ホワイト企業

登録日:2014/05/17 (土) 00:01:17
更新日:2023/08/29 Tue 14:34:57
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ホワイト企業とは、「法律を守らず社員をこき使う企業」ブラック企業の対義語として生み出された概念である。
だが、ただ単に労働関係の法律をしっかり守って運営しているというだけでは、ブラック企業と言われないだけでホワイト企業と言われることはあまりない。

法律を守るにとどまらず、企業風土も居心地がよく、社員に対しても福利厚生が厚く、仕事は厳しいこともあるが決して生活を無視した無理難題を言わない。

そういった条件が整ってこそホワイト企業と言われるのだ。

まさしく理想の職場である。

そんな理想の職場なんて、東大卒の超エリートとか特殊な資格持ちでないと就職できない超優良企業ばっかなんじゃねーの?
と思うかもしれないが、必ずしもそうとは言い難い。
また、ホワイトな企業運営はただ単に企業の負担を増やすだけでなく、企業のメリットになるという面も確かにあるのだ。






とある実在の飲食会社Z社の例を参考にして頂こう。どこの会社かは検索すればすぐわかるが、ここではあえて出さないことにしておく。
というか、こんなのを検索してる手間も惜しむようでは、ブラック企業に簡単に引っかかるぞ?
この会社で、離職率は現在10%を切っている。
一般に大卒でも3割(短大・高卒だと4~5割、中卒だと6~7割にのぼる)が離職してしまうと言われており、さらに飲食業界と言えば、離職率も高くてブラック企業の巣窟…というのが常識である。

ところが、Z社は、特段高級志向を売りにしている訳でもないのにホワイト企業と言うことで取り上げられたことがあった。


  • 採用試験は流石に本社かオフィスに来るのが原則であるが、事情次第で面接官が志願者の所まで面接にやって来てくれる

  • 家族がいると単身赴任が日常茶飯事・・・と思いきや、ここでは家族連れ転勤もできるし、引っ越し費用を負担してくれて住居探しも会社でやってくれる。

  • 年間の休日はそこまで多いとは言えないが、完全週休2日で季節によって特別休暇もあり、
休みの量が少ないと上から取った方がいいんじゃない?とアドバイスが来る。


くどいようだが、Z社は実在の企業である。
もちろん、いくら経営が苦しかろうと、法律を守るという意識を持たなければならないのは言うまでもない。
だが、法律上の水準をはるかに通り越した労働者保護が行われているのはどういうことなんだろうか?


実はZ社も、かつてはここまでホワイトではなかった。

こうなったのは、ブラック企業の持つ「違法であるという以外の問題点」を、かつてZ社はモロに実感することになったためだ。

Z社も、以前はどんどん店舗を増やし、利益を出そうとしてきたという。
だが、それに人を育てることが追いつかず、
既存の社員達に休日出勤や長時間労働をさせるというブラック企業にありがちな方法で乗り切ろうとしてしまった。




そして、ついにZ社にしっぺ返しがやってきた。と言っても、それは労働基準監督署でも過労死裁判でもない。


社員たちが過酷な労働や転勤ラッシュに耐えられなくなって辞めていくことが多発したのだ。
離職率は4割を超えてしまい、せっかく増やした店舗も社員不足で閉店に追い込まれる例が続出した。



企業にとって、せっかく自分の会社に入って一人前に育てた社員が辞めてしまうのは、彼らを育てるための投資、
つまり、いてもあまり役に立つことができない新人に払う給料や、その新人教育のためにかけた手間が無駄になるということである。
代わりの人員を新しく雇っても、改めて手間暇をかけて、役に立てない新人達の給料をきちんと払って育てなければ使えない。

こうして大混乱に陥ってしまったZ社は、

「雇った社員には長くいてもらい、自分達で教えたことをきちんと会社の中で生かしてもらう」

という考え方の重要さを痛感するようになった。

そして、採用に当たって「社員は家族」というような甘い言葉で釣ったりせず、内実を理解してもらって勤務してもらうことにした。
ブラック企業でなくとも、
「せっかく希望の業界に入ったのに、こんなはずじゃなかったなぁ…」
と言う人たちに辞めていかれては同じだし、下手をすればそこからブラック企業の風評もたちかねない。


福利厚生が厚くなっていったのも、別にホワイト企業として名前を売りたかったわけでも、慈善事業をやろうとしていたわけでもない。
せっかく自分たちが投資して育てた社員に辞めてほしくないという思いが基本だったのである。


