大怪獣バラン

登録日:2011/06/08 Wed 10:27:14
更新日:2024/02/17 Sat 20:36:51
所要時間:約 5 分で読めます





陸海空を暴れまわる魔のバラン!

空想科学怪獣映画の決定版!


映画ポスターより



「大怪獣バラン」は1958年10月14日に東宝より公開された怪獣映画で、東宝怪獣映画5番目の作品である。

●目次

【ストーリー】

東北の山奥でシベリアにしか住んでいないはずの珍しいが見つかり、杉本博士の指示で調査に向かった二人の研究員が原因不明の死を遂げる。

杉本博士の助手の魚崎は新聞記者の由利子と堀口と共に調査に向かう。
研究員の死体が発見された地点の近くの村には婆羅陀巍様(バラダギさま)という山神を祭っており、山奥の湖の周りを立ち入り禁止にしていた。

魚崎達が村に着いた頃、山からうなり声がし村の子供が飼っていたが立ち入り禁止の区域へ入ってしまう。
魚崎達は婆羅陀巍様は迷信だとして、村人を説得し犬を探しに湖の近くへ向かう。

しかし湖の中から怪獣バランが出現した。


【概要】

本作は最初アメリカから発注されたのが製作のスタートという、当時のアメリカでの東宝特撮の人気振りがうかがえる作品である。

スタッフは監督は本多猪四郎氏、音楽は伊福部昭氏、脚本は関沢新一氏とテンプレで固められ、小品ながらまとまっている作品である。
特にオープニングのバラダギというコーラスは印象に残る。

余談であるがビデオ化の際は、部落のあたりを日本のチベットという場面がカットされた。
しかし、当時岩手県の知事が岩手の交通事情の悪さを日本のチベットと自嘲しながら、予算を求めた事実があったりする。



【登場怪獣】

◆バラン
東北の山奥の湖に潜んでいた怪獣で、村では婆羅陀巍様として祭られていた。
バラノボーダーと呼ばれる古代生物の末裔で、頑強でしなやかな皮膚は自衛隊の兵器も通用しない。

陸上生活に適した体格だが、湖に潜むだけあって水中でも自在に活動し、さらに手足の膜を広げる事で空も飛べるという、万能ぶりを見せており、まさに陸海空を制する怪獣である。


【登場人物】

◆魚崎健二(演:野村浩三)
杉本博士の助手で、迷信や伝説は信じない。
さり気にバランの名付け親である。
後に巨人になり、バド星人に利用される事になる。

◆新庄由利子(演:園田あゆみ)
新聞記者で、最初の犠牲者が兄だった為、取材も兼ねて調査に向かう。

◆堀口(演:松尾文人)
カメラマン。主人公一行だが空気。

◆杉本博士(演:千田是也)
生物学者で、バラン出現後はバランの特徴も調べ、対策班の中心の1人となる。

◆部落の神主(演:瀬良明)
「だまらっしゃい!」「帰らっしゃい!」

◆藤本博士(演:平田昭彦)
バランを倒す特殊火薬を開発した。

その他にも土屋嘉男、村上冬樹、田島義文等の東宝特撮の常連俳優も出演している。





【余談】

以上が、基本的な作品と怪獣の紹介である。

しかしバランには最大の特徴がある。
それは


不遇さ


である。
本作、また怪獣バランは様々な事情により東宝特撮屈指の不遇な境遇へと落とされているのだ。


【作品について】

上記のように当初はアメリカの発注で製作は開始している。
しかし、アメリカではテレビ映画としての製作依頼であった。

だが、その話は無くなってしまい、日本国内で上映されるように製作途中で変更している。

しかも元はテレビ用だったからモノクロで製作されたのだ。
怪獣映画の前作ラドンはカラーで製作したのに、逆戻りである。

その為、テレビでの再放送の機会も少なく、東宝怪獣映画ではマイナーな作品となった。

一応はテレビ用の音声は現存しており、DVDなどの映像ソフトに特典として収められている事もある。
しかし、結局は特典以上の何物でもないのが残念。

白黒テレビ番組ついでに、主人公一行の職業構成が後の『ウルトラQ』と似ているという声も。

【大怪獣バランの実態】

上の文のようにポスターや予告編では


「ゴジラより兇暴!!ラドンより巨大!!」


「陸海空を制する怪獣」

と紹介されたバランだが、水中では自衛隊にいぶり出される、陸上では自衛隊の攻撃は通用しないが都市破壊はさせてもらえない。
さらに空では空中戦のシーンがあるわけでもなく地味、とどの状態でもパッとしない器用貧乏ぶりである。

