仮面ライダーアギト

登録日:2010/08/06 Fri 11:08:09
更新日:2024/03/29 Fri 18:00:24
所要時間:約 11 分で読めます




仮面ライダー生誕30周年記念番組

目覚めろ、その魂

仮面ライダーアギト
MASKED RIDER AGITΩ



目次


【概要】

『仮面ライダーアギト』は、2001年放送の平成ライダーシリーズ第2作にして、仮面ライダー生誕30周年記念作品。
2021年、放送開始から20周年を迎えた。

第1作『仮面ライダークウガ』の続編であり、「未確認生命体」「4号」などクウガの単語がいくつか(序盤だけ)登場する。
しかし、とある事情からクウガの設定と意図的な矛盾を持たせており、パラレル的な扱いになっているため、クウガに登場した物と関係ありそうで微妙に違う名称などが見られる。*1
前作では怪人による殺人描写があまりにも生々しすぎて苦情が殺到したので、今作では怪人による殺人描写ははクウガほど生々しくはなくなったが、ホラー成分は据え置きである。むしろ怪奇度は増している。

平成ライダーシリーズで前作の続編と解釈可能なのは本作と『仮面ライダーゴースト』のみ。*2
各作品で共演機会の多い平成二期シリーズも、劇場版における共演で世界観がクロスオーバーすることはあるが、TV本編はゴーストを除いて前作に言及されたことはない。*3
そのため、基本的に独立した世界観を持つ平成ライダーシリーズ1期において、アギトが何気に異色的な点でもある(そもそもシリーズ化する予定がなかったのもあるが)。

作風としては、前作では主役1人しか用意されなかった仮面ライダーに変身する人物が主人公以外にも登場し、物語序盤から3人の仮面ライダーが戦いを繰り広げる。*4
このように、仮面ライダーに変身する人物達複数人がドラマを展開するシナリオ構成となっている。
物語でも謎解き要素が強く、話を進めるごとに少しずつ謎が明かされていくことで、視聴者の関心を絶やさない作りなのも特徴。
アギトで描かれた作品構造は、これ以降の平成ライダーシリーズでも基本的な作風として引き続き採用され続ける事になる。

平成ライダーの中では前作後半からの世間からの認知度も手伝い、ゴールデン枠で番宣も行われる等、特に恵まれた環境も手伝ってか同年に放送された『百獣戦隊ガオレンジャー』と並び平成トップの視聴率を獲得。
いわゆる「イケメンヒーローブーム」の流行もマッチして幅広い年齢層の人気を獲得した。

本作以降の平成ライダーではEDがなくなり、戦闘挿入歌がED曲扱いとなった(『仮面ライダー響鬼」の前半や、エピソードによってはOP曲をエンディングとして扱う事もある『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダービルド』を除く)。
また、『仮面ライダー剣』や『響鬼』のイメージが強いためか余り認知されていないが、本作も終盤に差し掛かるタイミングでOP曲が変わっている。

放送話数は全51話だが、メインライターの井上敏樹氏曰く「(第46話が)最終回のつもりで書いた」、チーフプロデューサーの白倉伸一郎Pも「第46話が実質的な最終回」「第47話~第51話(最終話)は蛇足」とぶっちゃけている。
だが、決してつまらないとかそういう事では断じてなく、これまで漠然と描かれていた「人と異種族との共存」にスポットを当てた、後に白倉・井上両者が再度タッグを組む事になる『仮面ライダー555』のプロトタイプと言える話になっている。


【あらすじ】

“未確認生命体事件”が遂に解決し、グロンギ族が全滅してから2年が経った2001年。

嵐が去ったある日、浜辺に謎のオーパーツが打ち上げられた。時を同じくして発生する、物理的にあり得ない殺人“不可能犯罪”。
その犯人は今までの未確認生命体とは異なる謎の怪人だった。

『未確認生命体対策班』は、有事の際の備えに開発していた対未確認生命体用パワードスーツ〈G3〉で、新たに現れた謎の怪人と戦うが、以前の未確認生命体を凌駕する能力の前にまるで歯が立たない。
しかし、その怪人を突如現れた謎の戦士が倒してしまう。その戦士の姿は、行方をくらませた“4号”に酷似していた。

