いんがおうほう/しめんそか

登録日:2011/08/30 Tue 02:27:35
更新日:2023/06/03 Sat 23:28:08
所要時間:約 8 分で読めます




漢字で書くとそれぞれ『因果応報』『四面楚歌』。
共に、日本語で使われる四字熟語である。


  • 因果応報
他者に対して行った事はいずれ自分自身に返ってくる、という意味。

他人に悪い事やイヤな事をすると後で痛い目を見るぞ、といったニュアンスで、人を戒める場面で使うことが多い。
だがもちろん、良い事をすれば良い事も帰ってくるよ、という善行を促進する意味の言葉でもある。


  • 四面楚歌
自身の周りは皆敵ばかり、という絶望的な状況を指す言葉。

語源は中国の故事、項羽劉邦の戦争(いわゆる「楚漢戦争」)から。
劉邦の軍に破れ、城壁へと追い込まれ篭城戦をすることになった項羽の楚軍。
対する劉邦の漢軍はこれに一計を講じた。楚軍の篭る城の四方をグルリと取り囲み、彼らの故郷である、楚の国の歌を歌い始めたのである。
項羽は敗色濃厚な中で周りから敵が故郷の歌を歌っているのを聞いて「本拠地の楚はもう漢に征服されきってしまったのか」と絶望。戦意を失ってしまったという訳である。
この、四面(つまり回り全部の方向)からが聞こえてくる、という状況から四面楚歌という言葉が生まれた。




――さて。ここまで読んでいてアニヲタの諸兄は思ったであろう。

なぜ、このアニヲタWikiにこんな国語辞典みたいな項目があるのか。
っていうか、なんで項目名が平仮名なんだと。


……分かる人には項目名の時点でお分かりであろう。
分からない人にはサッパリお分りでないだろう。
そう、ポケモンである。



それは初代ポケットモンスターの街の一つ、ヤマブキシティに『格闘道場』という施設がある。
この施設に足を踏み入れると、修行をしていたトレーナー『空手王』達が次々とポケモン勝負を挑んでくる。
最終的に師範を倒すと彼らは主人公の実力を認め、珍しい格闘ポケモンであるエビワラーサワムラーのどちらかをくれるのである。


そして、ここからが本題。
エビワラーorサワムラーが入っていたモンスターボールが置かれていた床。その背後には掛け軸がかけられている。
そこはロープレ。読めそうなものがあれば調べるのが常だ。
そして、その掛け軸の前でAボタンを押すと表示されるのである。

いんがおうほう

と、たったの一言だけ。
掛け軸は二つ存在し、もう片方を調べると同様に表示される。

しめんそか

と、やはり一言。
二体のポケモンの背後の二枚の掛け軸にただ一言、それだけ書かれているのである。

ここは己を鍛える格闘場。
察するに、『常に善行を心がけ、自分の行動に責任をもて』とか『どんなに辛く苦しい状況でも決して挫けるな』とか、
そういう感じのメンタル面でも己を鍛える為の意味の込められた訓戒のようなものなのであろう。

しかし、当時のハードは荒いドットのゲームボーイ。テキストの表示は全て平仮名である。
そもそも、当時現役でポケモンをプレイしていた小学校の中ごろくらいの子供達は、まだそんな難しい言葉は知らないことが殆どである。
しかし、メッセージウィンドウに表示される

いんがおうほう しめんそか

の文字列。分からない子供達の目には不思議な暗号か何かのように写ったかもしれない。
さらに付け加えると、掛け軸の前を塞いでいるポケモンは前述のとおり二択で貰える。
つまり、選ばなかった方のポケモンの後ろの掛け軸は、ゲームをリセットしないと読めないのだ。
なお、3年後に発売された続編である『金銀』ではモンスターボールが掛け軸を塞がないため、
ゲームをリセットしないと片方しか読めなかった掛け軸をようやく一度に両方読めるようになった。
この事実が逆に、この謎の言葉を子供達の心に深く刻み付ける結果となった。

そして子供達は首を捻りながら、お父さんお母さん学校の先生等に尋ねるのだ。

「しめんそかってなーに?」

或いは、一生懸命普段使い慣れない辞書を自分で引いたりもしたかもしれない。

その結果、冒頭の内容を知るにいたるであろう。
こうやって得た知識は、きっとゲームを遊んだ思い出と共に、深く子供達の記憶に焼きついたに違いない。

同じく、ポケモンをプレイしたことによって、因果応報や四面楚歌という言葉の知識を得た人は、少なからずいよう。
因みに、ポケモンには『でんこうせっか(電光石火)』という技も当時からあった。こっちの四字熟語もポケモンで覚えた人もいるだろう。



そう、こういったゲーム知識、マンガ知識というものは案外記憶に残りやすかったりするのだ。
我々アニヲタが触れるゲーム・マンガには様々な情報が詰まっている。
神話や伝承、歴史等を元にしたエピソード。小難しい科学などを題材にしたものもあるだろう。
そして、何か知らなかった物事を知るたびに、人は成長していくのである。

また、ポケモンシリーズの後の作品である、ルビー・サファイア・エメラルドのゲーム中には実際のものと同じ点字を用いた仕掛けがある。
最初プレイヤーは、なんでこんなめんどくさい仕掛け用意したんだよ……
と、思うかもしれない。
だが、これには『このゲームを、プレイヤーの皆が他にも色々なことに興味を抱くきっかけにして欲しい』
というスタッフ達の意図が込められていたりする。


無論、中には独自のアレンジが加えられていたり、間違った知識もあったりはするだろう。
だが、だからこそゲームをプレイしていて疑問に思ったこと、記憶に残ったことを調べ、知識の入り口にしよう。

そして自分が知っている情報を基にした作品に出会えた時、
「あ! この話知っているぞ!」
と気づいたときのちょっと得した感。それには、他では味わえないちょっとした快感がある。

これを読んだあなたも、好きな作品からドンドン知識を増やし、「ゲームばかりやっていると馬鹿になるぞ」なんて言う頭の堅い人に言い返してやろう。
「ボクはこのゲームのお陰で少しだけ賢くなれたよ!」と。
でもたまには外にも出ろよ!部屋に引きこもってばかりは流石に問題だぞ!



以下、よくあると思われるマンガ知識の例

  • ポケモンに出てくるその他四字熟語『我武者羅』『起死回生』等
  • 歴史ゲーのお陰で戦国時代に詳しくなる
  • 歴史ゲーのお陰で日本の旧国名に詳しくなる
  • 桃鉄で県名、都市名を覚える
  • 中国の三国時代にだけ詳しくなる
  • 世界史にも強くなる
  • 某聖杯戦争で神話や歴史の偉人を知る
  • ミリタリー系ゲームから当時の世界情勢や兵器について触れる
  • レールガン、荷電粒子砲、マスドライバー等、実際に研究もされているSF兵器の基本原理を調べる
  • 色んな地域の神話や伝承、神仏や悪魔、魔物の類のエピソードを知る
  • 最近のラノベでも引用されることのある古典や海外文学、明治頃の文学作品等の原点やその内容に触れる
  • 情報のどこまでが現実と同じ設定で、どこからが創作やアレンジ、ゆで理論なのか見極める勘が鋭くなる




ちなみにハートゴールド・ソウルシルバーでは「がしん しょうたん(臥薪嘗胆)」「ふくざつ こっせつ(複雑骨折)」になっている。複雑骨折っておま……





ついき しゅうせい

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最終更新:2023年06月03日 23:28