t.A.T.u事件(Mステ)

登録日:2011/07/02 Sat 00:26:23
更新日:2024/03/28 Thu 21:35:02
所要時間:約 6 分で読めます




t.A.T.u.事件とは、音楽番組「MUSIC STATION(以下、Mステ)」の長い歴史において最大級のインパクトを残した事件。


〇前置き

t.A.T.u.(タトゥー)とは、当時世界的なムーブメントを巻起したロシア出身の2人組女性アーティストである。

ロシア出身でありながらアメリカではBillboardシングルTOP40入り。
ここ日本ではブームは遅れたがミリオンヒットを記録するなど勢いは本物。

しかしこのt.A.T.u.、様々なところで物議を醸すことでも有名だった。

  • レズビアンを意識したPV(PVでは白いパンティも拝めるよ)
  • PVで無免許運転
    • ちなみにこのPVで轢き殺されているのは彼女たちを担当するプロデューサーにしてマジキチと悪名高いシャポヴァロフ。なのでどの動画サイトでも「イワンざまぁw」というコメントがつく
  • 各国授賞式での行動

などなど…現在で言うとこの「炎上系」でよくも悪くも話題を集めていた。
しかし、最大の問題となっていたのは度重なるドタキャンだった。

何故そんなことをするのか当時はほとんど知られていなかったが、実はこれらの行動は全てプロデューサーであるシャポヴァロフが指示したもので、
イギリスでのライブの際、プロデューサーが滅茶苦茶な要求を出してライブが中止になった。
ここ日本でも本来3月に来日しMステへ出演する予定だったのだが、世界中で新型ウイルスSARSが流行したため土壇場で来日キャンセルとなった(この時は正当な理由と見て取れるうえに、事実日本でも5月にSARSが京都で発見され大問題に)。


そんな中6月に再来日が決まりMステ出演も決められたことで、業界やファンのみならず日本中が「また、何かやらかすのではないか…」と考えたのである。


〇そして事件は起きた

満を持して来日したt.A.T.u.。
その盛り上がりは今で言うならレディー・ガガ並のものだった。

2003年6月27日
この日のMステにt.A.T.u.は出演。
(他の出演者は今井絵理子、V6、RIP SLYME、Sowelu、そして後述の……)

番組開始時の階段を降りて出演者が集合するOPには居たことで、視聴者の誰もが「今回はちゃんと仕事する」と思っただろう…。


番組はいつも通りに進むがt.A.T.u.は後ろの席に不在のまま、本来予定されていたと思われる歌唱順が変わり困惑する出演者たち。

8時40分頃ついにt.A.T.u.の出番となった。







のだが…




タモリ「t.A.T.u.が 出 た く ね ぇ と言っています」

この発言にスタジオの観客・出演者一同が大爆笑。ゲストからは「俺たちが悪かったんですかね?」という声も上がったがタモリは「いやそんな事はない!」と否定して「控え室から一歩も出てこない事」「他の出演者の曲順を予定から変えた事」を説明しつつ、「もう番組終わりに近いんですがまだ出てこない」と言い、当時サブMCを務めていた武内絵美アナも「時間はあるんですが…」と一言。
さらにタモリは冗談混じりに「何が悪いかよく分かりませんが、RIP SLYMEがここに変な事を書いた(SUが腕に露西亜娘と書いていたことを指摘しての発言)から」とか「タモリがオープニングで衣装のスカートの事に触れたのでt.A.T.u.をムカッとさせた(怒らせた)からじゃないか」などと控え室から出てこない理由の憶測が飛び交っている事にも触れ、ついに苦し紛れに「ここで一曲私が歌うわけにもいかないし・・・」と、実現すれば『笑っていいとも!』のオープニングで歌わなくなってから3年3ヶ月ぶりとなるタモリの歌を聞けるチャンス…客席も沸き立ったが「ちょっとのどの調子も悪いし、ようやくチャンスが巡ってきたな、デビューだなと思ったんでございますが」喉のコンディション故に歌は聞けなかった。このやり取りで場をつなぐ事1分。
武内アナは「今出てきてくれば間に合う」「CMの間に来れば間に合う」と言い、タモリもしゃがれ声で「t.A.T.u.今なら間に合うぞ~」「コマーシャル明けまでに出てきてくれたら…」と説得しつつ、いつものジングルが流れ一旦CMへ…。


















や っ ぱ り t . A . T . u . は 出 て 来 ま せ ん で し た



尺も余ってしまったためスタッフ一同大混乱になるはずだった…。




だが、この危機をあるロックバンドが救った。

そのバンドの名はTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT

解散・メンバーのがあっても、なお日本のロックシーンにおいて絶大な人気を誇るミッシェル。

そして普段地上波への出演がほとんどなかったミッシェルが珍しくテレビに出ていたのである(t.A.T.u.と同じユニバーサルミュージック所属だったので、変な言い方だがバーターだったのかもしれない)。

スタッフは急遽、ミッシェルにもう1曲演奏してくれるよう頼んだ。

急すぎる事態でセットはおろかリハーサルもない。
しかし、地上波の音楽番組では滅多に見られないガチンコ生演奏であった。

スタジオは開始前から大盛況(観客の大半がミッシェルを初めて知ったとは思うが、その分V6ら他の出演者が盛り上げていた)。
本来ならもう少しテンポが遅い「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」を走らせて見事に尺に収めるという神業で無事演奏を終え、番組は終了。

