アバンテ

登録日:2011/03/08(火) 10:29:54
更新日:2023/12/19 Tue 22:21:36
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アバンテとは、田宮模型から発売されたラジコンカー、及び同名のミニ四駆の名称である。
同社を代表する商品として有名。


1988年3月31日発売。キット価格は34,800円。


田宮模型の電動ラジコンバギーとして、レース専用をうたった初の製品である。

駆動効率や整備性の向上を目指し、さまざまな新機軸が導入された。
さらに軽量化や安定性向上を目指し、多数のオプションが販売された。

試作オプションを組み込んだ改良試作車が
1988年の電動オフロードカー全日本選手権で7位入賞を果たし、
後の名機イグレスの原型となった。
また同社製バギーモデルとして唯一、
前後サスペンションにマルチリンク式を採用したモデルでもある。

●シャーシ構造
  • FRP板ダブルデッキ構造(オプションでカーボンロングシャシーセットOP.38あり)
  • ギアBOXの素材にガラス繊維強化ABS使用

●フロントサスペンション
  • マルチリンク式(サスアーム保護機構装備)
  • ダイヤフラム式オイルダンパー装備(コイルオーバー)アルミ製ピロボール使用

●前後タイヤ
  • インナースポンジ入り中空ラバー
  • ピンスパイクパターン

●リヤサスペンション
  • マルチリンク式(ロワアームがトレーリングタイプでトー変化を発生する)、
  • ダイヤフラム式オイルダンバー装備(コイルオーバー)、アルミ製ピロボール使用
※但しリアロアアームのトーコントロールロッドのシャーシ側取り付け位置が
イグレスおよびアバンテ2001とは異なり、これら2車種がロアデッキ側へ接続となるのに対し、
アバンテはアッパーデッキ側へ接続。

●駆動方式
  • シャフト駆動式4WD

●モーター
  • マブチRX540VZをミッドシップ形式、後部ギアボックス左に縦置きに搭載

●デファレンシャルギア
  • フロントおよびリア…プラネタリー式(オプションでボールデフタイプ有)
  • センター…ボールスラスト式
※ボールタイプはLSD効果を発生する。


当時はおろか現代の視点から見てももはや狂っているとしか言いようが無いトンデモ機体。
この頃はまだR32GT-Rが発売されてないにもかかわらず前後マルチリンク式サスペンション搭載、
トルクスプリット型四輪駆動式というモンスターラジコンである。

なんでここまでやったの? と思ったあなたは正常。

というのも当時、既に大手だった田宮模型は業界におけるエポックメイキングを次々と打ち立て、
不動の地位を築いていた一方で重大な問題に直面していた。

80年代中ごろまでは「組み立てやすくてカッコよくて(業界では)お手頃な値段で性能がいい」
というのが田宮の評価であったが、一方で田宮製のラジコンたちには構造上の無視できない短所も多かった。
バギー型4WDラジコンの先駆けであるホットショットが登場した辺りから、
それが次第に後発の他社製品との明確な性能差として表れてしまう。

組み立てやすさとカッコ良さの両立を尊ぶ田宮は性能だけを追求するわけにはいかないと、
当初こそ自社製品限定レースを開くなどして悠然と構えていたものの、
子供たちの口から「遅い」「性能が悪い」といった言葉が出だしたため看過できない問題だと捉え
「カッコ良くて組み立てやすくて速いマシン」の開発に踏み切った。

かくして、田宮にあるまじき
  • バカ高い値段
  • 値段相応の超性能
  • べらぼうに優れた整備性
これらを引っ提げてアバンテは世に出たのである。

当時最強クラスだった京商のオプティマミッド系列、ターボオプティマミッドカスタムスペシャルも立つ瀬なし。
ヨコモ最強機ドッグ系列最強クラスのスーパードッグを地獄に叩き落とした。

しばらく後、アバンテはまさかの田宮製マシンであるアスチュートに性能面でぶっちぎられる。
田宮模型2WD最強機アスチュートはアバンテやイグレスを過去のモノにした。
また、アバンテ自体の天下もそれほど長くは続かなかった。

設計段階でのミスが招いた安定性不足(別売りの改良型シャシーで克服可能ではあったが、
それ自体が後発モデルのマンタレイ並みのお値段というこれまたバカ高い代物)に加え、
盛り込まれたアイデアの一部が発想倒れになっていた
(系列機で改良されていればマシ。中には継承されなかった一度きりの物もあった)、
という短所が徐々に明らかとなったのである。

