守府というものをよく知らない。蛇を捌いたりできるサバイバビリティが有るためか後にこの人みたいな扱いをされるハメに……。

ゲーム内スペック同様「低速」であり、装備も乏しいため、艦隊戦では頼りない。改造を受けていないため飛行甲板も使えない。
しかし、陸での戦いは滅法強く、叢雲から預けられたマストを槍として使い、泊地に上陸しようとした輸送ワ級3隻を瞬く間に倒してしまった。
戦いの後、一時的に横須賀鎮守府に転属になり初めての鎮守府の雰囲気を味わうが、その後は思い出の地であるリンガへと戻った。


◆大湊警備府

5巻で幌筵に向かう途中で荒天に見舞われた第十四駆逐隊一行が立ち寄った警備府。
地元の名物はコロッケ


  • 提督 ☆
大湊の提督。直接の登場はせず凉風の台詞で寒中水泳をして風邪を引いて寝込んでいる(そのため陽炎達と会っていない)事と
幌筵提督の後輩であり涼風を離婚調停の際に借りまくってる事に文句を言ってる事が記されたのみ。


  • 涼風
大湊の秘書艦。江戸っ子調のアクセントで話すが口調は普通。
駆逐艦だてらに秘書官を勤めているだけあり、書類仕事はお手のもの。
元の所属は佐世保であり現在の提督についてくる形で大湊に異動してきた。
その為元佐世保組である皐月や長月の名は知っていた(面識は無かったようだが)。


◆幌筵泊地

5巻で登場する最北端にある新興の泊地。
拡充が予定されているようで敷地も広く取られており資材や装備の備蓄も多い。
艦娘のID認証による艤装管理システムなど呉や横須賀にも無いハイテク設備が試験運用的に投入されているが
肝心の艦娘の配備が遅れており駆逐隊の1つもなく、現在は大半の人員を他から借りる形で運営している。
近場で採れるホタテが美味しいが、採れる食料がホタテやホッケ等の北の海産物位しかないためそれ以外は大半が缶詰になるのが難点。


  • 提督
中年の男性。軍内ではベテランらしく各地を転々としていたが
小さめの場所ばかり回っていたため厳密な意味で「提督」になったのは幌筵が初めて。
非常に顔が広く、主要戦力である戦艦すらも借用し、全国から戦力派遣を募ることのできる人脈を持つ。
一応呉の提督の後輩であり呉の提督は彼にたくさん借りがあるとの事。
陽炎のことを「お嬢ちゃん」と呼ぶため彼女からはあまりいい印象を持たれていない。
指揮官としては情報を大事にして綿密な調査を行った上で作戦に臨むが
この方法が最善であると判断したならば博打にも打って出る大胆さも併せ持つ。

以前は大湊に在住しておりマイホームも買ったが、離婚した妻に財産分与として全財産とともに渡してしまった。
娘は艦娘になったらしく今でも元妻から娘の安否確認を求められているが、機密であるため話していない。


  • 阿武隈
幌筵の秘書艦。本来は彼女が横須賀所属の第一水雷戦隊の旗艦であるが、今は那珂に代理を任せている。
威圧感のない軽巡らしからぬ態度に陽炎たちからは内心舐められ気味だったが、
自分の行動をひけらかさないだけで実際は自分の仕事をストイックにこなす優秀な艦娘であり、
軽巡に求められる部下となる駆逐艦への親愛と時に厳しい命令を下す冷徹さを兼ね備えている。
飲酒の習慣がある様(特に年齢関係で咎められて無い辺りから成年であると思われる)で、部屋には洋酒が隠してある。
ちなみに14駆メンバーが前の所在地の噂を喋るシーンが有るがその内容は史実の「軽巡洋艦阿武隈」のそれと同じだったりする。


元は裕福な生まれのようで自らの意思で深海棲艦との戦いを望み艦娘になろうとしたが、親の意向で陸軍に入ることに。
それでも艦娘になるという望みを捨てきれず艦娘適正試験を受けた結果、極めて珍しい潜水艦適正を認められ艦娘となる。
貴重な潜水艦娘である彼女にしかできない仕事も多く戦略的には重要なポジションではあるのだが
輸送艇である自身の戦闘力がほぼ皆無であることから理想と現実のギャップを感じている。
作中では示唆のみで直接明言こそされないものの、恐らくは彼女が幌筵泊地提督の艦娘になった実娘と思われる。


