次元/Plane(MtG)

登録日:2012/06/07(木) 18:31:12
更新日:2023/12/20 Wed 15:13:23
所要時間:約 6 分で読めます




「次元/Plane」とはTCG『マジック:ザ・ギャザリング』の舞台となる世界のことである。

マジックの背景世界の根幹を成すものであり、現在まで様々な個性を持つ次元が登場している。
次元同士は「久遠の闇」と呼ばれる純粋な霊気で満ちた空間で隔てられ、それらと全ての次元をひっくるめて「多元宇宙/Multiverse」と呼ぶ。
次元は惑星のような形態が一般的だが、平面の次元、完全な無の次元などもあり多種多様。あらゆる形態・可能性を持つ次元が存在している。
当然そこに住んでいる生物や種族、文明レベルや食生活についてもまったく異なる様相を見せる。

新たな次元が出る度に設定が細かく練られており、それを楽しみにしているストーリー好きファンも多い。
特に一つ一つの次元の作りこみ方が半端ではなく、ゲーム上の動きとして世界観を追体験することもできるという非常に独特な遊び方ができる。
最近では明確なモチーフがあることを公言された次元も多く、現実世界や他作品をマジック流に再構築することが心待ちにされていたりも*1

非常に稀*2に次元同士を渡り歩くことの出来る強力な魔法使いが生まれ、彼らをプレインズウォーカー/Planeswalkerと呼ぶ。
MtGを遊ぶプレイヤー自身もプレインズウォーカーの一人であり、各次元を渡り歩いた知識を用いて決闘するのである。
プレインズウォーカーの詳細については当該項目にて。

次元ごとにマナの量や色にも違いがあり、マナの欠乏した次元や特定の色マナが一切湧かない次元もあったりする。
それらの次元ではいくら強力なプレインズウォーカーでも、扱うマナが無くただの人間同然となってしまう。
一時期は「その次元で生産されるマナの特色」というものもあったりした。
ゲーム上でも例えば《真鍮の都》は「そこのマナは溶けた真鍮のように熱いので、マナを引き出すたびにダメージを受ける」と理由が付いていた。
ストーリー上でも炎の赤マナ使いであるチャンドラが、後述するゼンディカーの不安定なマナを使ってしくじったりしている。


以下に今までに存在が判明している代表的な次元について記載する。

■ドミナリア/Dominaria
「ミラディン(MRD)」が発売されるまで、MtGのセットで一番長く扱われていた舞台。
地球と似た惑星型の次元。
他の多数の次元と面しているという特徴があり、マナが豊富で多様なクリーチャーが存在している。
そのため、一時期はプレインズウォーカーたちが好んで訪れていた(過去形)。
兄弟戦争、ウルザの時間実験、ファイレクシア軍の侵攻、邪神カローナの出現…
など、ドミナリアで起こった度重なる大事件や大災害が積み重なった結果あちこちに「時間の裂け目」と呼ばれる亀裂が出現。
亀裂から過去や未来、あるいは並行世界から様々なものがあふれ出た結果、時間と次元が混乱したカオスな状況と化してしまう。
多くの旧世代プレインズウォーカーの献身、犠牲によって時間の裂け目は修復され、事態は収まった。
しかしこの修復の余波によって「プレインズウォーカーの灯」の性質が不可逆的に変質。
多元宇宙中のプレインズウォーカー達の力が大きく削がれてしまった。
「次元の混乱(PLC)」以降はしばらく舞台として描かれなかったが、後述するゲートウォッチ達の新たな集合場所としてドミナリアが設定。
(我々の時間で)実に13年ぶりに「ドミナリア(DOM)」として帰還が果たされる事となった。
枠が変わる以前(≒モダンで使えない時期)のストーリーの中心地だったこともあり、ウルザやヨーグモスなど多くの主要キャラクターの出身地。
最近のキャラクターではリリアナもドミナリアのベナリア近辺出身であると明かされた。

長年MtGのカードを輩出してきた実績から、再訪後は「歴史の次元」という立ち位置を得ている。
過去の名カードのリメイクや過去の登場人物およびその関係者、新メカニズム「英雄譚*3」などで他の次元との差別化を図っている。

■ラバイア
マジック最初のエキスパンション「アラビアンナイト(ARN)」の舞台。
中東そのもの風の次元。
1001の世界の集合体で、あらゆるものが1001の分身を有している。そのため固有名詞のカードであっても伝説を持たない。
5つしか分身を持たない者が1つに統合された時、最強の魔術師が誕生するという言い伝えもある。
事実そうして生まれたテイザーは当時最強のプレインズウォーカーとしてストーリー上で大暴れした。

「アラビアンナイト(ARN)」は元々は「千夜一夜物語」そのものを題材としたエキスパンションである。
そのためアレキサンドリア図書館バクダットのバザールなど現実の固有名詞が多数登場する他、
  • 《クォムバッジの魔女》(「クォムバッジ」はアラビア語で「堕落した」を意味する)
  • 《密林の猿人/Kird Ape》(「Kird」はアラビア語で「ジャングル」を意味する)
などアラビア語をそのまま英語の発音にしたものも多いので、単語の扱いが非常に難しい。
しかも中には、
  • 最もよく知られているディズニー版と印象が違いすぎる《アラジン》*4
  • 《Jihad》のようにアラブ文化を誤解されかねないもの
  • 《アブー・ジャーファル》のようにアメリカ本土では問題がなくとも他の国で問題を引き起こしかねないもの
…などの劇物もある。
現在のように「オリジナル設定へのロンダリング」が行われていなかったこともあり、現在は様々な問題が浮き彫りになってしまっている。
このエキスパンションがその後のトレーディングカードゲームという文化に非常に大きな影響を与えたのも事実。
しかし同時に30年近い年月によって変化した文化の象徴でもあるのだ。
こういった事情や昨今のアラブ文化とサブカルの相性の悪さというのもあり*5、扱いは非常に悪い慎重。
「ラバイア」という固有名詞は背景世界を描いたもの以外には登場しておらず、カード名でもラバイア絡みの固有名詞は徹底的に排除されている。
それゆえ最も再登場する可能性の低い次元とされており、ストーム値の次元版は「ラバイア値」と呼ばれている。*6
「機械兵団の進軍(MOM)」では小説などで名前しか触れられていない程のマイナー次元ですら多数カードとして登場する中、それでもなおラバイアには一切触れられないままであった。*7
ただ再訪困難ではあるが触れることすらNGというわけではないらしい。
「モダンホライゾン(MH1)」などで《バザールの交易魔道士》のように、ラバイアをモチーフにしたカードが登場している。
今後はこういったお祭りセットに2~3枚ほど顔を出す程度の次元に落ち着くことになりそうだ。