これに値段の高さが追い討ちとなり、1年足らずでアバンテは市場から消えてしまった。
それから時は流れ、ラジコン界におけるトヨタ2000GTとまで謳われるほどの
激レア品と化していたが、2011年に『アバンテ2011』と銘打ってようやく復刻された。
値段が更に跳ね上がって57,540円(税込み)という目眩がしそうなレベルになっただけあって、
当時の欠点を現在の技術で潰せるだけ潰すなどモンスターぶりに拍車がかかった仕様となっている。


●ミニ四駆でのアバンテ

もしかしたら世代によってはこちらの方が有名かもしれない。
例に漏れず、お尻にJr.がくっついたアバンテJr.という名前で、
純レース用のタイプ2シャーシ初のモデルとして登場した。
オリジナルと同じくミニ四駆でも画期的な性能を誇り、
それまでのタイプ1シャーシを一気に過去の物にしてしまう。

コロコロを読んでフルチューンしたファイヤードラゴンが、
ノーマルのアバンテにブッちぎられたという逸話すらあるほど。
これがタイプ1の後継機タイプ3シャーシ登場のきっかけにもなった。
余りの人気に当時の小売店はどこも入荷待ちに悩まされていたという。

オンロード専用マシンなのでオフロードには弱い。
とはいえその頃は最早オフロードレースが主流ではなかったため、あまり問題視されなかった。

その後もミニ四駆のラインナップには欠かせない車種となり、
アバンテ2001、スーパーアバンテやアバンテMk-2、アバンテMk-3シリーズなども登場、
さらに2012年7月には最新のARシャーシを引っさげたエアロアバンテも登場した。

フルカウルミニ四駆シリーズの原型(という設定)にもなり、
特にプロトセイバーJBはキャノピー形状等にアバンテの面影が色濃く残っている。
2001やスーパーアバンテは、愛すべき脇役キャラである
こひろまこと(アバンテまこと)が使用していたこともあり、
レッツ&ゴー世代にも馴染み深いのではないだろうか。
同作品では後発のフルカウルミニ四駆の噛ませ犬にされることが多かったが、
原作最初のレースではブラックセイバーの攻撃をものともせず
堅実に走り続けた結果、セイバー組を抜いて優勝してしまっている。
やはりアバンテへの信頼性は揺るがない。
実際、スーパーアバンテはフルカウルミニ四駆0号として番外エピソードに登場したこともある。


【姉妹機・関連機】
・アバンテ2001
新世紀(21世紀)を標榜するマシン、という意味で命名されたので2001という表記。
イグレスのエコノミーモデルであるが、後に出ただけあって
(当時は)最も改良された集大成モデルとなっている。
実は当時の別冊コロコロコミックで連載されていた漫画とのタイアップモデル。

・アバンテ2011
上記参照。本来のアバンテとアバンテ2001が目指していた性能の理想系ともいえる。
値段が高い、基本性能が高い、ポテンシャルも高いと三拍子揃った機体。

・イグレス
シブくてカッコいい銀色のアイツ。名前は英語で「超越する」の意味。
アバンテの上位機種で、アバンテのチューンパーツを標準装備なモンスターマシン。
ミニ四駆版はイグレスJr.という名前で、タイプ2シャーシの直系であるタイプ4シャーシ採用車第一号として登場した。
後に、VS版、RS版が登場。

・バンキッシュ
真っ黒なアバンテの妹。アルミサスアームをABS樹脂にしているが、性能は高い。
龍王丸仕様はみんなのトラウマ。名前は英語で「征服するor打ち負かす」の意味。
後に2020年に「VQS(2020)」と銘打って登場した。
『アバンテ2011』と同じく、当時の欠点を現在の技術で潰せるだけ潰すなどモンスターぶりに拍車がかかった仕様となっている。
ミニ四駆版はバンキッシュJr.という名前で、
純レース用のタイプ2シャーシのモデルとして登場した。
後にVS版やRS版が発売された。
さらに後継車としてネオVQSという名前で、VZシャーシ初のモデルとして登場した。

・アスチュート
アバンテの2WD版。フォックスの正当後継機でもある。
馬鹿みたいに速い音速雷撃機で京商のスコーピオンを初め当時最速のマシン群を
根こそぎ屠り過去の遺物にした悪魔機体。
ミニ四駆版はアスチュートJr.という名前で、
ZEROシャーシのモデルとして登場した。
後に、オープントップやRS版が登場。

・ヴァジュラ
アバンテ2011発売から半年以上経った後に出てきたニクイあんちくしょう。
見た目は全く違うが実はシャーシがアバンテ2011の同型をベースに改良したものとなっている。
名前はインド神話の雷神インドラ(仏教で言う帝釈天)愛用の武器から。
アバンテ2011よりは安価だが、それでもベースがベースなので
お値段は税込55,440円というユーザー泣かせな数字となってしまった。


追記・修正はアバンテでアスチュートをブチ抜いてからお願いします。

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最終更新:2023年12月19日 22:21