10式戦車

登録日:2010/06/02(水) 13:21:12
更新日:2024/01/19 Fri 08:01:07
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10式戦車は陸上自衛隊で現在配備されている74式戦車の後継機種であり、戦後国産4代目。
開発及び製造元である三菱重工では世界唯一の第4世代戦車と主張しているが、
世界の戦車の区分では第3、5世代主力戦車とされることもある。
というよりまだ第4世代主力戦車の定義が決まっていないため、
今後世界中で10式のような「性能向上しつつ軽量化」が進めば第4世代になる可能性有。
読みはヒトマルシキ
英訳はType10
コードネームはTK-Xであった。


要目
全長 9.42 m
全幅 3.24 m
全高 2.30 m
重量 約44 t
最高速度 約70 km/h
人員 3名搭乗
武装 44口径120mm滑腔砲
12.7mm重機関銃M2
74式車載7.62mm機関銃
価格 約10億円(1両)

・概要
現有戦車(計画当時は74式戦車と90式戦車)の後継として、現在主力の90式戦車よりも上回る戦闘能力を有する他に、
本土でも運用できるように小型軽量化し、戦略機動性を高めC4Iシステムによる情報共有および指揮統制能力の付加、
火力・防護力・機動力の向上、従来の対機甲戦闘・機動打撃に加えてゲリラ・コマンド攻撃対処能力が求められた。
コストの関係上、他国主力戦車の採用、陸自現有戦車の改修が案にあがったが、
前者は陸自のC4Iシステムを搭載するのが非常に困難、後者は改修する余地が残っていない、
以上の理由により廃案になった。
派生型として、78式戦車回収車の後継となった11式装軌車回収車が存在する。

・外観
90式はドイツのレオパルトに似ていたが、10式はイスラエルのメルカバに似ている。
他国の戦車に比べ小型である。

・火力
主砲は新開発された軽量高腔圧砲身の日本製鋼所製の国産44口径120mm滑腔砲を装備、
砲弾は発射薬や飛翔体構造を最適化した国産の10式装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が開発され、弾丸の高威力化を達成している。

90式の砲と口径が変わらないが、現在の戦車の防護力でも十分打撃を与える事が出来、
これからの時代は砲を改良するのではなく砲弾を改良していく時代であるため
(現状反動や重量の関係でこれ以上の砲の大型化が困難と言うのが理由)。
実例を挙げれば、合衆国はロシア側が採用している爆発反応装甲対策で劣化ウラン弾芯のM829APFSDSをアップデートしており、
A2はコンタークト5(T-72B3)、A3はレリークト(T-90MS・T-80BVM)、A4はマラヒート(T-14)に対応しているとされている。
将来的に必要であれば55口径120mm戦車砲への換装を可能。

また自動装填装置を搭載する。従来の戦車用自動装填装置は大抵の場合装填時の角度が決まっており、装填のたびに主砲をその角度に戻す形式だが、
新戦車の自動装填装置は主砲にある程度の仰俯角をかけたままでの装填が可能とされ、装填時間の短縮を図っている。
これ以外にも車外からの弾薬装填が90式の砲塔上面から背面式となっており、補給作業のワークロード低減に努められている。

90式でも恐れられたサスペンションとの協調制御は更に進んでおり、砲塔の横にワイングラスを置く台を増設、そこにワインを注いで超信地旋回とアクティブサスペンションによる姿勢制御を行ってもワイングラスが落ちない、特に姿勢制御単体なら注いだワインの液面がほぼ揺れないという驚異的な砲塔安定性を見せている。

・防護力
新たに複合装甲を開発し、防御力を向上させつつも軽量化を図っている。
90式戦車に採用されている複合装甲が開発されてから20年近く経過した現在、
当時と同じ材質を用いた場合70%、最新の理論と素材を用いた場合30%の重量で90式戦車と同じ防御能力が得られるとの意見がある。
炭素繊維やセラミックスの装甲板への使用や、小型化*1などにより、全備重量は90式戦車より約12%ほど軽量になったとされる。
増加装甲を最大限取り付けると全備重量が48tとする説がある。

砲塔側面前方には発煙弾発射装置が取り付けられている。
なお、90式戦車の発煙弾発射装置はレーザー検知装置と連動するようになっており、新戦車も同様の機能を有している考えられる。
既存の戦車には見られなかった新戦車の特徴として、全周囲を走査可能なよう砲塔の四隅に配置されたセンシング装置がある。
詳細な性能については非公開だが、レーザー検知器と、MEMS技術を用いた赤外線イメージセンサー、
パッシブ方式のミリ波レーダー検知器とする説がある。