■シャンダラー/Shandalar
知る人ぞ知る「MicroProse版MTG」の舞台となった次元。
次元全体に濃密なマナが溢れており、この次元では一般人ですら日々の生活の中で魔法を活用している。
このマナに目をつけたテヴェッシュ・ザットやレシュラック、そしてアルザコンといった旧世代PWがこの地を訪れるも、その時代ごとのシャンダラーの守護者がその野望を打ち砕いてきた。
長らく公式から放置された次元だったが、基本セット2010~2014で再フューチャーされ、リリアナが鎖のヴェールを拾った地とされたり、
どこからかやってきたスリヴァーが繁殖していることが明らかとなった。
ここまでならそこそこ普通の次元とも言えなくもないのだが、その実態は修羅の国であり
  • 町の外ではアンティ戦を仕掛けられる
  • 各地のダンジョンや遺跡にmoxが転がっている
  • 次元の外から入ってきたものはシャンダラーの魔力によってシャンダラーに同化させられる
  • オブ・ニクシリスをデーモンへと変質させ、リリアナも振り回され続けた鎖のヴェールの故郷
  • プレデターじみた新たなスリヴァーが繁殖し、シャンダラー人を脅かしている
  • 侵攻してきたファイレクシア人に荒れ狂うマナが蔦となって襲かかり、そのままファイレクシア人を解体してしまう
といった、あまりにも物騒な次元となっている。
最初の二つについてはゲームシステムについてのネタ的な側面もあるが残りは…

ファイレクシア/Phyrexia
暗黒次元、諸悪の根源、永遠の悪役。今では「旧ファイレクシア」とも。
荒廃の王ヨーグモスが支配する次元。
惑星型次元だが、9つの球体が入れ子になった構造をしている。早い話がデス・スター
ドミナリアの古代の魔法帝国スランの技師ヨーグモスは、当時蔓延していた病に感染した患者をこの次元に移送。
"治療"という名の改造手術によっておぞましいファイレクシア人を作り上げた。
しかし仲間の裏切りにより次元が隔絶、プレインズウォーカーでないヨーグモスはこの次元に閉じ込められてしまう。大いなる引きこもりの誕生
その後ちょくちょくちょっかいをかけながら4000年以上もの長い時間を掛け膨大な戦力を蓄え、満を持してドミナリアに侵攻。
凄まじい戦争の末、8人のプレインズウォーカーを率いたウルザに次元ごと消し飛ばされる。4000年の準備も壊れるときは一瞬
主たるヨーグモスも《レガシーの兵器》により打倒され、完全に滅びた筈だったが……。

■アージェンタム/Argentum→ミラディン/Mirrodin→新ファイレクシア/New Phyrexia
「ミラディン・ブロック」「ミラディンの傷跡ブロック」の舞台。
上記は全て同一の次元である。
以下、順に解説する。

アージェンタムとは、プレインズウォーカーである《銀のゴーレム、カーン》の作り出した人工次元。
あらゆる物が金属でできており、全てが計算しつくされた幾何学的な世界。故に生命体は存在しない。

ミラディンとは、上記のアージェンタムから発展した次元。
カーンから管理役を任されたメムナークが「この次元おもんねーわ(意訳)」とあちこちの次元から生物を拉致し、住まわせた世界。
時がたった今ではほとんどの生物は体の一部が金属で覆われているが、稀に金属の体を持たない者が生まれてくることも。
メムナークの乱心こそあれ、基本的には平和な次元……だった。

しかし、カーンの内部から漏れ出ていた「ファイレクシアの油」がミラディンを徐々に徐々に侵食。
遂にはミラディンの生物をも取り込んで、次元全体を乗っ取ってしまった。
これによって産まれた、否「完成」した次元が新ファイレクシアである。
元はといえばカーンの心臓となったファイレクシアの《潜伏工作員、ザンチャ》…
…誰よりもファイレクシアを嫌った、ファイレクシアの裏切り者の部品からしたたった僅かな油が、一つの次元をこうまで変えたのだ。
裏切り者が自らの嫌った邪悪な勢力を復活させてしまうという皮肉である。バッドエンドはマジックの基本*8
その後は次元間移動の手段がないことから対外的にはしばらくはおとなしかった。
しかし、近年になって後述するカルドハイムや神河など別の次元において法務官の姿が目撃されている。
ただ復活当時は
  • スタンダード環境が「32ジェイス事件」などで大荒れしていた
  • 「新たなるファイレクシア(NPH)」で登場した「ファイレクシア・マナ」がスタンダードどころか当時のレガシーまで大荒廃させてしまった
などもあって、この復活はかなり不評だった。
元々ミラディンのストーリーがかなり人気が高かったのに、その旧要素をことごとく台無しにしながら真の悪役が現れたというのもある*9
現在では新ファイレクシアの法務官などもそれぞれでキャラが立つようになり、それぞれにファンが付いてきている。
上述の白いファイレクシア問題も
「白は秩序と体系を重んじるので、実はファイレクシア最大の敵だった白が一番ファイレクシアの理想に近い」
という点が皮肉めいていることなどから独特の人気を博すようになっていった。
カード面でも統率者セットなどで新ファイレクシア絡みのカードが数枚登場しており、さらに独自言語「ファイレクシア語*10」版までもが登場。
着実に油のようになじんできている。時間をかけたということもあるが、ごり押さずに時間をかけるというあたり結構丁寧である。
槌のコスジョー・カディーンはミラディン時代の出身である。

ゲーム的なテーマはミラディン時代は「アーティファクト」。特に現在のMtGでは定番となった「装備品」はこのミラディンが初出。
新ファイレクシアになってからは引き続き「アーティファクト」に加えて毒を示す「増殖」「毒カウンター」、「ミラディンの傷跡ブロック」時代は「-1/-1カウンター」やおぞましい兵器を示す「生体武器」、「完全なる統一」では「ファイレクシアン」そのものがテーマとなり、「完成化」したプレインズウォーカーの脅威が描かれた。



■神河/Kamigawa
「神河ブロック」の舞台。神奈川ではないし兵庫県神河町でも栃木県大田原市でもない。
ニンジャとかサムライとか《さまようもの》のいる和風次元。
モチーフはもちろん日本だが、アメリカから見た和風なのでどことなく中華混じりなのはご愛嬌*14
これまでのMtGとまったく違った世界観を取り扱うことを危惧してか、「神河ブロック」のストーリーは「ウェザーライト・サーガ*15」よりも1200年前*16というはるか昔のストーリーであり、それまでのストーリーとの間に矛盾をきたさないように工夫されている。

