シュピーゲル・シリーズ

登録日:2012/02/09(木) 23:25:58
更新日:2021/11/04 Thu 22:41:09
所要時間:約 6 分で読めます





シュピーゲル・シリーズとは、とある某所からのコピペ曰く、


冲方丁作のライトノベル=「天地明察」からの新規ファンが乗り越えるべき課題=クランチ<ばらばら>文体=最初の壁。
課題――少女たちの四肢切断、児童虐待ネタ。
課題――政治的話題/テロ/国際問題。
課題――400ページを余裕でぶっちぎる"全然ライトじゃない"ライトノベル文庫/ページ内に空白などほとんど無し=最新巻には挿絵すら無い。
「克服あれ」=古参ファンから言える唯一のメッセージ。



……わけがわからないって?
ならば、なんとか詳しく解説してみよう。

冲方丁のライトノベルシリーズである。
角川スニーカーと富士見ファンタジアの二つのライトノベルレーベルに分かれ、

オイレンシュピーゲル

スプライトシュピーゲル

の二つがそれぞれ全4巻で刊行。
更に角川スニーカーから両者を統合した最終シリーズ「テスタメントシュピーゲル」が刊行されている。

ちなみに作者は第1回スニーカー大賞金賞でデビューしているのだが、受賞作『黒い季節』は「任侠+伝奇」だった事からハードカバー→角川文庫に回されたため、実は『オイレン』が初スニーカー文庫作品だったりする。

シリウスとヤングキングで漫画版も連載。クランチ文体に悩まされずに済むぞ!



  • 概要

近未来のウィーン=ミリオポリスを舞台に、都市治安を担う機械化少女たちの闘いを描く。
最初の文章のような、「+」「=」「〈〉」などを多用する、砕け散ったクランチ文体、悲劇的を通り越して凄惨な少女たちの過去、現代の社会情勢の延長線上として位置づけられた世界観など、ライトノベルでありながらヘビーな内容となっている。
というか現在だと色々と洒落にならないようなネタもちらほら。
ストパンよりもPHYCHO-PASSや攻殻機動隊に近い作風である。
オイレンシュピーゲルとスプライトシュピーゲルは姉妹作の関係にあり、設定や世界観を共有し、時系列や人物関係が相互にリンクされている。
両シリーズの偶数巻は、同じ事件を異なる視点や立場から追いかける構成となっている。
また、過去の冲方作品のオマージュも多く、『ばいばい、アース』や『蒼穹のファフナー』などを知っているとニヤリとできるネタも。


オイレンシュピーゲル(イラスト:白亜右月)

「ロケットの街」とまで呼ばれるようになったミリオポリスの、激化する都市犯罪・テロリズムの脅威に対抗するため兵科を導入した警察組織、MPB(ミリオポリス憲兵大隊)に所属し、犯罪者との闘争に明け暮れる三人の機械化少女たち。
「黒犬(シュバルツ)」「紅犬(ロッター)」「白犬(ヴァイス)」のコードネームで呼ばれる彼女達が、過去のトラウマに侵食されながら、人生はクソだと嘆きながら、それでも仲間達と戦い続ける「死に至る悪ふざけ(オイレンシュピーゲル)」の物語。
スプライトよりも残虐描写が多い。


スプライトシュピーゲル(イラスト:はいむらきよたか)

高度な情報収集・ピンポイント要撃による都市全域警備構想を実現するために活動する公安部隊、MSS(ミリオポリス公安高機動隊)の一員として、カウンター・テロに従事する三人の機械化少女たち。
「紫火(アメテュスト)」「青火(ザーフィア)」「黄火(トパス)」のコードネームで呼ばれる彼女達の、天に唾しながら、未来を嘲る日々を生きる「妖精たちの物語(スプライトシュピーゲル)」のお話。
オイレンより残虐描写は控えめとはいえ、後味の悪いエピソードや人死には多い。
また、オイレンがメイン三人に焦点を合わせた作りなのに対し、スプライトは群像劇的な部分が強い為か全体的にオイレンより文章量が多くなっているのも特徴。


テスタメントシュピーゲル(イラスト:島田フミカネ)

