登録日:2010/10/06 Wed 18:16:52
更新日:2024/01/19 Fri 23:33:53
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9.18事件とは、TGS(東京ゲームショウ)2010における
IDOLM@STER関連の騒動。もしくはそれを発端とした出来事の一部始終である。
まず、IDOLM@STER(以下、アイマス)についての概要であるが、
- プロデューサーとなってアイドルを育成する「育成シミュレーションゲーム」
- アイドル以外のキャラの没個性化により、アイドルに焦点の当たる作りに
- ゲームのユーザーは男性が殆ど
- ソフトの売上自体は特筆すべきものではないが、ユーザーのDLC課金によって莫大な利益を生みだし一躍キラータイトルとなった(なんとその売り上げは当時世界3位)
特にニコニコ動画では、
東方・
VOCALOIDに並んで「御三家」と呼ばれ、爆発的な人気を得ていた。
また多数のアニメ化やゲーム作品が出ている現在とは違い、事件当時は
- アーケードゲームが元であった為にストーリーが希薄であり、その影響で二次創作が隆盛を誇っていた。
- この事件以前にアニメ化はされてはいるが完全に別物。
- 一部の固定ファンから愛されている地下アイドル的な人気。
- ゲームの開発のスピードは比較的遅い方で新作はとても貴重。
といった特徴も挙げられていた。
事件は2010年9月18日、東京ゲームショウで起きた。
「プロデューサー決起集会」と銘打たれたアイマスイベントでは、
アイマスガールズ(所謂キャラの中の人)と坂上プロデューサー(以降坂上P)が壇上に上がり、新作アイドルマスター2の情報を告げる等、かなりの盛り上がりを見せていた。
しかし、時が進むごとに告げられる新情報は観客(アイマスシリーズのユーザー、以降P)の度肝を抜く余りにも衝撃的なものだった。
まず、
もともとライバルとして新キャラが登場することは事前に告知されていたが、
従来のアイマスにはなかった男性アイドル(もちろんイケメン)「ジュピター」の登場に会場は一瞬ざわつき、やがて静まり返った。
これまでの盛り上がりが嘘のように、Pたちは何ら一言も発さなかった。
ただ、この時はサイリウムを振るなど、まだ余裕のあるものもいた。しかし次の発表により多くのものがその余裕を失うことになる。
既存のアイドルキャラ4人(伊織、あずさ、亜美、律子)が、まさかのNPC化、つまりプロデュース(攻略)不可であることが決定的となったのである。
これは前情報で告知されていたものの、多くのPは「どうせDLCでプロデュース可能になるだろう」と考えていた。しかし坂上プロデューサーから直々に、何のフォローもなく告げられたことで、その場にいたPたちは大きなダメージを負った。
続いて坂上Pが淡々と告げる言葉は、それまでアイマスを支えてきたPたちにとって、まるで「死刑宣告」のように響いた。
- 4人のファンはもとより、他のアイドルのファンにとっても、マイナスには成り得ても決してプラスには成り得ない誰得展開
- PVでは4人も普通に登場していた(その為、後に「PV詐欺」だと揶揄されることに)
- 亜美、伊織が使えなくなったことでロリトリオは解散、亜美/真美の同時プロデュース、姉妹デュオも不可能になった
- 先に男性キャラの追加という情報が出ているため、容量の問題で仕方ない、と無理に納得することも不可能だった
- この重大な問題がついでのように出された事への反発
- 決定的な言葉は退場直前に置き逃げのようにさらっと言っている事
こうしてPたちのテンションは一気に沈んだのだが、それでも来年度に行われるライブの告知等で、多少は息を吹き返しつつあった。
しかし続く発表は、
- 9人のメンバーを3×3のユニットに分け投票を行い、一番人気の高いユニットがライブで新曲を歌えるといういわばサバイバル方式
- 結果、テーマの「団結」とはほど遠い事態に
- そして当然のように省かれる竜宮小町
等、Pたちの傷心に追い討ちをかけるものでしかなかった。
これらの情報を伝えた後、ライブのためアイマスガールズを残し、坂上Pはステージを去ってしまう。
本来なら新情報発表により、会場の熱気は最高潮に達している…はずだったのだが、実際にはもはや成す術もなく呆然とするPたちが取り残されているだけだった。