ゲーム的なテーマは「伝説」「スピリット」「秘儀」で、当時*17としては破格の数の「伝説の」カードやスピリット関連カードが登場した。
このスピリットは神河に存在する「神/Kami」のこと。八百万の神がモチーフとなっておりどれも非常に独特なデザインをしている。
「秘儀」はこの神が用いる特殊な呪文であり「連繋」という能力で1つの呪文に様々なテキストを付与できる性質で人間との違いを表現しようとした。
しかし
  • 全体的にカードパワーが低かったりルールが複雑
  • 独特すぎて肝心の日本人からもウケが悪い世界観*18
  • 当時のスタンダードがあんまり面白くなかった
  • 枠の変更や他TCGの流行などもあって売り上げが悪かった
などから黒歴史扱いされていた。もっとも後2つに関しては神河次元はむしろ被害者側に近いが。
何にせよ公式からの扱いはよろしくなく、当時の総決算と言える懐古ブロック「時のらせん(TSP)」ではカード化された神河由来のカードが0枚とあからさまにハブられている始末。
ただストーリーラインでは結構触れられており、「時のらせんブロック」では《夜陰明神》や《神河の魂、香醍》(まだ人間の姿を
取っていたころ)などが登場した。
「イニストラード・ブロック」の第三エキスパンション「アヴァシンの帰還(AVR)」ではタミヨウという神河出身の人妻PWが登場。
その後もタミヨウがストーリーにちょくちょく絡むので完全になかったことにはされていなかった。
が、公式コラムでしょっちゅう否定されていたことも相まって、新カードの登場は統率者セットでも少なめ。
言ってしまえば前述した現在のラバイアのように「たまに触れられる程度の次元」というのがプレイヤー間の共通認識だった。

↑ここまで昔の神河
↓ここから1200年後の神河

黒歴史かと思われた神河にまさかの再訪が発表。現実世界では17年の時が経過していた。
世界中のプレインズウォーカーの期待募る中登場した1200年後(現代)の神河は


なんでもありのネオカミガワサイバーパンク次元へと発展していた

でも侍は相変わらずデカい蛾に乗っている。
他にも『エヴァ』だの『スターフォックス』だの『ジブリ作品』だの、そうでなくともラーメン屋にDJにヤクザともうやりたい放題。
開発曰く「神河へおかえりなさい。前回訪れたときから、いろいろと変わりました。」とのことだがいい意味で変わりすぎである。
同時にこれまでのMtGでタブー視されていた「サイバー」の要素を非常に大きく取り込んでいる。
旧神河の分かりにくい設定や固有名詞の中でも読み辛いものは「英雄譚」として過去のものに*19
その上で日本の人気サブカルの要素をこれでもかと取り入れた上で、後述するようにこの変化をデザイン面でも踏襲。
プロモーション面でも最近ではド定番のカードのイラスト違い版に「灯争大戦(WAR)」と同じく日本人アーティストを起用。
さらにアニメ大国である日本主導でトレーラーのジャパニメーションまで作ってしまうほどの気合の入れよう。
ストーリー面ではいかにも日本主人公感あふれる性格の新顔のニンジャPW《漆月魁渡》が登場し、
さらにこれまで謎とされていた人物《放浪者》の正体が実は神河の皇だったことが判明するなど大盛り上がり。

ゲーム的には色ごとに「サイバーパンクを受け入れる現代側」と「旧神河からの歴史を重んじる伝統側」に分かれている。
前者に寄るほどアーティファクト関連、後者に寄るほどエンチャント関連が重視され、扱う要素が全く異なるようにデザインされている。
収録カードに強力なものがあったのも後押しになり、セットの人気は大沸騰。
売上面ではそれまで4つのセットしか達成していなかった1億ドルに到達し、歴代トップ3に入るほどになったとか。*20

■ラヴニカ/Ravnica
「ラヴニカ・ブロック」「ラヴニカへの回帰ブロック」ラヴニカ3部作の舞台。
高度に発展した文明を持ち、次元の果てまで都市で埋め尽くされた次元。外見のモチーフはチェコのプラハで、中身のモチーフはアメリカの大都市圏。
故に島は噴水や整備された河川が、森は都市の中に整備された緑地や木立が担うなど、純粋な自然がほとんど存在しない。
都市は個性豊かな10のギルドにより役割分担をされながら支配されており、そのギルド間の抗争やら協調やらで、日々事件が起きている。
「ラヴニカ・ブロック」の終了後、ギルドは解体され現在ではおとぎ話のような扱い。
代わりに「無限連合」というプレインズウォーカーの秘密結社が暗躍している…
…とされていた*21が、実際には別にギルドは滅びていなかった。
現在では色々あって権威を失っていた協定・ギルドパクトを復活させたジェイスが、総責任者として働いている。
その後のラヴニカ3部作ではボーラスとその他多数のPWの決戦「灯争大戦」の舞台となった。
最終的にボーラスは(表向き)撃破され、ウギンの手で牢獄領域に捕らえられた。
文明世界で扱いやすいこと、個性豊かなギルドのおかげで人気が高いことから、カードに登場しない時も背景世界として良く使われている。
だいたいジェイス絡みでのひと騒動だが
ヴラスカとドムリと乳首ラルの出身地。
出身者ではないが前述した都会っ子のジェイスはこの次元を気に入っており、長いこと拠点にしている。
ドミナリアから離れた最近のストーリーだとすっかり拠点の趣であり「灯争大戦」以後でもよく居ついている。

ゲーム的なテーマは「2色」で、これまで存在していた友好色・対抗色という設定を無視してすべての色の組み合わせを平等に扱う。
最近のストーリーやデザイン上における対抗色設定の薄らぎなどにも大きく関係している。

■ローウィン/Lorwyn
■シャドウムーア/Shadowmoor
「ローウィン・ブロック」「シャドウ・ムーアブロック」の舞台。
穏やかで平和なおとぎ話の世界・ローウィンと、残酷で邪悪なおとぎ話の闇の世界・シャドウムーア。
それらが自然現象によって数世紀ごとに反転している次元である。
その変転に巻き込まれた者は元の記憶を失い、「今の状態こそが正しい」と思い込んでしまう。
初実装となったプレインズウォーカーを除き、人間が一切存在しない珍しい次元でもある。

