ゲームブック

登録日:2011/06/09(木) 18:28:27
更新日:2024/04/10 Wed 09:39:57
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これはゲームブックの項目だ。

君はこの項目を……


  • ゲームブック風に読む
 →>>16

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 →【目次】

  • 興味がないので見ない








【目次】
概要
構成
主な作品
隆盛と衰退
余話



■概要
ゲームブックとは、本のジャンルの一つである。


通常の本は、『読む』ものである。
作者の意図した展開で事が進み、既に完成された物語を読者が受け取ることで、その役割は終わる。

これに対しゲームブックは、『読む』中で、読者が『選択』し、出来事を『記録』したりすることでストーリーが展開し、場合によってはその結末までもが変化する。

言うなれば『ゲームとして遊ぶ本』と言えよう。


よく分からないという人は、弟切草等のサウンドノベルや、恋愛アドベンチャーゲームの類いを思い浮かべていただきたい。

  • テキストを読む
  • 行動を選択する
  • 選んだ行動によってストーリーが進む

これがそれらのゲームの基本形のはずだ。
ゲームブックは、これをそのまま本に移したものと言える。

簡単なフローチャートを書けば、

読む

分岐点
┏━━┻━━┓
選択肢A 選択肢B
↓     ↓
展開A   展開B

以下略
という感じになる。

読む中で選択肢が現れ、その指定先のページに移動することで、物語が進む。

アドベンチャーゲームのように行動の結果で変わる展開を、全て本の中に収めてしまったものが、ゲームブックなのである。



■構成
ここからはゲームブックの内容について触れるとしよう。

ゲームブックを構成する要素は大まかに
文章
選択肢
アドベンチャーシート
道具
の4つである。


文章
ゲームブックでは、通常の本と違い、場面場面が時系列を入れ替えて番号を振られた『パラグラフ』という文章の塊になっている。
読者はパラグラフの最後に書かれた『○○へ』等の指示に従ってページを捲って読み進めていく。

選択肢
パラグラフによっては、末尾に選択肢が存在する。
パラグラフAから直接Bへ向かったり、間にCやDを挟んだりして、展開が分岐していく。
場合によってはアイテムを手に入れたりもする。
「護国記」は電子書籍のみの出版ということを利用し、リンク機能でパラグラフ遷移を代替させることで、パラグラフ番号を排除している。
ちなみに『14へ行け』という指示が出たら覚悟はしよう。というのも、「グレイルクエスト」では「主人公死亡・ゲームオーバー」となるイベントにパラグラフ14が割り当てられており、それをリスペクトして「パラグラフ14=ゲームオーバー」という作品がそれなりに存在するのである。

アドベンチャーシート
ゲームブックでは、アイテムを手に入れたことや特定のイベントを経験したことを記録しなければならない。
そこで、ゲームブックにはそれらを記録する為の用紙が付属している。
アイテム欄やイベントチェックボックスを基本に、作品によってはHPメーターなどの能力値があることも。
一方でアドベンチャーシートに当たるものを完全に排除しているものもある。初の国産ゲームブックである「出発!スターへの道」はとっつきやすさを優先したためか記録用紙はない。2018年に刊行された「護国記」も電子書籍の形態で記録用紙を使えない状態で読み進めることを想定しているためか、やはり記録用紙がなくなっている。

道具
ADシートに記入したりアイテム消費等で消す場合の為、鉛筆消しゴムは必須。
作品によってサイコロが必要な場合もある。(無論、代用品でも構わない。作品によってはページの端にサイコロの目が印刷されていることもある。)
また、ゲームブックによっては「付録」という形でゲーム攻略に必要な道具がつけられているものがある。
代表例は「パンタクル」シリーズにおいて主人公が持っている万能章(パンタクル)をモチーフにした栞。「パンタクル」では魔法が使える場面では使った魔法に応じて万能章に書かれたパラグラフに飛び(その時万能章を元のパラグラフのページに挟んでおく)、そこでどのパラグラフで魔法を使ったかを見て結果を判定する、という形式をとっている。
また、「シャーロックホームズと10の怪事件」ではロンドンの地図や電話帳、新聞などが捜査資料として添付されている。 

