逆転裁判4

登録日:2010/04/01(木) 22:32:41
更新日:2024/02/27 Tue 15:16:05
所要時間:約 14 分で読めます





『逆転裁判4』は、カプコンの『逆転裁判シリーズ』第4作目のニンテンドーDS用ソフトである。
キャッチコピーは『新章開廷!』『嘘を暴く快感。
2007年4月12日に発売。その約10年後の2017年11月22日にニンテンドー3DS版が発売された。
ロックマンシリーズなどでお馴染みの稲船敬二が製作総指揮を務めた。



逆転裁判といえば、ゲームボーイアドバンスでスタートした「法廷バトル」のアドベンチャーゲームであり、
その良く練られたシナリオ、シリーズを通した伏線の展開と回収、強烈な個性を誇るキャラクターたちなど、
その後のアドベンチャーゲームに大きな影響を与えた傑作である。

3』で大団円を迎えた逆転裁判――そしてその3から4年の時を経て登場した本作の情報にファンは歓喜した。


ファンの期待は高まり、発売前には予約の殺到でパンクし公式サイトでお詫びするといった人気作ならではの事態まで発生。
期待を煽る宣伝効果もあり、初週で25万本を達成。さらに廉価版発売後も売上を伸ばし続け、累積で63万本をも売り上げた。
この累積の売上は、2020年までの時点でシリーズ2位の数字である。(1位は僅差で逆転裁判2)






【あらすじ】

新米弁護士の王泥喜法介(おどろきほうすけ)は、師である牙琉霧人(がりゅうきりひと)と共に初めての公判に向かう。
それは彼の憧れの存在、数々の難事件を解き明かし一時代を築いた元弁護士、成歩堂龍一(なるほどうりゅういち)が被告の殺人事件の裁判だった。

辛くも成歩堂の無罪を勝ち取った王泥喜は、ふとした縁から出会ったマジシャンの少女、みぬきとともに、様々な事件に巻き込まれていく。
未熟ながら困難な法廷に挑む王泥喜であったが、やがて彼は『現代の法律のムジュン』に直面する――




【以下、簡単な概要】

●リメイク『蘇る逆転』に続くDSソフト
ダブルスクリーンとなったことにより、操作性が向上。
全ての証拠品に詳細があり、3D証拠品は1ヶ所以上調べられる部分がある。
また、『1~3』と比べグラフィックの解像度やBGMの音質も大幅に上がっている。
だがそのために、旧作からの流用キャラと新作キャラが混在する場面では違和感がある。

●カガク捜査
『蘇る逆転』から導入された探偵パートシステムだが、種類が増えた。
指紋検出、ルミノール試薬に加え、足跡検出、毒物検出、X線解析装置が追加。
さらに、カガク捜査ではないがタッチペンを使うものとして、音楽を分析するミキサーも登場。

●新システム「みぬく」
法廷パートのシステム。
ウソや隠し事のある証言中、証人の体にしぐさや癖として現れた動揺を“みぬく”ことができる。
証言中のキャラクターグラフィックがアップになり、ドットで構成された絵の滑らかさを実感できる。
その後、新たに引き出した情報とムジュンする証拠品をつきつけることになる。
平たく言えば、詳しく聞きたい部分を文節レベルで指摘する「もっとゆさぶる」。
‥‥なのだが、王泥喜がしぐさや癖についてバカ正直に指摘してしまうため、言いがかりをつけているだけと誤解されやすい。
作中でも某証人から「すごい目で睨みつけられると自白してしまうらしい」と認識されている。

●「メイスン・システム (MASON SYSTEM)」
第4話の根幹を成す、7年前と現代の情報を整理して作成されたゲーム。裁判員制度の参考資料。
名前の由来はおそらく推理小説「弁護士ペリー・メイスン」から。
成歩堂龍一の視点から、探偵パートのようなシナリオを進めていく。サイコ・ロックも登場。
あくまでゲームであり「現代」で入手した情報を「7年前」で使用することも可能。
このゲームと裁判の内容から「あなた」は被告人の有罪・無罪を判断する‥‥