ゲーム的なテーマはローウィンでは「部族」。
シャドウムーアは「混成2色*22」とローウィンの要素の「反転」。

■アラーラ/Alara
「アラーラの断片ブロック」の舞台。
バント(:)
エスパー(:)
グリクシス(:)
ジャンド(:)
ナヤ(:)
の5つの断片に分断されており、各断片には括弧内の色のマナしか存在しない(メイン色:補助色)。
この断片間を移動することはプレインズウォーカーでない限り不可能。実質5つの次元の集合体である。
そのため欠落した色に関する概念までもがことごとく欠落している。
例えば黒と赤の欠落したバントは「裏切りがない秩序だった社会」として描かれる。
戦争ですら「徳の高い人がお互いに名乗りあって一騎討ち」「周りの兵士はみんなでそれを応援する」というもの。
逆に白と緑の欠落したグリクシスでは「新たな生命が生まれてこない上に正義も癒しもない世界」として描かれる。
裏切りや欺きが平然と行われ、主なクリーチャーが悪魔だのアンデッドだのそれを操る邪悪な魔法使いだのという未来のない世界になってしまっている。
このように5つの次元に強い個性があった…
…のだが強大なプレインズウォーカー、ニコル・ボーラスの策略により各断片が一つに繋ぎ合わされて大戦争が勃発する。
その後も一応「その色のマナが濃い地域」としてそれぞれの断片は残っているようだ。
が、積極的な再登場がないまま後述のニューカペナという同色を扱う新しい次元が登場してしまった。
ただそれぞれの次元に属する新規カードはいまでも統率者セットなどでちょくちょく出たりしている。
エスパーはテゼレットの、ナヤはアジャニの出身地。
エルズペスは別の次元からの来訪者だが、バントの理念に共感して第二の故郷としている。

ゲーム的なテーマも前述した色の組み合わせ「3色(弧)」。
ここで初めてメインとして大々的に扱われ、様々なカードが登場した。
結果、この組み合わせの通称としてアラーラの次元名が使われるようになった。

■ゼンディカー/Zendikar
「ゼンディカー・ブロック」「戦乱のゼンティカー・ブロック」「ゼンディカーの夜明け(ZDR)」の舞台。
マナが不安定で、土地が文字通り人間に牙を向く過酷な次元。
言ってしまえば『インディ・ジョーンズ』や『川口浩探検隊』なんかに出てくる荒々しい大自然の世界である。
土地があまりにも暴れまわるせいで都市が作れず、この次元には定住を「危険なこと」として好まない人も非常に多い。
実は「エルドラージ」という多元宇宙を荒廃させる強大な殺戮生物が封印されていた次元でもある。
が、ボーラスの陰謀とプレインズウォーカー達のあれやこれやによって封印がぶっ壊され、危うく次元ごと滅びかけた。住民は怒っていい。
このエルドラージの封印ははるか過去にとある3人のプレインズウォーカーによって行われた。
が、ゼンディカーが選ばれてしまった経緯は、色々あるが総じてマナに満ちた世界だったためである。住民は怒っていい
土地が暴れまわる現象はこの封印されたエルドラージに対する土地の拒否反応のようなもの。
これのせいでかつて発展していた都市を有していたゼンディカーは素朴なクソ田舎次元になってしまった。住民は怒っていい
「戦乱のゼンディカー・ブロック」では復活したエルドラージによる殺戮で滅亡しかかっているゼンディカーが描かれる。
ここで封印をぶっ壊した責任があるニッサ・ジェイス・チャンドラの3人に単なるお人よし正義感の強いギデオンが結束。
ギデオンがリーダーを務めるアベンジャーズみたいなグループ「ゲートウォッチ」が結成され、エルドラージに戦いを挑む。
プレインズウォーカーの尽力と次元全体のマナと戦力をフル動員したことによりエルドラージの始祖の巨人は打ち倒された。だが一体足りない様な……。
「ゼンディカーの夜明け(ZDR)」ではエルドラージによる傷跡が各地に残る中、「ゼンディカー・ブロック」前半で描かれたような世界が戻りつつあった。
そこでナヒリは突如復活した遺跡「スカイクレイブ」の力でかつての静穏を取り戻そうとする。
そしてニッサはそれを止めようと、ジェイスの助力を得て奔走。
荒々しい自然の溢れる現在の守護と、栄光と発展と安寧に恵まれた遠き過去の復活を巡って戦いが繰り広げられた。
ニッサキオーラ、ナヒリの出身地。オブ・ニクシリスも長いことこの次元に閉じ込められていた。

ゲーム的なテーマは「土地」。個性豊かな土地カードを多数擁している。
またサブテーマとして「冒険」があり、「探検」「同盟者」「パーティー」「Lvアップ」等の独自の要素を持っている。

■イニストラード/Innistrad
「イニストラード・ブロック」「イニストラードを覆う影・ブロック」
「イニストラード:真夜中の狩り(MID)」「イニストラード:真紅の契り(VOW)」の舞台。
狼男や吸血鬼、ゾンビにスピリットが常に人間を脅かす中世ゴシックホラーのような次元。
コッテコテのホラー次元であり、
  • ゾンビや「フランケンシュタインの怪物」めいた縫合死体とそれを作り出すマッドサイエンティスト達
  • 吸血鬼や狼男(女もいる)といった人間を食い物にする怪物達
  • 『ジキルとハイド』のような狂気や悪魔崇拝のような狂信に走り、死後暴れるスピリットとなる人間達
  • 人食いスライムや巨大なクラーケンといった原生の化け物ども
が跳梁跋扈するとんでもない地である。
呪文も「生きたまま墓に埋められる」「死者が降霊術でよみがえる」「何気なく過ごしていた人が突然消える」など様々なホラー要素がある。
『ハエ男の恐怖』モチーフのハエ人間《秘密を掘り下げる者/昆虫の逸脱者》もクソ強い。
さらにこの次元ははモチーフを非常に明確に定めた初めての次元でもある。
そのためそのモチーフにそっているならば何でも取り入れられる土壌がある。
再訪のたびに蟻走感、統合失調症の症例、ジャック・オー・ランタン、チェーンソー…
…といった元ネタのあるカードがどんどん増えていく。

「イニストラード・ブロック」当時の空は常に薄暗く曇っており、あの野蛮人なガラクですらコートを羽織る程に寒冷。
あと女性は驚きの巨乳率
かつてはソリンが作った大天使アヴァシンが人間の守護をしていたが、大悪魔グリセルブランドとの死闘の末どこへとも無く消え去ってしまう。
守護者を失った人間は危機に瀕し、闇の勢力がヒャッハーしていた。
実際のゲームにおいては人間の方がヒャッハーしていたがな!「闇の隆盛(DKA)」とはいったい…うごごご!
その後リリアナの謀略でアヴァシンが帰還、そしてグリセルブランドが出オチのように殺された。
これによって光の勢力が蘇り、魔物たちはまた以前の様に肩身の狭い思いをすることとなった。
サンドバッグにするために吸血鬼から牙を抜く《牙抜き》のイラストなんかは見ていて非常に痛々しい。人間がヒャッハーすぎる