これらにより物語は複雑に枝分かれし、真エンドからバッドエンドまで様々な展開が楽しめるようになる。作品によってはマルチエンドのものもあったり。



■主な作品
歴史は決して深くなく、また起源も定かでないが、1970年代頃から存在していたという。

最初にヒットしたのは1979年からアメリカで発刊された『Choose Your Own Adventure』シリーズだとされている。
物語は主人公=読者に『きみ』という二人称で語りかける形で進み、15以上の結末があるというもの。
『きみならどうする?』のタイトルで日本語版も発刊されたが、初期は文章と選択肢だけの単純なものだった。

その後ブレイクしたのは、『火吹山の魔法使い』を始めとする『ファイティング・ファンタジー』、『ソーサリー』、『ローンウルフ』等のTRPG要素を取り入れたシリーズ。
これらになると、アドベンチャーシートやサイコロによる分岐等が要素に加わり、本格的に遊ぶ本になっていく。
また、「ソーサリー」「グレイルクエスト(旧題:ドラゴン・ファンタジー」「ブラッド・ソード」など、明確に連作を意識したものも登場した。

20~30代にとっては、『ルパン三世』や『機動戦士ガンダム』等のアニメ作品、テレビゲームを題材とした作品が馴染み深いかもしれない。
この分野においては鬼才・鈴木直人による「ドルアーガの塔」三部作は今なお傑作の呼び声が高い。
またエニックス(現スクウェア・エニックス)もドラゴンクエストシリーズのゲームブック化は積極的に行っており、複数巻にわたってデータを引き継ぎつつ遊べる等して、当時の小中学生を中心に愛された。

また、低年齢層向けにポプラ社発刊の『にゃんたん』シリーズなどもあった。
対象年齢を見据えてシステムは多少簡単に設定されており、にゃんたんではアドベンチャーシートを用いない仕組みになっている。
「バニラのお菓子配達便!」など、児童向けでありながら今少ししっかりしたゲームブックも存在する。



■隆盛と衰退
80年代、TRPGとともにブームを巻き起こしたゲームブック。実際全盛期には複数の出版社から年間100冊を超えるペースで刊行されていた。しかし90年頃から衰退の影が差していった。実質1992年のウォーロック誌の廃刊がゲームブックブームの終焉であったと言えるだろう。

その要因は諸説あるが、概ね以下のようなことが理由ではないかと言われている。

①ゲーム機の台頭
一つには80年代半ば頃からファミコンをはじめとする家庭用ゲーム機が台頭してきたこと。
文字だけでなく映像や音楽も加わったゲーム機では、想像するしかなかったファンタジーの世界がよりダイナミックに展開される。
特にアドベンチャーゲームとRPGが言ってしまえば既存のゲームブックのファン層の関心と被るため、こうしたジャンルの発展に伴ってゲームブックが衰退していったことがうかがえる。
ファミコン黎明期は双葉社からファミコンソフトを題材としたファミコンゲームブックシリーズも刊行されていたが、この辺りがちょうど分水嶺だっただろうか。

尤も、「弟切草」に代表されるサウンドノベルシリーズは「選択肢を選びながら文章を読み進める」という形式で明らかにゲームブックの後継であり*1、そういう意味ではゲーム機側も少なからずゲームブックの影響を受けているとはいえる。

②複雑化・粗製乱造
ブームに沸いた界隈は多数の商品が供給され、そうした中で程度の低い商品が氾濫することが問題になることがある(アタリショックは有名だろう)。
また、「システムの複雑化」ということもまたこのジャンルについて回る問題である。実際、ブーム末期のゲームブックには「TRPGのゲームマスターとプレイヤーを一人でやらせられる」ような煩雑なシステムのものも存在した。
そうしたことが、ユーザーを遠ざける一因となったかもしれない。
また、複雑化については①も関係する部分がある。そうしてシステムが複雑化していった場合、結局そうしたものを扱うにはコンピューターの方が有利というものがある。結果として、そうした複雑なシステムを扱いたかったデザイナーがコンピューターゲームに流れていった、という部分はあるだろう。

③人材難
ゲームブックの作者は「小説家としての能力」「ゲームデザイナーとしての能力」の双方を求められる。
しかし、ストーリーテリングだけを望むなら結局小説の方が楽であるし、ゲームブックブーム末期はコンピューターゲーム業界の全盛期であり、ゲームデザイナーはそちらに流れていった。
こうしたことから単純にゲームブックを作ろうという人間がいなくなったことも、衰退の一因であっただろう。