この惨状に、律子役の若林直美は「プロデューサーになれました」と明るい口調で挨拶し、他のアイマスガールズたちもなんとか場を盛り上げようと元気よく歌い、踊った。
しかし冷めきった空気はもはやどうにもならなかった。一部のPたちはサイリウムを振る元気すらもなく、アンコールの声も上がらないという、前代未聞の事態となる。
これはさすがにスタッフにも予想外だったようで、公式の動画放映サイトがアンコール枠としてとっていた6分ほどの撮影枠が、全て粛々と退場するPたちとスタッフの撤収作業で埋められるという凄まじい絵面となった。
ちなみにNHKの番組『
MAG・ネット』のニュースコーナーでTGSの模様が特集された際、わずかながら決起集会の発表の瞬間も放送されており、カメラは呆然とする観客の姿を映し出していた。
ナレーション小野D「(特集のBGMまで止まり)Oh, サプラーイズ…」
また、事態は18日のみに留まらなかった。
翌日のラジオにおけるミニドラマで女性アイドルとジュピターのメンバーが共演。
取りようによっては恋愛フラグにも見えるやり取りをし、ファンを不安の渦に巻き込んだ。
まあ、収録はTGS以前の為タイミングが悪かったとしかいいようがない。
余談だが、このラジオで男性キャラの中の人が「男性キャラがアイマスに出ていいのだろうか?」というPに近い視点での発言をした為、彼に支持が集まった。
さらに、後日発売されたCDにおいても一騒動があった。
このCDの楽曲は以前歌われた曲のリミックスなのだが、変更された歌詞が……
等の……うん、なんというか、これまた本当にタイミングの悪い状況での歌詞だった。
本来なら雪歩が緊張のあまり噛んだという解釈で、笑ってスルーかちょっと一騒動起こるくらいのものだったが、本当にタイミングが悪かった……。
そして発売が近づくにつれ徐々にそれ以外の新要素も公開されていったが、その内容も
- アイドル同士の不仲や対立が発生するシステム
- 芸能界に特有の圧力を表現
- 生々しい描写を暗喩するテキストや暗いシナリオ
- 好評だったオンライン対戦システムの廃止
など、これまでの作品と比べ印象が暗いものや悪いものが多かったため火に油を注ぐ形となってしまった。
勿論、新曲や新システムなど評価すべきものもあったのだが……。
批判は当然開発スタッフにも集まった。
- なぜ今回のことが騒動になると分からなかったのか。見立てが甘すぎる。マーケティングがおかしい。
- お通夜ムードのTGS会場で、声優を残して去る坂上P(「声優を盾にした」との批判)
- ナンバリングタイトルでなぜこんな冒険を……
こうした批判が噴出する中、公式スタッフの対応でまた対立が起きる。
今回の一連の変更に対し、公式インタビューで石原ディレクター(以降石原D)が「保守的なオタクには受けない(笑)」と(本人的には冗談のつもりで)発言し、大炎上となってしまったのだ。
これには大きな批判の声が集まり、さらには石原Dへの脅迫や殺害予告まで飛び出す始末だった。
石原Dはインタビュー内で「(リストラを)こっそり言うのは嫌だった」というコメントを残しているが、
動画を見ると、どう見ても去り際にさらっとこっそり言っている。
実際にステージで発言したのは坂上Pの方であったため多少の食い違いは仕方ないが、これをこっそりではないというのは少々無理があった。
さらに公式から「声優に対する誹謗中傷はやめて」との通達がなされる。
心無い者による声優への誹謗中傷があったことは事実で、通達自体はごく正論であった。しかしこれが、自分たち(運営陣)に対する批判は無視するということかと一部Pたちの神経を逆撫で、批判をされる様な物を作るのが悪い、と泥沼化してしまった。
なお、この事件は現状に不満を持つPたちの「署名騒動」に発展。8,000名にも及ぶ署名が集まり、10月7日にバンナムに宛て提出されたが、結局反応は無かったようである(2018年1月現在)。
ニコニコ動画内でもP達が投稿したアイマス動画に荒らしがはびこり、動画のカテゴリタグである「アイドルマスター」を登録した動画自体の減少(2010/9/19には123,873件あった動画も、2010/9/24には122,960件にまで減少)という影響が見られ、「御三家崩壊」と言われるまでの騒ぎとなった。
舞台外でもファン同士の苛烈な衝突が見られた。