しかし「イニストラードを覆う影(SOI)」では状況が一変。
人間以外の種族も含む多くの住人たちが、それまでとは異なる新たな狂気に取りつかれて始めてしまっていた。
さらに体の一部が触手の様なパーツに変化するなど何者かによる明確な浸食を受けていた。
その原因は、とあるプレインズウォーカーが大迷惑宇宙しいたけ残ったエルドラージの始祖をイニストラードに呼び寄せているのが原因だった。
ゲートウォッチの活躍もあって何とか収まりは付いたが、どうもスッキリと解決したとは言い難く…?
また新たな観光名所としてソリン岩が爆誕した。「出してくれ」
色々あって抜け出せはした。

「イニストラード:真夜中の狩り(MID)」ではエムラクールの狂気による傷も癒え、旧来のゴシックホラー感が戻ってきた。
しかし昼夜のバランスが崩れてだんだん夜が長くなりはじめ、それに乗じて狼男や吸血鬼が勢力拡大を図る。
ソリンはそんな勢力図が変わりだした故郷とマイエンジェルを心配し帰省。その他多くのプレイズウォーカー達も訪れ始める。

ソリン・マルコフティボルト、アーリンの出身地。リリアナは初めてプレインズウォークしたのがこの次元であり、屍術を学んだものここだという。
その他にもレンの五番~七番の相棒はここイニストラードで選ばれている。

ゲーム的なテーマは「両面カード(変身)」「部族」「昼夜」など。
特に両面カードは「イニストラード(ISD)」で初登場した要素で、以後も別の次元のセットでも多用されている。
頻繁に変身を繰り返す「狼男」はイニストラードの顔と言える存在。

■テーロス/Theros
「テーロス・ブロック」「テーロス還魂記(THB)」の舞台。
ギリシャ神話をモチーフとした、強大な存在である「神/God」が支配する次元。
鉄器がまだ発明されておらず文明の発達が遅れており、怪物たちが闊歩するなかなかの魔境でもある。
しかし神々の加護によって精神面での文化は高度に発達している。サテュロスを始めとした亜人種が多いのも特徴。

エルズペスはバントに居を構える以前にこの次元を訪れたことがあり、新ファイレクシアとの戦いの後に傷心旅行で再び訪れる。
が、暗躍するプレインズウォーカー、ゼナゴスの計画によって彼女の運命はさらに狂わされていく。
ゼナゴスの計画はエルズペスとアジャニによって打ち倒され、ひとまずの決着。
しかし主神ヘリオッドの横暴に憤慨したアジャニが民衆を扇動し神の存在が揺らぎ始め、最終的にヘリオッドは煮え湯を飲まされた。
機械戦争では信仰が神の存在に直結するという特性上、ファイレクシアの手で信者が汚染されたせいで元から邪神っぽいヘリオッドをはじめとして完成化した神が続出。侵略を受けた次元の中でも深刻な事態となりいち早く収拾できたニューカペナからの天使の援軍とケイヤの連携で仕留められた神もいた。

ゼナゴスやニコ・アリスの出身地。ギデオンもここの出身だが、あまり若い頃の話を語りたがらない。
エルズペス、アジャニ、ギデオンと白を代表するプレインズウォーカーに何かと関わりがある次元でもある。

ゲーム的なテーマは「エンチャント」「色拘束」。また「神/God」というクリーチャー・タイプが初めて登場した。
特に色拘束はこれまで純粋なデメリットだったが、色拘束を参照してメリットに転じるカードが多く作られたことでトーナメント評価を一変させた。

■タルキール/Tarkir
「タルキール覇王譚ブロック」の舞台。
アジアをモチーフにした、多様な文化を持つ5つの氏族が暮らす次元。
面白カンフー集団やらオーク突撃団など濃すぎる氏族たちが、日夜戦争に明け暮れている中々カオスなところである。
かつては空のドラゴンと地上の民が覇を争っていたが、ある事件をきっかけにドラゴンは劣勢となり最後は戦いに敗れて滅亡。
現代でのドラゴンは昔のおとぎ話になっていたが、ある人物の歴史介入でタルキールの歴史が改変される。
改変後のタルキールではドラゴンは変わらず空の支配者として、それどころか地上に住む者たちをも支配し、かつての5氏族はドラゴンを長とした氏族として生活している。
サルカン、ナーセットの出身地。

ゲーム的なテーマは前述のアラーラでは扱われなかった色の組み合わせである「3色(楔)」…
…だったのだが、歴史が改変されたことによって「友好2色」になってしまった。
ブロック全体で「パラレルワールド」や「歴史の流れ」のようなカードを表現していることもあり、現状はふわふわして不明な事も多い。
しかしアラーラ同様この組み合わせの色を初めてメインとして大々的に扱っていたのも事実。
楔3色の様々なカードが登場した結果、アラーラの様に楔3色の通称としてタルキールの氏族名が使われるようになった。

■フィオーラ/Fiora
ブースタードラフトを主目的とした特殊エキスパンション「コンスピラシー(CNS)」の舞台。
ルネサンス期のイタリアあたりがモチーフになっている次元。
陰謀が渦巻くイタリアンな機械高層都市であり、機械文明が非常に発展している。
とにかく陰謀が渦巻きまくっており、フィオーラが舞台になる短編は大体裏切りと陰謀と復讐の連続である。
アメコミMtGの主人公、ダク・フェイデンの出身地。ゴブリンのPWであるダレッティもここの出身。

ゲーム的なモチーフは「多人数戦」。
  • みんなで効果を決める「投票」や、優位なプレイヤーを引きずり下ろす「廃位」
  • 他のプレイヤー同士を争わせる「使嗾」や追加で1枚ドローできるが他のプレイヤーに奪われるリスクを伴う「統治者」
など多人数戦で効果を発揮することを目論んだ様々な能力を持つ。
またドラフト用のセットでのみ登場する次元ということもあり
  • 「ドラフトする際に公開して特殊な効果を得る」カード
  • ドラフトの際にデッキに入れるカードを1枚諦める代わりに、デッキ外で特殊な効果を発揮する「策略」という新しい種別のカード
なども登場している。

■カラデシュ/Kaladesh
「カラデシュ・ブロック」の舞台。
きらびやかで技巧的なアーティファクトに満ちた次元。
霊気によって動かされるきらびやかなアーティファクトで溢れているが、その裏では政府とレジスタンスによる戦いが繰り広げられている。
しかしそういった戦争こそあれど、全体的に華やかで明るい雰囲気を携えている。
特にこの次元で初登場した黒のオリジナル種族「霊基体」は
「数ヵ月しかない非常に短い人生を稲妻のように明るく楽しく生きていく」
という性格もあって非常に高い人気を博した。
直接のモチーフではないが、デザインや雰囲気にインド文化が参考にされている*23
元々は「スチームパンクをMtGでやろうという発想があったが、スチームパンクはどうしても暗い雰囲気を伴いやすい*24
これを「高度経済成長期の都市部のインドをモチーフにした明るい空気で吹き飛ばす」というものを目論んだ次元でもある。
これまで空飛ぶ飛行機械や戦車のカード化はあったが、「電車」「スーパーカー」などの現実に則した乗り物がカード化したのもここが初めて。
この時期からMTGは、これまでの「剣と魔法で戦いドラゴンが飛び交う」という旧来のファンタジーイメージからの脱却も図るようになった。
剣と魔法の世界だけでネタ切れなくここまでやってきたから仕方ない
チャンドラ・ナラー、サヒーリ・ライ、ドビン・バーンの出身地。