なお、Z社は勤務自体が楽だという訳では決してないと公言しているので注意するように。
育てた社員に辞めてほしくないということは、社員教育に時間とコストがべらぼうにかかる、それだけ難しい仕事を要求されるということでもある。



Z社の例だけではない。


ブラック企業と言う風評が立てば、優秀な人材は志願してこない。
他の仕事にあぶれる人や、ろくに情報収集もせず就職活動するような、自分で物を考えることのできない人ばかりが集まる。
社員たちもギスギスして連携がうまくいかなくなったり、健康状態を悪くしたりしてミスや辞職がどんどん増え、サービスは落ちていく。


ブラック企業は当のブラック企業自身をも蝕んでいくのだ。
もっとも、これは裏を返せば、そのような質の悪い社員でも、
教育に大した手間もかからず、頭数さえそろえばいい業種であればブラックでも業務は回せてしまうということでもあるのだが。







ブラック企業を批判するのは確かに必要なことである。
他方で、こうしたホワイト企業の良さが経営者側にも広まっていくことや、社会全体でホワイト企業に温かい目を向けていくこともまた、
ブラック企業問題を解決するために重要なことなのである。














さて、堅苦しい話はここまでにして、当Wikiらしくアニメや特撮の話に移ろう。
以前から「悪の組織には案外ホワイト企業が多い」という俗説があるが、これは先のZ社の例から説明がつく。
悪の組織は、官憲やそれよりはるかに強大なヒーローと戦わなければならず、また組織の目的が世界征服だったりすると、全世界を敵に回さなければならなくなる。
このような難事業を成功させるためには優秀な構成員が必要であり、彼らに裏切られないために、福利厚生を充実させなければならないのである。
ショッカーのように構成員を洗脳すればいいのではないか」と思われるかもしれないが、
幹部や科学者、技術者等、職務上洗脳不能な構成員がいる以上、彼らが辞めないよう、保護しなければならない。

フリーザ軍を例にとってみよう。

フリーザ軍&フリーザと言えば

  • 弱い部下もフリーザはしっかり顔を把握
  • 全兵士にアーマーを配備
  • 弱い部下には武器まで配備
  • 回復ポッド完備
  • ミスをした部下にも挽回の機会が与えられる
  • フリーザ本人も部下のことを「さん」付けし、敬語で接する
  • 変な提案も一蹴せず、やんわりとオブラートに包んで断る
  • フリーザ自ら現場に出て確認する
  • 容姿や種族で差別せず実力できっちり上下を決める
  • 約束の日までノルマを達成できなくても叱るどころか「あと三日ぐらい延ばしても良いですのに」と寛容に接する。

などなど、ホワイト企業&理想の上司として語られることが多い。


同組織の業務内容は「星の地上げ」という、対象となる惑星の全てを敵に回して行うものであり、
それに従事する構成員は、様々な惑星から集められた超優秀な戦士達である。
世界征服を日常業務としてやっているようなものであるから、当然ながらハードな仕事であるうえ、
超優秀な戦士は各惑星の軍隊の外人部隊、フリーザ軍の軍隊、民間軍事会社、新入りの教官、果ては警備会社(それもボディーガード等の上級職)等、引く手あまたである。
もしもフリーザが彼ら戦士達に不当な扱いをすれば、彼らは反乱やそういった他所の組織に逃げて行ってしまうし、
その結果組織全体の戦闘力が低下、地上げ事業に支障をきたしてしまう。場合によっては他所に逃げた戦士が自分達の前に立ちふさがるといった事態もありうる。
そのため、フリーザ軍はホワイト企業になる必要があったというわけである。

このほかにも、
  • 『天体戦士サンレッド』のフロシャイム(嘘偽りない「アットホームな職場」。ただし零細)
  • 『炎神戦隊ゴーオンジャー』の蛮機族ガイアーク(とにかく人間関係が良い。ただし敵ではなく無理解な上司に潰されるという結末)
  • 『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のバンドーラ一味
  • 『秘密結社鷹の爪』シリーズの鷹の爪団(ただしフロシャイム以下の超零細)
  • 『ポケットモンスターORAS』のマグマ団・アクア団
等、半ば冗談で「ホワイト企業」と呼ばれる悪の組織が存在する。

逆に特撮界のブラック企業と言えば、
ショッカーをM&Aして「ゲル・ショッカー」とし、ショッカー側幹部を全員首切り(物理)したゲルダム団であろう。
気になる人は「ゲルショッカーの掟」でググってみよう。
というか、ショッカー自体(特に戦闘員は)福利厚生のふの字もない程ブラックである。)



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最終更新:2023年08月29日 14:34