元は秘書艦をしており各地を転々としていたが、まるゆと出会ったことで彼女は見ていないとダメだと感じ彼女の世話をするために秘書艦を辞めた。
うっかり気の抜けた態度を取った陽炎に懲罰半分の訓練を課そうとするが、その時訓練に飢えていた陽炎からはその数倍の訓練を求められたためドン引きした。
やはり14駆メンバーから前の所属の噂が語られているが、こちらは具体名は実艦が最後に籍を置いた舞鶴のみ。

6巻では重雷装巡洋艦に改装して再登場。その雷撃力は大きな力となった。


◆佐世保鎮守府

西の守りの要となる鎮守府で、皐月と長月にとっては古巣。
6巻で陽炎が一時的に秘書艦を務めることになる。


  • 提督
佐世保鎮守府の提督。容姿はベテランの外科医の様な感じと評されている。
部下の意見を積極的に採用しつつも部下のミスの責任は自分が背負う覚悟を持ち、
手助けが必要だと判断した場合にはしっかりとフォローを入れるなど気配りがうまい。
職務においては良識的な一方プライベートでは女グセが悪いらしく、愛人がいたことがあり、離婚歴が最低でも3回以上とすさまじいことになっているが
本人曰く「結婚するなら一般人」とのことなので艦娘に手を出してはいない……はず。
またリンガ提督によると「任務などを後回しにされるとすぐくさるのがいかん」との事。


  • 那智
佐世保鎮守府の前任秘書艦。
凛とした武人肌で前線での戦いを好むが、秘書艦業務もこれはこれで勉強になると考えている。
慣れない秘書艦業務に四苦八苦する陽炎を前任者として補佐しつつ教え導く。
姉妹仲が良く、特に姉の妙高には頭が上がらない模様。
ちなみに彼女が秘書官に選ばれた理由は随分と失礼なものだったりする。


  • 文月
佐世保所属の駆逐艦娘。同じ駆逐隊である皐月、長月と行動を共にすることが多かった。
舌足らずな口調で見た目も人一倍幼げだが艦娘としてはなかなか優秀で、佐世保でも上位に入る砲撃の名手。
初登場は4巻の過去編だが、5巻・6巻と連続登場かつ挿絵に2回登場と出番に恵まれている。


  • 白露
数少ない秘書艦経験のある駆逐艦娘。溌剌としたノリが良く明るい性格。
決済書類の束に自分以外の名で消灯時間の短縮を陳情する書類を紛れ込ませるという手口から
陽炎にかつての自分と同じ深夜に鎮守府を抜け出しての禁制品(主に甘味)持ち込みの常習犯であると見抜かれ、
買い出しに行ってきた帰りを待ち伏せされる。白露の深夜抜け出しを見逃すことと
報酬として間宮の羊羹を渡すことを条件に、時折陽炎の代理として秘書艦業務を行うことになった。


  • 川内
佐世保鎮守府の水雷戦隊を率いる軽巡洋艦娘。第三水雷戦隊の長。
4巻の鎮守府祭での騎馬戦で佐世保所属の駆逐艦たちに発破をかけており、6巻では随伴艦隊として睦月型駆逐艦たちを率いて出撃したほか、
秘書官仕事に熱が入り過ぎて熱くなり過ぎている陽炎に一時休養すべきではないかと諭す(ただし軽巡の威厳による釘指し込みだが)など面倒見の良さを多く見せている。
神通の様に常時威厳オーラを放つタイプではなく必要な時だけ放つタイプの様なのでやはりその辺の対人関係調整能力などは1番艦の姉な分、上と思われる。
ただ、発破のかけ方が「夜じゃないけど心は夜戦!」であるあたりやはり夜戦好きであるようだ。


  • 時雨
白露が雪風と同等と太鼓判を押す佐世保駆逐艦のエース。控えめで物静かな性格。
その評価は伊達ではなく手負いの状態だったとはいえ見事戦艦棲姫を撃沈してみせた。



追記・修正は、駆逐艦娘に一発殴られてからお願いします。

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最終更新:2022年12月11日 17:48

*1 恐らく吹雪は2015年放送のアニメ版、第六駆逐隊は『艦これなのです!』並びに『水雷戦隊クロニクル』の漫画2作だと思われる。

*2 「親潮」「早潮」は『陽炎、抜錨します!』完結後にゲームで実装された。