「2を認めるか否か」「プロデュース(ゲームプレイ)を続けるか否か」などで衝突が起こり、崩壊するコミュニティも出たという。
さらに当時全盛期であった某アフィブログにより、PV稼ぎの餌にされて内輪揉めが拡大するなど、事態は混乱を極めた。
余談ながら、この騒動が影響してか開発元のバンダイナムコホールディングスの株価が800円を割る下落を見せる。
そして2010年10月1日、終値が765(ナムコ)円になるというちょっとした奇跡が起こった。
その後の展開
2011年2月24日にアイマス2が発売されたが、その内容は事前情報よりも更にPたちの期待を裏切るものだった為、彼らの怒りが収まることはなかった。
遂には初回版の売り上げ不振で通常版が販売前に廃盤という事態に陥ってしまう。
この結果にはアイマス2のゲームとしての完成度の低さに大きな原因があったと言える。
CGモデルは出来が良かったのだが、シナリオのまずさやネット対戦を消去するなどゲーム性を悪化させたのも響いた。
まあ、無印家庭版からしてゲームよりモデルが重視されていたと言われればそこまでだが……。
アイマス2発表~アニメ放送までの間を冬の時代と評するプロデューサーもいる。
その後、アニメのDVD・BDの発売に合わせた2011年7月21日、アイマス2はPS3でも発売された。
このPS3版限定で一部DLCが同梱され、短時間ではあるが竜宮小町のメンバーと触れ合えるモードが追加された。
またアニメBDにはG4U(グラビアフォーユー)というモデルの撮影に特化したPS3専用ゲームが付属し、好評を呼ぶ。一部で切望されていたDS組のHDモデルも作られ、これも大好評であった。涼ちんにアレがないっぽいのはなんでなんですかね…
しかしこれらは箱○ではプレイ出来ず、一部の箱○ユーザーからは批判を浴びた。
さらに、ゲームと両輪であったCDの売上もDS組辺りから本隊も初動一万を切るのが珍しくなかったが、2絡みのCDは一万切り常連となってしまった。
この下がり傾向はアニメのOPであるREADY!!の発売まで続いた。もっとも、MA2リリースの頃からは立ち直りの気配があったが。
ちなみに、竜宮小町組のMA2もしれっと発売されている。ここはコロムビアいい判断した。
余談になるが、千早のMA2は初動売上約7200枚を記録した。くっ
しかしその後、アニメOPのREADY!!が過去最高の初動売上を記録し、アニメのMAとも言うべき生っすか!?SPECIALシリーズはレコード大賞で企画賞を受賞する。
アイマスシリーズ全体としても、アニメのヒットを起点として、その終了に揃えてリリースされた
シンデレラガールズやグリーがアニメスタッフと組んで始めた
ミリオンライブらソシャゲがヒットし、シンデレラやミリオンのCDも(おまけ付きの上シンデレラのシリーズは安めの設定になっているとはいえ)、軒並み初動1万超えする優良コンテンツに育った。
こうして以前より勢いを増した快進撃で本隊・DS・シンデレラ・ミリオンついでにジュピターが完全合体した
XENOGLOSSIA?知らない子ですね…。まあ2017年になって色々回収されはじめたけど、最大規模のSSA2Daysライブが成功をおさめ、
直後に次々と中の人が結婚し、シンデレラとミリオンもそれぞれ単独ライブイベントを打つなど、コンテンツとしてのアイドルマスターは大きく発展する。
2014年には765プロメンバー全員がプロデュースできる『アイドルマスターワンフォーオール』が発売。
ワンフォーオールは全員プロデュースに戻り、2で不評だったシステムも改善され、DLCでシンデレラやミリオンのアイドルが参戦するなど、アニメで取り込んだファンを狙った事もあり、発売週だけで8.3万本を売りあげる。
そしてアイマスは10周年に到達、念願のリアルライブでの「ドームですよ!ドーム!」を達成した。
ジュピターのその後
9.18において最悪の形でユニットがお披露目されてしまったため、一時は謂れのない中傷を受けるなど、もう一方の被害者とも言えるジュピターだが、公式からの扱いはまちまちなものであった。
一応ゲーム内で歌われた曲のフルバージョンが入ったCDが発売されたり、続編のゲームでも僅かに登場するなど出番はあったが、日に日に露出は少なくなっていた。