・機動力
水冷4サイクル8気筒1200馬力ディーゼルと油圧機械式無段階自動変速操向機、油気圧式懸架装置を組み合わせている。
一見エンジン出力、パワーウェイトレシオが90式より低下したように見えるが、油圧機械式無段階自動変速操向機と新型懸架装置、
軽量高効率ディーゼルにより常に最適に近いトルクを引き出すことが可能で、実効機動力は大きく向上している。

90式では前後(ピッチ方向)にのみ効いたアクティブサスペンションだが、10式では74式同様に左右(ロール方向)への稼働が復活している。

航続距離は公表されていないが最大速度は70km/hとされている。
この速度自体は90式と大差ないものの本車は油圧機械式無段階自動変速操向機の恩恵により、後進でも最大70km/hを発揮可能。
上述した高度なFCSと自由角度装填主砲により前後機動を問わないスラローム射撃。
つまり蛇行しつつの行進間射撃さえ可能としている。現用MBTの中でも高次元の機動力を有するものと考えられる。

・輸送について
全国主要国道にある橋(17,920箇所)のうち10式戦車が通過できる箇所は84%ときわめて高く、
90式戦車の65%、M1など60t級では40%程度という数値に比べるとどれだけ全国での運用に注意を払ったかがうかがい知れる。
長距離輸送にも配慮されており、モジュラー装甲を取り外せば40tトレーラーで輸送できる
(同じトレーラーに載せる場合、90式は砲塔と車体を分離する必要がある)。

・配備
平成23年度におけるライフサイクルコストの算定では平成50年代(2038年~2047年)までに400両の取得と30年の使用を想定していたが、
これは将来の防衛力整備を定めるものではないと注意書きされており、実際の配備構想が反映されたものではない。
平成26年度以降に係る防衛計画の大綱では、平成25年度末定数で約700両保有する戦車を約300両の規模にすると定めている。
本州における戦車部隊の廃止と機動戦闘車部隊の新編が予定されているため、今後は九州や北海道を中心に配備されると思われる。

予算成立年度 購入価格 調達数 導入部隊(※配属年度は予算成立年度末の約1年後で、下記は雑誌情報及び目撃情報に基づいている)
2010年(平成22年)度 約124億円 13両 戦車教導隊第1中隊→機甲教導連隊(所属:富士教導団)
第1機甲教育隊第2陸曹教育中隊(所属:第1教育団→東部方面混成団)→機甲教導連隊(所属:富士教導団)
武器学校
富士学校
2011年(平成23年)度 約132億円 13両 戦車教導隊第1中隊→機甲教導連隊(所属:富士教導団)
第1戦車大隊第1中隊(所属:第1師団)→?(第1偵察戦闘大隊の新編に伴って転用予定)
2012年(平成24年)度 約132億円 13両 第2戦車連隊第4中隊(所属:第2師団)
第1機甲教育隊第2陸曹教育中隊(所属:第1教育団→東部方面混成団)→機甲教導連隊(所属:富士教導団)
武器学校
2013年(平成25年)度 約139億円 14両 第8戦車大隊本部管理中隊・第1中隊・第2中隊(所属:第8師団)→西部方面戦車隊
第1戦車大隊第1中隊(所属:第1師団)→?(第1偵察戦闘大隊の新編に伴って転用予定)
武器学校
2014年(平成26年)度 約134億円 13両 第8戦車大隊(所属:第8師団)→西部方面戦車隊
戦車教導隊→機甲教導連隊(所属:富士教導団)?
第1機甲教育隊第2陸曹教育中隊(所属:第1教育団→東部方面混成団)→機甲教導連隊(所属:富士教導団)?
2015年(平成27年)度 約102億円 10両 第71戦車連隊第1中隊(所属:第7師団)
第8戦車大隊(所属:第8師団)→西部方面戦車隊?
2016年(平成28年)度 約76億円 6両 第71戦車連隊(所属:第7師団)?
第8戦車大隊(所属:第8師団)→西部方面戦車隊?
2017年(平成29年)度 約75億円 6両 第71戦車連隊(所属:第7師団)?
2018年(平成30年)度 約73億円 5両 第71戦車連隊(所属:第7師団)?
2019年(令和元年)度 約81億円 6両 第71戦車連隊第3中隊(所属:第7師団)?
2020年(令和2年)度 約156億円 12両

  • 受難の日々
ご覧の通り、防衛大綱の改正により戦車定数は激減してしまった。
現有90式だけでほぼ定数を満たす状況では、大量の10式配備はもはや夢物語である。
やむなく防衛省は16式機動戦闘車にて火力を補う一方、万一に備え生産ラインを維持する最低限として、当面は年6両生産を続ける構想を打ち出したのである。
(これとても最初は年3両と言われていたのだが、さすがに少なすぎると防衛族が巻き返し、なんとか6両は確保したといういきさつがある)


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最終更新:2024年01月19日 08:01

*1 ミリタリー写真集のインタビューで中の人が車内は90式戦車よりも窮屈だと証言している