ゲーム的なテーマは「アーティファクト」「エネルギーカウンター」「禁止カード」
他次元(他セット)でも登場している「機体」もここで初登場した。

■アモンケット/Amonkhet
「アモンケット・ブロック」の舞台。
古代エジプト風の次元。
「王神」なる絶対的な支配者が統治しているが、普段からこの次元に居るわけではないため、平時は5柱の神々に従って人々は暮らしている。
人々は神々の下で修練を積んで、神々の出す5つの試練をすべて潜り抜けることで来世での栄光を求める。
その中には「目的のためなら仲間を犠牲にする野心」なども含まれている。
さらに生きている人間はとにかく修練を積むことが最優先とされる。
そのため料理や耕作、掃除や人の出迎えといった他の雑事には包帯を巻いてミイラ処理をした動く死体を用いるという不気味な次元でもある。
初出時はとにかく「一見平穏そうに見えるがひどい違和感を持つ次元」として登場した。

その実態は、「王神」ことボーラスの策謀に巻き込まれた被害者たる次元。
「優れた肉体能力を持つ者の死体に特殊な改良を施した不死の軍隊『永遠衆/Eternal』」を作り出す為に小規模とはいえ次元をまるごと支配・改造。
住民が修練に明け暮れるように偽りの栄光や試練の伝承を人々や神々に吹き込んでいた。
つまりボーラスは自分の目的のために、ひとつの世界の道徳さえも捻じ曲げて人間牧場として利用していたのである。
最終的に永遠衆の量産という目的が達成されて用済みとなったアモンケットは「破滅の刻」を迎えさせられ、封印されねじ曲げられていた3柱の神々とボーラスによって壊滅的な被害を受け、神々も5柱のうち4柱が死亡した。
残された人々は生き残った女神ハゾレトの元で細々と暮らしている。
また破滅の刻の時にボーラスにねじ曲げられて大暴れした蝗の神とスカラベの神はのちに正気に戻ったのか、普段は人々やハゾレトから距離を取りながらも機械戦争の折には真っ先にファイレクシアの軍勢に立ち塞がり迎撃を行った。
サムト、バスリの出身地。どうか幸せになってほしい。

ゲーム的なテーマは「墓地利用」と「砂漠」。

■イクサラン/Ixalan
「イクサラン・ブロック」の舞台。
中南米をモチーフとしたジャングルと海の次元。
  • 恐竜を従える「太陽帝国
  • 吸血鬼によるキリスト教的な組織「薄暮の軍団
  • 船を駆る荒くれ者ども「鉄面連合
  • イクサランの秘密を守るマーフォーク「川守り
この4つの勢力が謎の秘宝「不滅の太陽」を巡って戦う。モチーフは上からアステカ帝国&インカ帝国、大航海時代のスペイン(コンキスタドール)、カリブの海賊、マヤ文明。
次元を自由に出入りできるプレインズウォーカーだが、この次元は一度入ったら出ることが出来ない仕組みが存在する。
これは前述した《不滅の太陽》というアーティファクトの力によるもの。ボーラスの策謀で簒奪された後は出入りが自由になった。
ファートリの出身地。

ゲーム的なテーマは「部族」「両面カード」「宝物トークン」など。
両面カードは「条件を満たすことで土地に変化する」というものがほとんど。探検の先で見つけた秘境のイメージ。
宝物トークンは後に様々な次元でも登場するようになった。
また、これまでMtGではほとんどタブーだった「恐竜」が本格的に登場した。

■ヴリン/Vryn
「マジック・オリジン(ORI)」での舞台の一つ。
「魔道士輪」と呼ばれる魔力転送システムをめぐり、2つの勢力が抗争を続けている次元。
ジェイスの出身地。

■エルドレイン/Eldraine
「エルドレインの王権(ELD)」「エルドレインの森(WOE)」の舞台。
アーサー王伝説と童話、特にグリム童話のような世界的に有名なものをモチーフとした中世風次元。
その名前からエルドラージが関与していそうだがそんなことはなかった
エルフの支配に叛旗を翻した人間達による5つの宮廷により支配されており、宮廷の支配の及ばない「僻境(The Wilds)」には魔物や妖精達が暮らしている。
日本人にすら一目見ただけで何が元ネタになっているかが分かるほどにモチーフがはっきり分かりやすい。
『白雪姫』『シンデレラ』『美女と野獣」、中には『ラプンツェル』『3匹のやぎのがらがらどん』なんてものまである。
ウィルとローアンの出身地。

ゲーム的なテーマは非常に雑多。
あえて言うなら「食物」トークン、「出来事」という1枚で2回使えるカードか。
それとやたら多い禁止カード。
エルドレインの王権期は直近のラヴニカ3部作が多色祭りだったこともあってか全体的に単色推しな面もあり、「一徹」という同じ色のマナを3つ以上使って唱えるとボーナスが得られるものある
……と思ったらエルドレインの森での再訪時に両方の面の色が違う出来事のおかげで多色推しになった。
メカニズムも「出来事」と「食物」以外はほとんど全て刷新され、「食物」をさらに発展させて雑に出てくるオーラ・トークンの「役割」などトークンに関連するメカニズムが多数扱われている。
「王権」よりは抑えられているけどカードパワーも健在。

■イコリア/Ikoria
「イコリア:巨獣の棲処(IKO)」の舞台。
地面からクリスタルが生えている不思議な次元。
怪獣やゴジラやキングコングやシャークネードが闊歩しており、人類は防壁に囲まれた都市に集まって暮らしている。
怪獣といっても我々の想像する巨獣とはニュアンスが違い、「突然体が変形していく生き物」というもの。
怪獣側は基本的に人間に害をなす存在なので人間は怪獣から身を守るために戦っている。
が、一方で人類側にも怪獣との共存を主張する勢力が存在しており、一枚岩というわけではない。
ルーカの出身地。だが彼が盛大にやらかして破滅したため実質的にはビビアンの第二の故郷となりつつある。