アイマス声優であればほぼ全員が体験しているライブも、彼らの曲を女性声優たちがカバーしたり休憩時間に会場内で流したりするだけであり、今回の騒動や男と女のファン層の違いなど様々な問題があり参加する事はなかった。しかし、そんな中でも彼らの魅力に気付き、応援するファンが徐々に増えて行った。
そして2014年7月17日、プロデュース対象を男性アイドルとしたSideMが発表され、ジュピターも2で所属していた961プロから315プロへ移籍するという形で参加、プロデュースが可能となる。
そして2015年12月に行われたSideMの1stライブにて、ユニット発表から約5年、ジュピターは遂に念願の初ステージを踏んだのである。
ライブではSideMでの楽曲しか歌わなかったものの、ライブ内のミニドラマやキャラ紹介には元961プロと示された。
担当の声優陣は、この時を5年間待ち続けてくれたことについてファンに感謝の意を捧げた。御手洗翔太役の松岡禎丞や伊集院北斗役の神原大地は嬉しさと感動のあまり男泣きし、天ヶ瀬冬馬役の寺島拓篤もブログで長く苦しかった5年間について深く熱くその思いを語り、「見たか、765プロ!!」と雄叫びを上げている。
2018年の3rdライブツアー幕張公演では、961プロ時代の楽曲「Alice or Guilty」を披露し、長年にわたる雪辱を晴らした。そして2019年、バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル(以下バンナムフェス)において、765プロや346プロの面々と共にジュピターもまた、アイマスシリーズのライブ初となる東京ドームに立った。
バンナムフェス1日目での765プロ側は『765ミリオンスターズ』名義で、ASから春香、千早、響、真がミリオンの後輩アイドルたちを率いる形で出演。
一方のジュピター側も315プロの仲間たちと共に出演し、『SideM』がオープニングとエンディングの両方を担当。
ジュピターは「BRAND NEW FIELD」にてエンディングで披露されたユニット曲のトリを務める大役を見事に果たした。
ラストは『SideM』の全体楽曲である「DRIVE A LIVE」を全出演者で熱唱し、ついにジュピターと765ASが同じステージで同じ曲を共に歌う日が来たのであった。
石原D
アイマス10周年のインタビューにおいて、石原Dは10周年の節目ということで、9.18を振り返り謝罪した。
石原Dは、2でやろうとした事の難しさや言葉足らずだったことを反省し、この時の出来事は「制作サイド」と「応援するファンサイド」の関係性についても、いろいろと考えるきっかけとなったと語った。ただ、当時の騒ぎの中心となった竜宮小町やジュピターの設定に関しては、当時2と同時に動いていたアニメにも無くてはならなかったものであり、当時も今も心底納得しているという。
また竜宮小町のNPC化については、上層部からの時間や予算の制約によるものであるとし、そこでライバルとして彼女達を登場させることで、少しでも出番をカバーしようとした結果だったとのこと。
その後、石原Dは制作スタッフが誰に変わろうと永遠に作品が続く「自分の理想のIPの姿を見たい」と述べ、2016年1月31日をもってバンダイナムコを円満退職した。
追記・修正は頑張るアイドルたちをこれからも応援し続けるプロデューサーの皆さんにお願いします。
愚痴や煽りコメントが多発したため、コメント欄をリセットしました。現在、相談所にてコメント欄の撤去について議論されています。
今後、愚痴や誹謗中傷等を行った場合はIPの規制や公的機関への通報等の処置、最悪の場合はコメント欄が撤去される可能性もありますので、マナーにはお気を付け下さいます様お願い致します。
- コメント欄撤去について、相談所内で反対意見が無かったため、コメント欄をリセットしました。今後、コメント欄が改善されない場合、コメント欄が撤去される可能性がありますのでご了承下さい。 -- 名無しさん (2023-04-23 00:41:34)
- これ、スターリットシーズンでSideMだけハブられた事について非難の声が上がった事について追記しても良いんじゃないだろうか…? -- 名無しさん (2023-04-23 01:41:53)
- わざわざ新しい火種を焚べる必要なんてないのでは -- 名無しさん (2023-04-23 01:45:36)
最終更新:2024年01月19日 23:33