新たな怪人〈アンノウン〉と、アンノウンに“アギト”と呼ばれる仮面ライダーの戦いが始まる。


【登場人物】

津上翔一仮面ライダーアギト
演:賀集利樹

「すでに仮面ライダーである男」
主人公。記憶喪失で、美杉家に居候している青年。
非常に明るく能天気で、マイペースな優しい性格。家事全般を得意とし、無農薬の家庭菜園を手入れするのが好き。たびたび寒いギャグを言う。あと女に弱い。
突然アギトの力に目覚め、皆の居場所を守るために「仮面ライダーアギト」として、戦うことになる。
15話辺りから変身ポーズが変わる。
記憶喪失だがバイクの免許はちゃんと取っている(中の人が取れる事を調査済み)。
「~しちゃうからさ」とよく言う人その①。


氷川誠仮面ライダーG3
演:要潤

「仮面ライダーになろうとする男」
G3ユニットに所属する仮面ライダーG3およびG3-Xの変身者。
かつて、たった一人で『あかつき号』を救ったため、「あかつき号事件の英雄」と呼ばれている。
非常に生真面目な性格の誠実な青年で、だいたい敬語で話す。だがかなり不器用で、細かい作業は極端に苦手。
翔一にその事を言われるとムキになるが、射撃の腕前は確かである。またテニスが得意という一面も。
豆腐はスプーンで掬えばいい話。栗は皮ごと食べればいい話。バンゴウガチガイマス。
演じる要潤は、本作がデビュー作なため演技が初々しい。


葦原涼仮面ライダーギルス
演:友井雄亮

「仮面ライダーになってしまった男」
ある日突然、仮面ライダーギルスに変わってしまった青年。
将来有望な水泳選手だったが、ギルスになった事で夢も彼女も恩師も全て失ってしまう。
死んだ父親の残したメモから『あかつき号事件』に関わっていく事に。態度は素っ気ないが良い人。なにかと不幸ではあるがモテる。


木野薫/仮面ライダーアナザーアギト
演:菊池隆則(現・樋口隆則)

「仮面ライダーであろうとする男」
もう1人のアギトとして登場した男。
もともとは凄腕の医者だったが、雪山での遭難により実弟を失い、自分だけが生き残ってしまう。
この事で「全ての人類は自分が救わねばならない」と考え始め、更にアギトの力に覚醒した事で「この世にアギトは自分だけでいい。自分以外に人間を救うアギトは邪魔だ」と歪んだ思想に駆られてしまう。

風谷真魚
演:秋山莉奈

翔一が居候している美杉家に住む少女。ある秘密がある。序盤では翔一がアギトだと知る唯一の人物。
翔一とは家族同然だが、何かと気になる様子。
「~しちゃうからさ」とよく言う人その②。

6年後にはデンライナーに乗り込んでいる姿が見られたとか…。


小沢澄子
演:藤田瞳子

G3ユニットの責任者にして、G3を開発した天才。
非常に強気で尻込みせず、ハッキリ物を言う性格。また、「男は気に食うか気に食わないかで判断すればいいの」など、男も引くほど男らしい(?)。


北條透
演:山崎潤

刑事。G3装着者選抜テストに落ちた過去から、度々G3ユニットに嫌味や皮肉を言う慇懃無礼な奴。だが偉そうなこと言う割に本人は大したことなかったり。
親に怒られた事がないタイプで、行動の根本的な理由が子供っぽい(嫉妬とか)。
しかし思い込みが激しいだけで、推理力は高いし、根は良い奴だったりする。自称『素晴らしい人間』。
ある出来事で手巻き寿司がトラウマに。
V-1システムというメタルヒーローの様な戦闘スーツを装着するが……。