ゲーム的なテーマは「3色(楔)」に加え、「相棒」や「変容」といった非人間感を強く打ち出したもの。

■カルドハイム/Kaldheim
「カルドハイム(KLD)」の舞台。
中心となる「世界樹」とその周りを周回する小次元「領界」から構成される次元。モチーフは北欧神話とヴァイキング。
人間の暮らす領界や氷雪に閉ざされた領界、戦乙女(男もいる)の住まう領界などの10の主要領界とその他の領界が存在する。
領界間には世界樹の実から生まれたとされる数々の魔物、そして新ファイレクシアの影が渦巻く。
元々は「プレインチェイス」と背景ストーリーで少しだけ登場しただけの超マイナー次元。しかし突如としてエキスパンションの舞台に抜擢された。
さらにこれによって「イマースターム」という次元がカルドハイムの一地方の古称という設定となって整理された。
重厚な背景に対して実際にセットのストーリーに使われている設定が非常に少なめ
固有名詞の多さなどとにかく非常にとっちらかっており、開発部もこのことを即座に反省コラムにしたためたほど。
またこの次元の神は他の次元のそれと違って破壊不能や復活能力を持たず、これがあまり神らしくないと不評気味。
しかしこれは北欧神話の神が普通に死ぬためである。他にも割と元ネタに忠実な点が多い。
知る人からは良い設定であるとされることも多いため、今後の展望が強く期待されている。
また、背景ストーリーにやたらLGBTQが出てくることも一部でネタにされていた
「イクサラン・ブロック」で登場したアングラスがこの次元のことを語っており、何かしらの繋がりがあるのではと推測されている。
タイヴァー・ケルの故郷

ゲーム的なテーマは「氷雪」「英雄譚」「モードを持つ両面カード」など。

■アルケヴィオス/Arcavios
「ストリクスヘイヴン:魔法学院(STX)」の舞台。
ストリクスヘイヴン」は次元名ではなく、アルケヴィオスに存在する学院の総称である。
5体のエルダードラゴンによって創設された
  • 歴史学の「ロアホールド」
  • 芸術の「プリズマリ」
  • 数学の「クアンドリクス」
  • 修辞術の「シルバークイル」
  • 生物学の「ウィザーブルーム」
の5つので、それぞれに魔法を研究しているイギリス風の学院。
あらゆる次元の呪文を収めた大図書棟が存在しており、魔法を用いたラグビー的なスポーツ「メイジタワー」も盛んに行われている。
しかし華やかなキャンパスの陰では禁断の魔法を求める秘密結社「オリーク」が暗躍。
そこに死者を蘇らせる魔法を研究するリリアナオニキス教授、イコリアを追われたルーカが加わり、学院に動乱が訪れる。

ゲーム的にも学園生活を再現されており、ゲーム外から「講義」カードを持ってくる「履修」なんてものがある。
他にも《抜き打ち試験》だの《詰め込み期間》だの《真っ白》だのやけに生々しいカード名が多い。
ストリクスヘイヴンを舞台とした「統率者2021(C21)」では『ストリクスヘイヴンの伝説たち』という専用の説明コラムまで存在するという面白さ。
現実に引き戻されて胃が痛くなる大学生プレイヤーが続出したとか。《生ける卒論、オクタヴィア》なんてのもあるぞ!
カズミナはこの次元を拠点としているが彼女曰くこここの出身ではないらしい。機械戦争のさなかにクイントリウス・ガントがプレインズウォーカーとなった。

元ネタは言わずもがな『ハリー・ポッターシリーズ』である。
ここにアメリカの学校文化なども入れ、さらにアメリカのホームドラマなんかのネタも拾っているという英語圏の人々にはかなり芳醇な題材だった。
一方で、学校の在り方がそもそも異なっている国の人々からはそこまでウケがよかったわけではなかったようである。
そりゃ寮生活なじみない学生も多いよねぇ……

ゲーム的なテーマは「2色(対抗色)」「モードを持つ両面カード」。
対抗色の2色はラヴニカとの差別化のために「2色の決して共通しない要素」というところに主眼が置かれている。

■カペナ/Capenna
「ニューカペナの街角(SNC)」の舞台。
禁酒法時代のニューヨーク、つまりマフィア抗争期を思わせる巨大都市「ニューカペナ」を擁する次元。
「光素/Halo」と呼ばれる物質を巡って5つのマフィアが暗闘を繰り広げている。
「地下ボクシング」「やたらと身なりのいい悪の組織のボス」といったマフィアもの定番の要素も盛りだくさん。
それに加え、リムジンや電車といった要素がカラデシュ以上に現実に則したものとして登場している。
「現実的な技術や描写が存在する」というのならカラデシュやネオ神河も同じではあるが、ニューカペナはカードやストーリーから漂う雰囲気に全体的に魔法や異世界感がかなり少なく、その点かなり異質。
100年くらい前の話ならもう立派にファンタジーになるということなのだろう。
今回登場する《華やいだエルズペス》も、設定上はキャバレーの接客係である。
しかもストーリー上では満員電車に揺られたりクリーニング屋に勤めたりもする。

…「ニュー(New)カペナ」の名の通り、この次元は最初からこうだったわけではない。
数百年前*25、カペナはあのファイレクシアの侵略を受けた。
その際、天使とデーモンは協力して人々を守るために雲を貫くほどの強大な要塞を築き上げた。
それが発展して作り上げられたのが現在の高層都市「ニューカペナ」である。
現在ではニューカペナの人々はファイレクシアの事をほとんど忘れており、ニューカペナの外にあるかつて文明があった「旧カペナ」に対して無関心。
旧カペナの一部は生き残ったファイレクシアの残党に支配されている。
長らく謎だったエルズペスの出身地でもある。

ゲーム的なテーマは「3色(弧)」。

■バブロヴィア/Bablovia
ジョークセット「Unstable(UST)」の舞台。
通常の多元宇宙とは異なる「Un-iverse(アン元宇宙)」に存在している。要するに銀枠用の世界ということである。
「小型装置団」「S.N.E.A.K.職員」「卑怯な破滅軍団」「ゴブリンの爆発屋」「交配研究所」の銀枠らしい5組織が次元を支配している。
雰囲気はとにかく「やたら回りくどい」感じ。
他にも銀枠セット全体に言えるが、黒枠のストーリーラインやあるあるネタを茶化したカードも存在する。

ゲーム的には「からくり」や「拡張」という上記の次元(黒枠)では実装されない技術を有し、専用デッキを用意して使用する。
「サイボーグ」という新しいクリーチャー・タイプも登場した。
かつては「ゴチ!」だのジュースを買いに行かせるカードだの「ゲーム上のおかしさ」で話題を博した銀枠セット。
だがここ最近は「ありえたかもしれないMTGの歴史」のプレビュー会場のようにも利用されている。