【エピソード一覧】

  • 第1話『逆転の切札』
  • 第2話『逆転連鎖の街角』
  • 第3話『逆転のセレナード』
  • 第4話『逆転を継ぐ者』




【登場人物】


「いよいよ始まる、オレの法廷が!」
天啓の大音声
新米弁護士の主人公。22歳。ハシゴ派→キャシゴ派。
毎日発声練習を欠かさないので声が大きい。しかし体格は小柄。
いつも身に着けている腕輪の力で、人の動揺を「みぬく」ことができる。
熱血なのにやる気が裏目に出て空回り気味。むしろ腹黒とか毒舌とか言われる。
当初はすぐ焦るなど頼りない部分が目立つが、後半は真犯人の脅しにも怯まず落ち着いた弁護姿を見せる。
千尋や成歩堂の師弟系列でないためか「発想の逆転」というフレーズは使用しないが、次回作でこの教えを受け継ぐ事となる。



「ステージはつかみが肝心ですからね!」
魔術の子
マジシャン見習いの女の子。15歳のJC。かわいい。キャタツ派。
とある事情で王泥喜に出会い、以後助手を務める。苗字はゲームを進めていくと分かる。
王泥喜と同じく「みぬく」力を持っている。この力を王泥喜に教えたのも彼女。
知ってか知らずか結構な毒舌。でもかわいいから許す。
いろいろ複雑な過去があるが、鋼メンタルどころか金剛石メンタル。
そんな彼女の素顔を知るのはたった一人だけである‥‥今のところは。



「大切なのは真実ですよ、オドロキくん」
銀縁の貴公子
弁護士にして王泥喜の師匠。32歳。金髪ドリルのメガネ。
牙琉法律事務所所長であり、法曹界一クールな弁護士と呼ばれている。成歩堂とは親友の間柄らしい。
根拠の無いハッタリを嫌い、証拠と法律を何より重視する。
どこぞの元弁護士と違い儲かっているようで、高そうな物や貴重な物をいろいろ持っている。
キザな言い回しで無意味にポエムを詠む。本作屈指のネタキャラ



「いいところに目をつけたね。なかなかクールだ」
ロックの狩人
今作のライバル検事、兼人気バンド・ガリューウエーブのリーダー。好敵手と書くタイプのライバル。24歳。霧人の弟。
イケメンで有能で、さぞイヤな奴かと思いきやそんなことは無かった完璧超人。でも7年前は無能なチャラ男。
証拠隠滅もしなければ証言操作もせず、暴力も振るわない、外見に反してマジメな検事。でもちょっとケチでグチっぽい。
王泥喜のアホな失敗に(皮肉は言っても)理不尽な仕打ちをしない一方で、成歩堂を敵視するような発言を繰り返すが‥‥?
17歳で検事になって以来7年間検事を務めているため、実はシリーズのライバル検事の中で一番のベテラン。
持ちネタは、ギター炎上→必死の消火活動。



「忘れてほしいですね、ムカシのことは」
忘れられた伝説
元主人公。33歳。ピアノの弾けないピアニスト。あだ名はダルホド、ピアニート。
7年前、とある事件の裁判において「許されない手段」をとったという疑惑で、弁護士資格を剥奪された。
ピアニストは仮の姿であり、無敗のポーカープレイヤーとして物好きな客を相手にするのが仕事。
かつての情熱は見てとれず、いつも飄々とした態度で腹の底が知れない。テキトーなことを言うのは相変わらず。
ゴクヒ任務がどうとか言って、よく姿を消す。
その真意は…



「すごいでしょ?カガクは。これぞあたしの生きる道よね!」
薬品の匂う女
『蘇る逆転』から登場。殺人事件の現場責任者を務める刑事。25歳。残念な美人。
科学捜査官の試験に落ち、所轄署の刑事として事件の現場責任者を務めている。
夢破れたためか、上司のじゃらじゃらした検事が苦手なためか、いつも不機嫌にかりんとうを貪っている。さくさく。
だが、生きがいのカガク捜査には一転して目を輝かせる。彼女の独自に行った捜査が事件解決の糸口となることも。
基本は検察側だが、おだてると喜んで協力してくれるため、王泥喜&みぬきコンビからいいように使われている。



毎度おなじみ。7年経っても姿は変わらず。
いつものオトボケぶりを発揮しながらも、今回は年長者としての威厳も見せる。





第1話の検事。髪が変な方向に進化。
相変わらず新人をいびるのが趣味。だが後半は真犯人に「異議あり!」を持っていかれる。ちなみに、2の頃、成歩堂からは記憶喪失*1が治った後でも忘れられていたが、今年は彼に記憶喪失が無かったかのように覚えられている。