プロデューサーの指示により結局t.A.T.u.は姿を現さなかった…。

t.A.T.u.のキャンセルで番組は苦情の嵐だったとか。

当時のt.A.T.u.が公表した理由は「自分達のステージにするはずが日本のアーティストに邪魔された」とのこと。


〇騒動のその後

  • t.A.T.u.
前日のドタキャンがあり、後日予定されていたイベントが開催されるか否かファンは不安を隠せなかった…。




やっぱりドタキャンしましたww

この時の来日は、メディアを前にして都内のカラオケ店内で歌っただけという想像を絶する悲惨なもので終了した。
これを境にもちろん日本での人気はガタ落ち。
その後、日本テレビ『バンキシャ!』の生放送中に突如乱入し、MCの福澤朗と菊川怜を困惑させただけで帰った。

そしてブームの頃に決まっていた東京ドーム公演は、収容人数50000人に対して半分しか来なかったため大赤字となった…。

ちなみにこのライブもプロデューサーはドタキャンする気満々だったが、2人がそれを拒否していた。

以後のt.A.T.u.は、「ドタキャンする2人組」として各種TV番組で色々とネタにされていたが次第にブームは収束。
仕事やプライベートでのゴタゴタもあり2011年には解散した…と思いきや2年後に再結成しました。

近年では日本で「スニッカーズ」のCMキャラクターにいきなり抜擢され、当時のキャラのままコントじみた役柄を演じてくれたり、同じくCMキャラクターとして出演していた内田裕也に「北方領土を返せ」と無茶振りされて苦笑するなどサービス精神旺盛な一面も見せてくれていた。

2014年のソチオリンピックの開会式の前日にイベント参加するも、同年に活動休止。以降はリェーナは地道に音楽活動を継続しており、ユーリャは政界入りを目指すも反同性愛発言が不評を買い落選。
その後二人は度々「共演はない」と発言しながらも2022年にはベラルーシのミンスクで、2023年にはサンクトペテルブルグでt.A.T.u.としてコンサートを行っている。

  • タモリは…
この一件を境に、t.A.T.u.という名前を聞く度に「思い出したくない名前」と出演番組全てで言うようになった。
同年10月のタモリ倶楽部のコーナー・空耳アワーにt.A.T.u.の曲が送られた時には開口一番「やだ!」と露骨に拒否反応を示し「オープニング出たなら出ろよ!」と激怒。
そりゃ、自分がMCの番組を好き勝手やられたら誰だって嫌な思いしかしないだろう…。
なお作品の内容はというと、“Show Me Love”の一節が「じゃ、ちょっと失礼な具合で
照明どうだ」と聞こえるという物であった。それに付いたおなじみの映像にもt.A.T.u.っぽい女性二人組が出てきたり。
タモリ「ふんっ...大失礼だよ!
その後「空耳アワー」でt.A.T.u.の楽曲は2023年のコーナー終了まで一度も採用されなかった為、これが唯一の採用となった。

2004年には『笑っていいとも』内の人気コーナー・テレフォンショッキングでマルシアが「私この間t.A.T.u.のライブ見たんですよ!もう感動して…」と語ったのに対し、タモリは「ああ、t.A.T.u.はもう勘当だよ」と返す一幕があった。
因みにマルシアはこの事件をホントに知らなかったらしく、次第に場の空気が変わっていくこと*1 にうろたえ始め、CM開けにはタモリに平謝りしている姿が映し出された。
2021年10月には「34年168日、全1365回*2に渡り同番組で司会を担当した」としてギネス記録を受賞したが、その中で「一番印象に残ってるのは、やはりt.A.T.uでしょう」と語った。

  • THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
元々シーンでは多大な人気を持っていたバンドだったが、この一件で存在を知った人も多いはずである。後日ラジオ番組でメンバーは急遽二曲目を引き受けた理由をこう語った。
「出たくねぇって言うならしょうがねぇよ、俺たち出たくて仕方ないんだから」

その数ヶ月後ミッシェルは解散を発表し、再びMステへ出演。
タモリから「あの時はお世話になりました」と感謝の言葉を貰い、再び生演奏を披露。最高のパフォーマンスを魅せた。

ミッシェルを昔から取り上げていて信者とアンチが五分に分かれる音楽雑誌・ROCKIN'ON JAPANは、
この事件を「t.A.T.u.は日本のロックにビビって逃げた(?)。これは日本のロックの勝利(?)」と巻末でコメントした(この週は同じロキノン系にあたるRIP SLYMEも出演していた)。

〇余談

この7年後、2010年3月に世界中で絶大な人気を誇る一方で騒動が絶えないオアシスが出演。
当時と比べてシーンで有名な歌手の出演が稀になったこともあり、リアムがキレるかと不安視された。
だがOP終了後、出番までオアシスを別室待機にしてラストに演奏させたことで番組は問題なく終了した。

2023年11月にミッシェルのボーカルだったチバユウスケが食道ガンとの闘病の末55歳の若さで息を引き取った。その訃報を伝えた『報道ステーション』ではなんとこの事件の映像(流石に他の出演者は映されなかったが)が使われた。
この時点でMステは年内のレギュラー放送は全て終えており、残す放送は年末恒例の「スーパーライブ」のみだった。
そして迎えた「スーパーライブ」。いつもは番組開始と共にクリスマスらしい静かな音から一変して花火が上がりテーマ曲が流れ出すが、この年のオープニングは…
いつものテーマ曲の前に、あの日ミッシェルが演奏した「ミッドナイトクラクションベイベー」の音源が流れた。

途中で投げ出さずきちんとした追記・修正をお願いします。

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最終更新:2024年03月28日 21:35

*1 最初は「体当たりで芸能界のタブーネタを切り出した」と思っていたのかタモリを含めて全員が笑っていたが、次第にタモリの反応をよそにt.A.T.u.熱を語り始めるマルシアに客席が明らかに引いていた。

*2 番組が開始したのは1986年10月で受賞時は35周年だが、翌1987年3月までの半年間は関口宏が司会だった。