シュピーゲルシリーズ最終章。全三巻予定。(但し2巻以降は上下分割)
MPBとMSSが合流する最後の闘いを描く。現在出ている1巻はMPBサイドメインの話であり、2巻はMSSサイドがメインの話。
2009年発売の1巻以降長らく音沙汰のない状態が続いていたが、5年後の2014年に2巻がkindleで先行発売され、2015年にスニーカー文庫より上下巻で無事発売。
…お陰で元々10年先の未来を描くはずが現実の時間に追い越されてしまったのだが。
シリーズのキャラ原案を担当した島田フミカネがイラストを描いている。
かなりハードかつ大ボリュームな内容であり、イラストは表紙と口絵以外一切ない異例の構成となっている。



  • 用語


機械化児童/特甲児童

超少子高齢化社会を背景に、オーストリア政府は児童に労働の権利を与え(これにより少女買春が合法化されて確定申告が受けられたりする)、また重度の身体障害者に機械化した四肢を与えるトンデモ政策を実施した。
結果、児童をサイボーグ化して公共事業に携わせることが可能になり、多くの少年少女が国家に従属している。
が、貧困層の親が、子供をわざとビルから突き落としたりする事件も増加した……
なかでも〈特殊転送式強襲機甲義肢〉=〈特甲(トッコー)〉を支給された児童は特甲児童と呼ばれ、軍事派遣や治安維持などの昨今では考えられない任務に就いている。
特甲にはレベルが設定されており

最も人に近いレベル1

羽を生やし、空を舞うレベル2

空飛ぶ大砲やら巨大チェーンソーやら、もはや人の形以上のものを接続する、軍事派遣用の《特甲猟兵(ヤークト・コマンドー)》が主に使用するレベル3

の3つが存在する。
実はレベル2以降は脳に多大な負担をかけており、レベル2では味覚障害、レベル3では強い幻覚症状などが起こる。


文化委託/漢字名

紛争や災害などで自国では保全困難となった文化を、他国が維持する制度。これの委託先となる国家には、国連から多額の予算が降りる。
文化委託の対象は有形無形を問わず、漢字名(キャラクターネーム)もこれに含まれる。ミリオポリス市民はランダムに決定される漢字名(キャラクターネーム)を姓名の一部として名乗ることで、毎月の保全金と社会保証がうけられるのだ。
なんで漢字と日本名があるのかというと、日本全土が放射能汚染されたため。そのため金閣寺などもオーストリアにあったり、伊勢丹が営業してたりする。


マスターサーバー
作中の通信ネットワークの最上位に位置する演算装置。核にも匹敵するとされている国土防衛戦略の要。
超高度な演算能力と強力なアクセス権限を持ち、都市内の電子網を監視し、あらゆる電子機器へ干渉できる。
そのため、ミリオポリス内で大規模破壊兵器を運用することは困難を極める。
最新巻でサーバー同士で会話したりするのだが、なかなかその様子が可愛い。


犠脳体兵器
上記のマスターサーバーの電子干渉を排除しつつ大規模破壊を実行するための手段として、機体の制御系に人間の脳を使用したテロ用兵器。
機体に脳を移植するためには、生きている人間の脳を使用しなければならない。つまりはハカイダー。
脳摘出後も肉体との電気信号を中継することで人間的な活動は可能だが、これが途絶えた場合(肉体自体が損傷して機能的な『死』を迎えたとき)、脳は人間としての機能を失い、兵器の中枢部となって破壊活動を開始する。


接続官(コーラス)
マスターサーバーと脳を接続することで、マスターサーバーと積極的に連絡し、特甲児童の各種サポートを行う
。接続官も特甲児童であり、自らの特甲を用いてマスターサーバーと接続する。
基本的にショタだが、現場のあの子のためならば自分の命すら軽く捨て去ろうとする漢共である。


プリンチップ社
犯罪者(もしくは犯罪傾向のある一般市民)やテロリストに特別製の兵器を供する支援型テロ組織で、全シリーズ共通の敵。
ミリオポリスの法律では企業は刑事罰の対象外のため、ダミー企業の体裁をとっている。
その名前は、第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件にてフェルディナント大公を射殺したプリンチップの名に由来する。



《追記・修正を開封》

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最終更新:2021年11月04日 22:41