ブキミちゃん

登録日:2010/11/14(日) 02:28:22
更新日:2023/10/03 Tue 22:37:48
所要時間:約 4 分で読めます





ブキミちゃんはとっても意地の悪い子でした
いつもみんなのもち物をかくしてよろこんでいました


そんなある日
ブキミちゃんは交通事故で死にました
しかし このときブキミちゃんが大事にしていたハーモニカがどこかに行ってしまったのです


そして数日後
彼女のクラスメートの夢の中に


彼女はやって来たのです


ブキミちゃんは言いました
「あたしのハーモニカかくしたのあんたでしょ わかってんのよ」
「いい?罰としてなくなったあたしのハーモニカ とってくんのよ」
ブキミちゃんは続けてハーモニカへの道順を教えます


まず 赤・白・黄の三つの門があるから赤い門をくぐって

次に四つのとびらがあって左から二番目に入る

中には五つの窓があって右から四番目から出る

出たところに あがる階段があってそれをあがると六つおりる階段があるから右から三番目の階段おりる

おりたところに七つの穴があって左から五番目の穴をよく見てみると

そこは金あみでふたをした小さな穴で その中にハーモニカが入っている


道順を一つでも間違えると
もう二度と夢から出られず死んでしまう


なおこの話を聞いた人は三日以内にブキミちゃんが夢の中に現れます

逃れるには夢の中で正しい道を進んでハーモニカをみつけてあげることです



ブキミちゃんは今夜にでも、あなたの夢の中に―――

















地獄先生ぬ~べ~第129話(単行本15巻)「ブキミちゃんの巻」より。
そのあまりの恐怖は今でもトラウマになっている人も多いだろう。
「ぬ~べ~で一番のトラウマは?」という話題になるとしばしば挙げられる存在である(他はてけてけ、メリーさんなど)。

ドスの効いた半目にとがり耳に縮れ毛という小鬼のような醜悪な容姿をした女子児童の悪霊。
上述の通り、噂話を聞いた人の夢の中に現れてハーモニカ探しゲームを強要し、
道順を間違えた人間の魂を奪い夢の世界に引きずり込んで殺してしまう。
無事に見つけたら見つけたで舌打ちしてくるけど。(まあ逆ギレで実害加えてこないだけマシか)

OVAでのCVは三輪勝恵。

作中では、超おバカな広が道順を覚えられなかったため眠らないという荒業をとるも看板が頭の上に落ちて気絶、
それでも何とかうろ覚えの記憶で道順を辿っていくも、あと一息のところで道を間違えてしまい夢の中に閉じ込められかけたが、
ぬ~べ~が現実世界でブキミちゃんのハーモニカを発見し、それにこもった怨念を浄化したことで広は一命を取り留めた。

ちなみにぬ~べ~先生は道順を間違えました。
これは後に作者が謝罪*1

ブキミちゃん自体は実在の都市伝説だが、
実際のものはどちらかと言えば「トイレの花子さん」の系譜に連なるタイプの噂であり、設定も大きく異なっている。
漫画の方の原型となったのは「ソウシナハノコ」などが有名な、所謂「言葉遊びの怪談」だと思われる。
ジャンプコミックスのコラムでも「あぎょうさん」*2「火竜そば」が紹介されているが、
現実に流布されているこの手の怪談は、妖怪側から提示された謎解きを解いていくと
最終的に「この怪談はである」事実を提示するキーワードが浮かび上がってくる類のものが多い。

文庫版のトーク曰く、ブキミちゃんのデザインは当時編集長だった鳥嶋和彦氏がモデルとのこと。
終始半目でどすの効いた顔だが、OVA版では釣り目がちで結構表情が豊か。


またOVA化もしたが、ブキミちゃんのキャラクター像が掘り下げられており、原作では触れられなかった生前の彼女の実像が補完されている。
生前の彼女は父を慕い、噂とは真逆に子犬にパンを分け与える心優しい少女だった。
クラスメートの子たちから笑いものにされて泣いているシーンが描かれているところ*3からして意地悪をされる側だったらしく、辛い日々を過ごしていたようだ。
死後、悪霊と化してしまったのも、自分の大切なハーモニカを意地悪で隠されたと思い込んだためである。
(ぬ~べ~がハーモニカから感じ取った強い怨念も、原作における「赤いチャンチャンコ」や「メリーさん」同様、自分を辛い目に合わせた人間たちへの恨みが根底にあったのだろう)

彼女が「人を困らせて喜ぶ悪い子だ」と伝えられているのは、おそらく噂が広まるうちに尾びれ背びれが付いていき、
いつの間にか性格の悪い女の子にされてしまったということなのだろう。

原作では生前の彼女の実像については一切不明で、作中で描写されたブキミちゃんの性格や言動についてはあくまで噂で語られた一面でしかないため、
「本当に意地悪で嫌な子だった」とは断言できないようになっている。
「恐怖の象徴」という一面が強調されているため漠然と読んでいるとこのことに気づきにくいが、
原作のブキミちゃんもOVA版のようにいい子だった可能性も否定はできない。

原作ではそのあたりが一切フォローされないまま強制成仏させられたためちょっとかわいそうであったが、
こちらではぬ~べ~が見つけたハーモニカをブキミちゃんに直接返してあげたことにより、
生前の姿に戻って成仏するという救いのある終わり方となっている。

余談

OVA版では「悪霊化した人間である」ことが原作より明確に描かれており、生前の普通の人間だった時の姿が新たに設定されているのだが、
生前の姿に戻るシーンや回想シーン中の生前の彼女の耳がなぜか尖り耳のままという作画ミス(?)がある。


追記・修正しないと、夢の中に……

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最終更新:2023年10月03日 22:37

*1 文庫版では修正されており、トークにて「アニメ化が決まって浮かれてたからでは」と述懐されている。

*2 ちなみに『ぬ~べ~』本編でも第240話(単行本28巻)で「あぎょうさん」が登場している。

*3 給食中の出来事であるため、恐らく嫌いなものが食べられないことを馬鹿にされていたと思われる