主人公交代や作風のダーク化、従来の裁判システムに対する問題提起など、前作までと大きく変更を加えた意欲作であるが、それゆえ批判点もある。

【批判点】

●キャラクターに対して
新主人公・王泥喜の最終法廷での活躍が少ない。成歩堂や響也どころか裁判長にまでいいところを持っていかれる。
ライバル検事・響也はムジュンをつきつけてもあっさり納得されてしまい、ダメージ0。むしろ真犯人の追求に協力してくれる。人としては望ましい姿勢なのだが、過去の検事たちのかたくなさやリアクションを求めていたファンからは不評。
前作までの主人公・成歩堂は冷めた部分が強調され、腹の読めない胡散臭いキャラになっている。
被告人は皆何かとスネに傷持ちで非協力的。助けて欲しいなら協力しろよ……。
というか基本的に、メイン・サブ・ゲストほぼあらゆるキャラが何らかの闇を抱えている。総監督の巧氏も、今回のキャラクターは白黒ハッキリしない方向になったと語っている。
完全に真っ白な人間はおとぎ話の中に住んでるものとは言えども、少なくとも依頼人は素直に助けたいと思わせる人であってほしかった。

●シナリオ
1話、2話は逆転裁判としては「普通」なレベル(ただしクリアすると1話のある人物の問題行動が支離滅裂であることが明らかになるが)。
3話はあまりにも粗が多くツッコみだしたらキリがないが、一番わかりやすい問題点が、
「大人でも撃てば反動で肩を痛める大口径リボルバーで射殺したとして小柄な少年(もちろんピンピンしている)を逮捕した」というもの。
これに関して尋問中にいくらツッコもうとしても許してもらえないのに、真犯人の決め手の一つが「大口径リボルバーを撃ったために肩を壊していた」という理由だったりする。
4話に対してはメイスンシステムや裁判員制度がかなり足を引っ張っている。

●新システム「みぬく」
上記の通り「ゆさぶる」の変形であるが、場合によっては言いがかりのように見えることも。
すごい目で睨みつけ、おそろしい大声を張り上げ、証人の細かいしぐさを指摘する‥‥という絵面がよろしくないと思われる。

●メイスン・システム
主に成歩堂が作成したシステムであり、客観性に疑問が残る。
ビデオ撮影した内容をある程度基にしてはいるが、どこまで事実であったかは不明。

裁判員制度
一般市民が法律に縛られず、良識に基いて判断を下す制度。
しかし、今作ではテストケースとはいえ取り扱い事件・裁判員・弁護士・検事などがすべて成歩堂により決定されている上に、
上記のメイスン・システムもあいまって、判決が成歩堂の意向に左右されている印象がついてしまいがち。
さらに旧作の「裁判では証拠が全て」が「たくさんのムジュンを抱えた制度」と断じられるのに、
それに対する裁判員制度が結局「疑わしい人を確かな証拠もなく悪い奴かのように印象操作して判断させる」という明らかに問題あるシステムになってしまった。
(もっとも、現実の「疑わしきは罰せず」理念に反して、無罪を立証する証拠がなければ状況的に無罪でも問答無用で有罪となるシリーズ全体の裁判システムが問題なのだが)

●小ネタが少ない
これまでのシリーズでは関係ないところを調べたり、事件と直接関係ない証拠品をつきつけるといろいろなセリフやリアクションが見られたのだが、
本作では関係ないと知らぬ存ぜぬでそっけないリアクションしかないことがほとんど。

●深刻な「追求」不足
シリーズの処刑用BGM「追求」は「追求 ~追いつめないと」として登場。
音質向上もあり非常に評価の高い曲であるが、出し惜しみを通り越して滅多なことじゃ流れないため記憶に残りづらい。
代わりに処刑用BGMとしては「王泥喜法介 ~新章開廷!」や「真実は告げる 2007」、はたまた「牙琉響也 ~LOVE LOVE GUILTY」の印象が強いかもしれない。



ただし基本的なシステムは過去作のものを受け継いでいて馴染みのあるものであり、総監督兼シナリオ・巧舟のテキストセンスも過去作と変わらずキレッキレ。
さらに新しいカガク捜査、BGM自体のクオリティ、ドット絵による繊細かつ大胆なアニメーションなど、今作独自の評価が高い点も多い。




今作の設定を受け継ぎ、批判点に向き合って、物語は次作『逆転裁判5』へ続いていく――



追記修正はハミガキのみぬきポイントをじっくり正視しながらおねがいします。

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最終更新:2024年02月27日 15:16

*1 失われた逆転