・尾室隆弘
演:柴田明良

G3ユニットの一人。影が薄く、扱いは悪い(焼肉で肉取られたり)。発言がたびたび空気読めてなかったりするので妥当だが。
G3を装着した事もある。


・美杉義彦
演:升毅

大学教授。真魚の叔父。小沢の恩師でもある。(劇場版のDC版で判明)
知識がある分、深読みし過ぎて見当違いな事を言うことも。
割とムキになりやすい所がある。
超能力の存在については否定的な態度を見せるが…


・美杉太一
演:田辺季正

美杉義彦の息子の小学生。
年上の翔一にため口を使うなど、いわゆる生ガキ。懲りないタイプで、怒られてもへこまない。
重要証拠品を二回も破壊した証拠品ブレイカー。


【用語】

  • アギト
アンノウンから「アギト」と呼ばれる謎の戦士。未確認生命体4号と酷似した姿を持つ(が、設定変更の影響で最初以降スルー)。
人間やG3を守って行動するため人類の味方と思われている。
専用バイクはマシントルネイダー。高速飛行形態のスライダーモードにも変形する。

  • G3/G3-X
未確認生命体4号を元に開発された対未確認生命体用のパワードスーツ。正式名称はGENERATION-3、およびGENERATION-3-eXtension。
強力な火器を持ち、G3の状態でもグロンギなら一発で倒せるらしい。だがあくまで対未確認用なので、強化型のG3-Xが登場するまではアンノウンには苦戦。
専用バイクはガードチェイサー。ウェポンラックの役割も担っている。

  • ギルス
緑の体の戦士。
戦い方が荒々しく、かなり野性的。
アンノウンと戦うが、人類の味方かどうかはハッキリしない。
専用バイクはギルスレイダー。ギルスの危機を察知すると自動で駆けつける。

  • G3ユニット
『未確認生命体対策班』でG3を運用するチーム。専用のトレーラーを持つ。

未確認生命体と識別されながら、人間を守って戦った戦士。現在は消息不明。
多分、世界中を冒険してるんじゃないかな。

かつて人間を虐殺していた生命体。4号と警察によって全て倒された。

新たに現れた謎の怪人。未確認生命体を凌ぐ能力を持つ。
頭上に光の輪を出現させてそこから物を取り出したり、
物理的にあり得ない殺し方*5を行うため『不可能犯罪=アンノウンの仕業』と認知される。
基本的に一人殺すと次に狙うのはその血縁者。
前作のグロンギ族が初代『仮面ライダー』の怪人をオマージュしているのに対し、彼らは『仮面ライダーV3』の怪人をオマージュしている。

  • 回収されたオーパーツ
海岸に漂着した十字架のような形の遺物。
十字にそって複数のダイヤルが付いている。
古代と呼ぶよりも更に古い年代(三万年以上前)の物と測定された。

嵐に巻き込まれた遊覧船。氷川はその乗客をほぼ全員一人で救いだした(が、一人だけ救えなかった)。
物語の鍵。


【主題歌】

  • OP
前期『仮面ライダーAGIT0』
後期『仮面ライダーAGIT0 24.7 version』
いずれも石原慎一による歌唱。


  • ED(戦闘挿入歌)
『BELIEVE YOURSELF』
『Stranger in the dark』
『MACHINE TORNADER』
『DEEP BREATH』

昭和時代から仮面ライダー楽曲を販売してきた『日本コロムビア』との関係は本作を最後に途絶えることになり、再びライダーとコロムビアが関わるのは15年後のウェブ配信作品『仮面ライダーアマゾンズ』を待つことになる。

●劇伴

前作から佐橋俊彦が続投、『3人の仮面ライダー』というコンセプトを3種類のロックとして落とし込んでいる。*6
オーヴァーロードのテーマはモーツァルトの『レクイエム』をイメージしたオーケストラ編成で作曲されており、追加で録音された劇場版のBGMも同様の編成となっている。(『G3-X出動!(M3)』など)
また、音楽メニューの意図とは少々外れた選曲も本作の特徴となっており、特にストームフォームのテーマ(M7)がG3-Xの出動シーンで、アンノウンのテーマ(追加M12)がギルスの活躍シーンで使用されたのが印象深い。