その最期も「新型火薬が仕込まれた照明弾を飲み込み、体内から爆破されて死ぬ」という地味ぶり。

東宝お約束の超兵器も無く、この時期には珍しく現実の自衛隊でも倒せそうな怪獣となってしまった。大怪獣(笑)

まあ特殊火薬を開発した藤本博士は初代ゴジラオキシジェン・デストロイヤー
ウルトラマンでも倒せなかった初代ゼットンをペンシル爆弾で一撃で倒した平田昭彦が演じているので負けるのも当然である。
また、媒体によって体長等のデータが一定せずいい加減である。

頭部は利光貞三、胴体は八木勘寿、八木康栄、表皮、背中のトゲは村瀬継蔵による。背中のトゲは、生物の一部らしい透明感を表現するため、村瀬のアイディアで切ったゴムホースの切り口にビニールテープを貼って作られた。目には電飾がなされている。背中のウロコは、ピーナッツの殻を押し付けたもの。
体色については数少ないカラースチールから茶系であることが確認できるが人工着色スチル写真では緑色となっているなど違いがみられる。

【その後のバラン】

さらにバランの悲劇はこれだけではなかった。
後に作られた『怪獣総進撃』。この作品は東宝怪獣の総決算として作られ多数の怪獣が出演、バランも参加する栄光が与えられた。

が、着ぐるみは無く飛行用人形のみの出演。名前すら呼ばれなかった。
なお、登場時間は約1時間半の上映時間のうち、


数十秒


のみである。
1958年版とは体格が違うことから幼体とする資料もある。

ゴジラ FINAL WARS』のヘドラなんて新規の着ぐるみが作られた分、ましである。
なお、同作冒頭の映像ではバランも登場した。
しかし、OPでかつてこんな怪獣もいたよ的な紹介映像(もちろん過去作の流用)で登場時間約1、2秒という短さである。

現状、ゴジラ映画に出た名有りの怪獣ではもっとも短い出演時間である。


さらに、バランはこれまで何回かゴジラ映画の企画に名前があったが、最終的に没になっている。

有名なのは『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』と『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』である。
2作品とも企画初期の段階では登場予定怪獣に名を連ねていたが、企画段階で弾かれている。
ガイガンではスーツが無い事が、GMKではバランでは客が入らない事が理由だと推測される。

このように、バランは名前を売るチャンスが多数存在しながら、そのチャンスを物に出来なかった悲しい怪獣なのである。


それでもバランの活躍をもっと見たいという人は、海外のみで発売されたWii用ソフト『ゴジラアンリーシュド』をプレイしよう。
チタノザウルスやジェットジャガーメガギラスといった若干マイナーな東宝怪獣と共にプレイヤーキャラとして使用可能である。


GODZILLA怪獣惑星

前日譚である小説『GODZILLA怪獣黙示録』に登場。
バラゴン、アンギラスのGMK企画段階の面子とともにロサンゼルスに向かっていたところを、米軍の哨戒ヘリの対潜ソナーで察知される。
この世界での出現は2回目とされており、バランⅡと呼称された。
飛翔能力を厄介視され、第1目標と指定されたために200門を超える対怪獣用徹甲榴弾の洗礼を受ける。
その後も、怯んだり逃走することなく3体は上陸しようとしていた。

「逃すな、撃ち落とせ」

砲撃に晒され、飛膜を広げて逃走しようとしたところを青白い光の奔流で貫かれて死亡した。

3体に都市を破壊しようなどという目的はなく、ただ「ヤツ」から逃げるのに必死なだけだった。

★おまけ★

婆羅陀巍山神 神社祝詞

【筑紫の日向の橋の小門の阿波岐原に 御禊 祓え給ひし時に生まりませる祓戸の大神たち 諸々の禍事 罪 けがれ有らんをば 祓へ給ひ 清め給へと申すことを 聞こしめせと かしこみ かしこみ申す 祓へ給ひ 清め給え】

婆羅陀巍を崇めぬ不埒な不信神者は婆羅陀巍様の怒りに触れるじゃ!!by神主

バラン新作を作れる婆羅陀巍様は追記・修正をお願いします。

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最終更新:2024年02月17日 20:36