■お菓子とウサギさんたちのふわふわもこもこ次元/Plane Filled Entirely with Fudge and Bunny Rabbits
「お菓子とウサギさんたちのふわふわもこもこ」の次元である。それ以上でもそれ以下でも無い。
次元の可能性は無限であり、こういう次元もあって不思議ではないよ、という一例のため示された次元。
でもアジャニとかいると和む。




この他にもメルカディア、ウルグローサ、セラの領土、レガーサなど様々な次元が登場している。
カード化されていない大まかな設定だけ言及されている次元もさらにたくさんある。
それらの一部は特殊な多人数戦セット「プレインチェイス」シリーズの「次元カード」という形で見ることができたりする。


詩人は他の世界の物語の一節を夢見る。アニヲタは項目の追記・修正用のネタを夢見る。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • MtG
  • プレインズウォーカー
  • 次元
  • Magic the Gathering
  • ギャザ
  • マジックザギャザリング

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2023年12月20日 15:13

*1 マジック流に設定を再構築することは、「元ネタとマジックの世界設定の辻褄の合わなさの解消」「現実世界でナイーブな問題に触れてしまうものをロンダリングするといった社会問題への対処」なども含まれている。例としてギリシャ神話の大神ゼウスは稲妻を用いる好色な性格だが、これをマジックのキャラとしては白の神ヘリオッドに翻案することで赤のフレーバーである稲妻を用いず、さらに男女関係においては潔癖な人物に仕上げている。そして神なので「God」という宗教的にナイーブな言語を「これは作品中で神様扱いのキャラなので」と使う理由付けにもなるというわけである。

*2 1つのパックで大体2~5枚のプレインズウォーカー・カードが登場するので割とよくいるようなイメージがあるが、「アモンケットの『永遠衆』がなぜプレインズウォーカー軍団じゃなかった」のかという質問に対して「プレインズウォーカーはあなたたちが考えているよりも珍しいんだよ」という趣旨の回答があった。

*3 ただしこれは他の「歴史を感じられる次元」でも使用される。テーロス(古代ギリシャ)、カルドハイム(北欧神話)、神河(日本)など。

*4 実際にはこちらの中国人風のアラジンの方が原典に近い。

*5 例として日本でも東京ディズニーシーの「アラビアンコースト」は面積が小さい。世界史オタクや千夜一夜物語好きにとっては割と魅力的な題材なのだが……。

*6 ラバイア値がラバイアと同値なのは銀枠のバブロヴィアとポータル三国志の舞台の次元。これらはストーリー上滅亡している旧ファイレクシア関連の次元やセラの領土より下に設定されている。

*7 ただし開発段階では候補の一つとして名前が上がることはあった模様。

*8 当時はローウィン(素朴な次元が突然闇堕ち。)、アラーラ(5つの断片が衝合してしまったのでもう個性豊かな断片が戻ってこない。エルズペスが悲しみながら立ち去る。)、ゼンディカー(エルドラージの覚醒により大荒廃。)、もう少し前で言えば時のらせん(過去の登場人物が次々と死亡。)とバッドエンドが続いており、割と辟易されていた。さらにファイレクシアの要素が他の色まで広まったことによって出てきたイラストは人によってはかなり怖い・生理的嫌悪感を催すものであり、《砕けた天使》などは当時結構な話題になった。

*9 特に当時の一部の黒愛好家の過激派は「ヨーグモスのいないファイレクシアなんてまがいもの。」「白マナで滅ぼされたファイレクシアになんで白が混ざってんだ。」「法務官も白や青は強いのに黒は沼渡り。ファイレクシアと言えば黒なのに黒が一番弱い。」などといじけていたりしたらしい。

*10 解読方法は公表されていないが、本物の暗号言語のようにちゃんと翻訳ができる。ちなみに解読した人曰く「エリシュ・ノーンはテキストに誤訳がある」とのこと。

*11 魔法により存在の位相を変化させ、一時的にどこへともなく消し去ってしまうこと。

*12 存在の位相をフェイズ・アウトから元に戻して再出現させること。

*13 詳細はこの項目の趣旨を逸脱するためテフェリーの項目を参照

*14 「神河物語(CHK)」期の2004年あたりならあまり問題にならなかったが、最近はこういった「勘違い○○」は主にアメリカで「文化に対する攻撃」とみなされるようになっていたりする。後述するネオ神河に勘違い日本っぽさがなかった理由のひとつは、実は非常に高度な問題に絡んでいるのだ……。

*15 「ウェザーライト(WTH)」からアポカリプス(APC)」までの10のカードセットで語られるストーリー。マジックのストーリーの中ではもっとも長い。

*16 当時は「はるか昔」としか言われていなかった。

*17 まだ統率者戦という遊び方が存在しなかった。伝説がテーマになるということから「神河物語(CHK)」の発売に合わせてレジェンド・ルールが改変されている。

*18 「崩老卑(ほろび)」「禍汰奇(かたき)」の様にヤンキーが使う「夜露死苦(よろしく)」が如く、当て字の様な漢字の名を持つものや「今田(こんだ)」など読みが紛らわしい名のものが多かった。一応前者は意味も無くその漢字が当てられているわけでは無いのだが。

*19 前述した香醍など続投されているものもあり、完全に無くなっているわけではない。しかし新規の漢字名の伝説のカードは当て字めいたものはかなり少なくなっている。

*20 余談だが、MtGの開発陣の一人でプレイヤーに色々と大きな影響力を持つコラムニスト、マーク・ローズウォーター(通称「マロー」)はことあるごとに神河を批判し「神河は一部の人が熱心に言ってるだけで不人気次元だ」と断言するコラムを何度も書いていた。彼の名誉のために言うが、ここまで換骨奪胎に成功しているのだから的外れになるのも仕方ない。また、実はこの批判はマローが「神河ブロック」時代の開発にそこまで深く関わっていなかったというのもある。「彼ががっつり関わっていたイニストラード期のスタンダード不人気などについては彼があまり触れないこと」「そもそものアメリカのコラムの書き方」なんかも分かってくると違った視点が見えてくる。

*21 そのためラヴニカへの再訪を望む人にマウンティングするヴォーソスが後を絶たなかった。当時のMtGがあまり背景世界を重要視していなかったこともある。

*22 「混成マナ・シンボル」という、どちらの色でも唱えられるマナ・シンボルを有している。

*23 実はこれは「チャンドラ」という名前がインド風だったことが関係しているという。

*24 スチームパンクはイギリスの産業革命期をモチーフにしており、英語圏ではどうしても「貧富の差の拡大」や「環境破壊」といった後ろ暗いイメージと生々しく結びつきやすいため。日本で有名なスチームパンク作品に『スチームボーイ』があるが、あれですらだいぶ明るい方。

*25 AR4205年のドミナリア=ファイレクシア戦争よりも前。