【前作との関係】

先述の通り、本作は『仮面ライダークウガ』のパラレル的な続編である。
矛盾点としては、『クウガ』の物語が2000年。『アギト』は2001年の物語なのに、本作では未確認生命体がいなくなった(『クウガ』本編)のは2年前=1999年という事になっているなどがある。

また、「4号」や「未確認生命体」という単語がでてくる。
4号を元にしたG3はクウガとデザインが酷似しており、アギトも劇中で「4号に似ている」と言われた(アギト、G3、ギルスはいずれもクウガのデザインを発展させたものである)。
これは、「クウガの成功をアギトに繋げたい」という営業側の事情と、「クウガの綺麗な終わり方を壊したくない」という制作側の事情の両方に配慮した結果だと言われている。

このように『クウガ』と『アギト』は密接な関係にあり、『仮面ライダーディケイド』というコラボの場ではアギト世界にてアンノウンとグロンギが共に存在していたり、クウガ世界と共通する人物がいたりと、両者の世界観が明確に繋がっているものと位置づけられている。
また、『ディケイド』のアギト世界におけるイコン画の改変は、グロンギが存在するアギト世界である事を意識したデザインではないかとも言われている。

PS2用ソフト『仮面ライダー クライマックスヒーローズ』や、そのWii移植版『仮面ライダー クライマックスヒーローズ W』ではクウガとアギトの対戦で、
お互いに「え、クウガ?」「アギト!? 違う……」とお互いを不思議がる台詞が聴ける(クウガとG3-Xでも聴ける)。
DCDの『ガンバライド』『ガンバライジング』でも共演させることが可能。

平成ライダー最終作『仮面ライダージオウ』では、両作品が同一世界観にあるという設定になった。
ただし、ジオウでは従来は世界観が繋がっていない作品も含めて平成ライダーシリーズ全作品が同一の世界観と言う設定になっている。
また、タイムジャッカーの介入で毎年世界観がリセットされているという設定と説明されていたため、クウガの歴史が消えてアギトの歴史が始まっているとした場合、アギトで言及された未確認生命体の扱いがジオウ世界ではどうなっていたのかは不明だったが…詳細はこちらを参照。

月刊ヒーローズの漫画版『仮面ライダークウガ』では、『アギト』の設定が完全に『クウガ』の世界観に統合され、同一世界観であることを強調している。
そのため、こちらの作品ではアギトとクウガの共演のみならず、(グロンギに操られた設定で)クウガとアギトの対立が描かれている。
ただし、漫画版はあくまでも舞台設定を現代(2010年代)に変更するなど、『クウガ』本編のコミカライズ性は薄いパラレル設定である。


【スペシャル番組】

劇場版仮面ライダーアギトの前日譚である。平成ライダーのスペシャルはこれと仮面ライダー龍騎スペシャル 13 RIDERSのみ。


【劇場作品】

平成ライダー初の映画化作品である。*7

【余談】

放送当時は狂牛病騒ぎで焼き肉を忌避するムードがあった。
だが度々小沢が焼肉店で焼き肉を食べるシーンがあったため、全国食肉事業協同組合連合会から感謝状を貰った。



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追記・修正お願いします。
画像出典:仮面ライダーアギト
© 2001 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映


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最終更新:2024年03月29日 18:00

*1 クウガでは「城南大学」、アギトだと「北城大学」など

*2 ただし、前者はパラレル扱いで後者は世界観の繋がりに関して公式から言及はない

*3 他は先行登場に近いゲスト要素や『仮面ライダーエグゼイド』と『仮面ライダービルド』のような関係性となる

*4 後に1人増え、TVSPや劇場版などでも新たに登場する。

*5 オフィスビルの屋内しかも1階で転落死させる、木の中に死体を埋め込む、食事を摂って満腹になったばかりの人をその場で餓死させる

*6 アギトは『クウガ』を最も継承したストレートなロック、G3は都会的なウエストコードロック、ギルスはエスニックなエレクトリック・ファンク

*7 年代だけ見れば仮面ライダーZOが初の映画化作品