いずれにせよ1990年代初頭(雑誌「ウォーロック」の廃刊の時期)を最後にその後ゲームブックは冬の時代が続いていた。
おそらく今の10代の間で流行った作品はないだろう。

ただ、では完全に終わったジャンルなのかというとそうではない。

■再興

「カタンの開拓者」を始めとした「ドイツゲーム」と呼ばれる良質のボードゲームが紹介されることにより、日本でもアナログゲームの市場が広がっている。
こうした中で明らかになったのは、特に若い世代はなまじ小さい頃から電子機器、ゲーム機に接しているが故に却ってアナログゲームが「新しい」ということである。

そうした中でゲームブックにもまた、復興の動きが出ている。一つには電子書籍の隆盛に伴うかつての名作の復刊。
「火吹き山の魔法使い」「展覧会の絵」「パンタクルシリーズ」など、ゲームブックが好きな人ならば必ず知っている名作がAmazonなどの電子書籍を扱っているサイトにはずらりとタイトルを並べている。(「ドルアーガの塔」もあるぞ!)
新作についても電子書籍のみでの出版となっているケースも珍しくない。これは市場が小さくとも低コストで出版できること、また電子書籍ならば利用できるリンク機能がゲームブックと相性がいいこともあるだろう。電子書籍ならではの機能を利用したゲームブックなども登場している。
一例としては上でも挙げた「護国記」で、キャラクターシートの排除を成立させるためにフラグ管理を「同じような文章だが後半の展開が違う」パラグラフを複数用意してパラグラフ遷移で分岐させる形にした結果、3000ページ弱という膨大なページ数になっている。
参考までに、その分厚さから「鈍器」との呼称もある川上稔氏の「境界線上のホライゾン」II(下)のページ数が1154である。もちろん最初からすべてを読むことを前提とする小説とゲームブックでは一概に比較できるものではないが、それでもこのページ数が「通常の本では成立しない」ものであることはご想像いただけると思う。
まさに電子書籍が登場したからこそ成立しうるゲームブックだったわけだ。

令和に入ってからも「運命の巻戻士」という作品においてインタラクティブコミックという形式で展開されており、新しい世代のコロコロ読者にも浸透しつつあると言える。

そしてもう一つ見逃せない動きが、「リアル脱出ゲーム」のブームである。詳細は別項に譲るが、このブームに伴って「持ち帰り謎」と呼ばれるストーリーと謎解きを融合させたアイテム群が登場するようになった。そして、こうした形式とゲームブックは中々に相性がよかったのである。
かつてのブームを知っている人からすれば従来と雰囲気は違うだろうが、それでもこうした謎解き型のゲームブックの登場、そして流行は「ゲームブック」の持つポテンシャルを再認識させるものであったと言えるだろう。

■余話

知らなかった人は、この項目を見て興味を持ってくれただろうか。
忘れていた人は、懐かしさを覚えてくれただろうか。

ゲームブックは楽しいものなのだ。
読者を楽しませる為に、作者は色々な試行錯誤を繰り返し、作品を送り出してくれている。

たまにはその存在を思い出し、懐かしみ、そして新作に触れながら、作者に敬意を表しつつゲームブックで遊ぼうではないか。

















残念だがこの先にはなーんにもないのだ。
悪しからず。

  • そうか、わかった

  • いや、なんか怪しいんで
 →先へ進む






















ま、まだ見るの?
なんにもないって言ってるじゃない!

  • すいません、戻ります

  • 嘘だッッ!!
 →先へ進む






















や、やめてっ……!
これ以上進んだら……あなた、後悔するわよ……?

  • この辺でやめようかな……

  • 後悔? 知ったこっちゃねえ!
 →先へ進む






















……わかった、もう止めない。
でも、きっとなぜ下まで来てしまったのだろうって後悔するわ。

  • やっぱりやめる

  • 知るかッ! 俺は自分を貫く!
 →先へ進む























(ノ・∀・)ノ=ウンコー!!


無駄な時間を過ごしましたね。



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最終更新:2024年04月10日 09:39

*1 いわゆるアドベンチャーゲームに分類されるが、それまでのコンピューターゲームにおけるアドベンチャーゲームと言えば基本的にコマンドによって謎を解いていくものだった。この分野での後継は「逆転裁判」だ、と言えば概ね傾向は理解してもらえるだろう。