彁(幽霊文字)

登録日:2012/06/28(木) 05:47:18
更新日:2024/04/16 Tue 05:51:44
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「彁」とは、この世に存在するはずがなかった漢字である。
世間一般的には「幽霊文字」と呼ばれている。
人類の歴史上存在しなかったはずのこの漢字について、一部では何者かが人類の歴史に干渉した証拠ではとまことしやかに囁かれている。
本当の読み方、意味を知ったと言われる者は、皆
この文字を書き残して失踪しており、
依然としてこの文字の真相は分からないままとなっている。

追記・修正はヤツらに気づかれないようにお願いします。







































はい、後半は嘘です。しかしこの字が幽霊文字と呼ばれているのは事実なのだ。


【幽霊文字の誕生】
なぜこんな一見存在しそうな字ができたか。その理由はJISコードにある。


JISコードは漢字を一文字ずつ数字コードに割り当て、ワープロソフトの利便性を上げるために開発された。
たまにwebページが途中で切れた時に表示される;&10774 ←こんな感じのコードである。
しかしこのコードが最初に作成された時、漢字の専門家に依頼しなかったり、変な資料を参照したりした結果


なんだこりゃ?辞書にも載ってないし、いつ誰が使うんだこんな字?


という漢字が大量に収録されるという事態が発生してしまったのだ。5万字近くの漢字を網羅した中国の『康煕字典』や日本の『大漢和辞典』にさえ載っていない。こうしてJISコードに収録されたよくわからない字の総称が「幽霊文字」である。


【ルーツ探訪】

当然こんな字が野放しにされる訳もなく、漢字の専門家が中心になって幽霊文字の発生理由が探られる事になった。その結果、

  • きわめてマイナーな地名や人名に使われている字と判明*1
  • 「𡚴」のつもりで、製版のために「山」と「女」の部分を紙で切り貼りした際、写り込んだ重なり影を誤認して「妛」という字に
  • 中国などの古文書にたまたま同じ字があった*2

などなど様々なルーツが解明される事となった。しかし……。




唯一、古文書でも使われておらず、使用例が全く見当たらない漢字が存在した。




何もかもが不明な、漢字のオーパーツ、あるいはミッシングリンク……それこそが、「彁」なのである。



もっともこの字は、別の字を写し間違えて収録した結果生まれた字ではないかと言われており、有力な説としては「『』の間違い」というものがある。
実際、かつて朝日新聞のデータベースで「彁」を検索したところ、1923年の記事で1件だけヒットするも、調べたところ紙面の「彊」の字がかすれて「彁」っぽく見えたのが誤登録されただけと判明、修正されるというできごとがあった。


しかし、調査を経て誤りと分かった時点で、既にJISコードに収録されてから約20年も経ち、その間にUnicodeといった国際的な文字コードにも「彁」が入ってしまっており、今さらコードの修正は不可能であった。
結果としてこの字はそのまま残され、今では世界中のコンピューターで(フォントさえ入っていれば)表示できる文字となっている。



こんな複雑な経緯を持つ字だが、JISコードに登録されてるので「か」か「せい」で変換すれば割とサクッと出てくる。この「か」と「せい」という読みも便宜上つけられたもので正式な読みではなく、旁からの連想とみられる。



【アニオタ的用法】
現在この字は「幽霊文字として紹介される」のが一般的な用法である。


しかしここでは更に一歩進んだ用法を紹介しよう。


1、暗号
この字以外にも語源こそ解明されたが未知の部分が多い幽霊文字は数十字存在する。
そこでそれらをカナなりアルファベットなりに当てはめれば、普通の人には意味さえわからない暗号が完成する。
スパイごっこやヒワイな相談事などにどうぞ。


2、創作物の人名
当然ながら、この字は常用漢字や人名用漢字に含まれないので、実際の人名に使うことはできない。
そこでワナビにオススメなのが、この字を創作物の人名や地名、技名に使うことである。
厨二度が増すだけでなく世の親御さんから、「キー! あなたの作品のキャラと名前が同じせいでうちの子がいじめられたザマス!」というクレームが来るのを回避できる。
漢字1字だけではオリジナリティに欠けるので、他の漢字を前後に組み合わせ、独自の読みを付けるのがより効果的だろう。

幽霊文字ということで幽霊キャラの名前に使うのもいいかもしれない。


●この文字が使われている創作物

  • 楽曲「閠槞彁の願い」
2020年12月24日に、beatmaniaIIDX 28 BISTROVERの隠し曲として登場した楽曲。作曲はDJ TECHNORCH & RoughSketch。
「閠」「槞」「彁」はいずれもJIS基本漢字に含まれるが、典拠不明の幽霊文字とされていた文字である。
そのうち「閠」「槞」はそれぞれ「閏」「櫳」の異体字として古文書で偶然同じ文字が見つかっている。
曲名の読みは便宜上「ギョクロウカノネガイ」とされているが、公式サイトでこの曲につけられたストーリーでは「人間には発音できない」とされている。
なお、この曲名には元ネタがあり、2009年に『タモリ倶楽部』で放映された「知られざる書体の世界 フォントにあった怖い話」の回にて、幽霊文字が記載されたフリップの「閠槞彁」の並びを見た眞鍋かをりが「閠槞彁(ぎょくろうか)っていう店がありそうですね」と発言したのが元ネタらしい。*3
この件を意識してか、前述の公式ストーリーでは「真鍋ちゃん」なる人物が登場している。

  • 楽曲「彁」
2021年4月1日に、太鼓の達人のエイプリルフール曲として登場した曲。作曲はLeaF。
翌年には裏譜面が登場している。
その譜面は最高難易度と言えるほど難しく、追い越しが三重に発生したり突然大量に出てきたりと説明不能。
曲自体も「没/破損データとして産まれたもの」をテーマにしており、主旋律は女の子のハミングだが、そこにバグったノイズが重なったり、不意に鼓動の様な電子音がピロピロピロピロと入ったりしてくるといった具合でヤバい。
映像も序盤は8bitで描かれた遊園地っぽい美麗な風景なのだが、急に文字化けがはいったり、ノイズが走ったり反転したり文字列が出てきたりとサイケデリックで恐怖を感じることも。
さらに作曲者が検索してはいけない言葉でもあるほど怖い「もぺもぺ」と「MARENOL」と同じLeaf氏なので、関連動画にそれらが出てくるというおまけつきである……。

  • 匿名メッセージサービス「マシュマロ」
マシュマロとは「悪口が来ない匿名メッセージ」を謳ったサービス。
AIによる高度なフィルタリングによりネガティブな罵倒や卑猥なメッセージが届きにくくなっている仕組み。
なお、一部の卑猥な単語や「💩」の絵文字などは「マシュマロの絵文字に包んで変換される」という形で届くため、度を越した過剰な表現でなければ一応は届けられる。
そして「マシュマロの絵文字を出したいけど、わざわざそういう単語や文字を打つのは苦痛だ」という人たちも現れたことで、
2018年12月から「彁」を打ち込むとマシュマロの絵文字に変換されるという追加仕様も導入された。
もちろん幽霊文字であるため用途はほぼ存在せず、「勝手に変換されても誰も困らない」文字として有効活用されている。


「彁」の字の有効利用法をもっと思いついた方は追記・修正お願いします。

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最終更新:2024年04月16日 05:51

*1 例として垈が挙げられ、山梨県で「藤垈」、「大垈」、「相垈」といった地名に使われている

*2 彁以外の出典がわからない文字は全てここに属する

*3 ただし「閠」は「閏」の異体字扱いのため、それに従うと正確な音読みは「じゅん」