K2(戦車)

登録日:2012/10/18 Thu 21:51:37
更新日:2024/02/21 Wed 13:10:53
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もしかして→K2(医療漫画)

K2は大韓民国がM48パットンなどの後継として開発し、2014年より実戦配備中の第3.5世代主力戦車である。
2022年6月末の時点で第1次量産100両、第2次量産106両、第3次量産54両の合計260両が採用されている。

K2

性能諸元

・乗員 3名
・全長 10m
・車体長 7.50m
・全幅 3.60m
・全高 2.50 m
・重量 55.0t
・懸架方式 油気圧式
・速度 70km/h(整地),50km/h(不整地)
・行動距離 430km
・最高出力 1500馬力
・エンジン
試製)独MTU MB-883ka50012気筒ターボチャージド・ディーゼル
第1次量産)独MTU MB-883ka50012気筒ターボチャージド・ディーゼル
第2次、第3次量産)斗山インフラコアMB-883 4サイクル12気筒水冷式ディーゼル

兵装

・55口径120mm滑腔砲 1門
・K6 12.7mm重機関銃 1挺
・M60 7.62mm機関銃 1挺

装甲

・複合装甲(砲塔正面及び車体正面)
・爆発反応装甲(砲搭・車体の上面及び側面)


【開発経緯】

韓国軍はそれまでアメリカ製兵器が主体だったが、1980年代より兵器の国産化を推進しており、海外企業の技術協力の下、国産戦車としてK1を開発した。
K1は韓国の主敵である北朝鮮が配備するT-55、T-62を相手にするには十分な性能を有しており、加えて国産のK200装甲兵員輸送車の開発・配備に成功するなど、装甲戦闘車両の開発ノウハウが蓄積されつつあった。

しかし1990年代に入ると、K1と共に韓国陸軍主力戦車の任を担っていたM48A3K/A5Kパットンの老朽化が著しいものとなり、約900両に及ぶパットンの更新が急務となる。
加えて、北朝鮮T-72の大量調達を実施した情報を入手した事から*1、先述した国産ノウハウを生かした120mm砲搭載戦車を一から設計・開発すべきと結論付けた。

韓国は文字通りこの戦車に国の威信をかけており、結構な額の税金と熱意を向けている。*2
K2はK1戦車から得たノウハウを基に設計・開発された戦車であり、世界的区分でみると第3.5世代に相当する。愛称は「黒豹」*3


【特徴】

K2では55口径120mm滑空砲を採用。
これは独ラインメタル社で開発されたRh120-L55を参考としつつ、ヒュンダイWIAとADD (国防科学研究所)が独自開発したヒュンダイWIA社製CN08 55口径120mm55口径滑腔砲を1門を装備

長砲身化されたことによって44口径モデルに比べ、貫通力が大幅に向上した。
その一方、取り回し、砲身寿命、命中率等は低下したといわれる。

自動装填装置を採用したことにより、乗組員を3人に減らすことに成功。


装甲はモジュール式の複合装甲で、損傷した場合でも容易に新しい装甲と交換できる。
複合装甲の具体的な内容は不明。また砲塔上部など、一部に爆発反応装甲が装着されているほか、探知した敵対戦車ミサイルの擲弾迎撃を行う『アクティブ防御システム』を開発したが、予算的な理由で量産車には未実装である。

現代戦で重要なC4Iシステムもしっかり装備しており、敵味方識別装置や戦術データリンク、GPSとINSを併用した位置情報システム及び車両間情報システムを装備している。

エンジンは試作車及び第1次量産車に最高出力1500馬力の独MTU社製MB-883 12気筒ディーゼル・エンジンが、第2次、第3次量産型には斗山インフラコア社が独自開発した斗山インフラコア製DV27Kディーゼルエンジンを装備する。

生産数は680輌を予定していたものの、2022年6月末現在では第1次~第3次量産で合計260両となっている。
国内生産率はプロトタイプでは77%程度、量産段階では98%まで高める意向であったが、パワーパックの開発難航によりそこまでには至っていない。
K2の評価について、各国の主力戦車を上回る高性能戦車であると評価されている。


【問題点】

開発中に各種の問題点が発生した事で知られている。
特に知られているのがパワーパックであり、2022年6月現在、韓国本国向けK2には斗山インフラコア製DV27Kディーゼルエンジンは採用されているものの、SNTダイナミクス製EST15Kトランスミッションについては採用されていない。

K2開発時におけるパワーパックの仕様要求は以下の通り。
  • 1500馬力相当の出力
  • 7秒以内(のちに8秒以内に緩和)に停止状態から32km/hまで加速できること
  • エンジンも変速機も一度も整備を行うこと無く9600kmを走破すること

このうち、出力については斗山インフラコア製DV27Kディーゼルエンジンが達成し、第2次量産車から採用されている。
ただ、0 to 32km/hについてはドイツ製パワーパックが達成した一方、韓国国産パワーパックは達成が出来なかった(試験では8.7秒)。
ただしこれについては0 to 32km/hが10秒を超過する列国主力戦車も存在するので、この要求が必須かどうかには疑問が生まれる。

無整備での9600㎞走行試験については、韓国国産パワーパックは7000㎞ちょっとでドイツ製ボルトの破断により未達成となった。しかしこの要求仕様の必然性がそもそも不明である。
ドイツ製パワーパックに要求されたのが「整備・修理有りで9600㎞走行する事」であった事からも、この要求仕様は世界で始めての前人未到の要求だった
そのような要求の中、7000㎞以上を無整備で走行した韓国製パワーパックの性能は極めて良好であり、このパワーパックはトルコのアルタイ戦車用パワーパックとして選定された。


【その後】

一応改良によって前述した問題点は少しずつ解消されていき無事実用化されたが、開発ペースと量産化計画の遅れによる数の少なさを補うためか、並行して前型機K1のさらなる近代化改修も実施されている
韓国以外ではポーランドが2022年6月、次期主力戦車プログラムとしてK2をベースとした「K2PL」を採用する事を発表。
ポーランド国産のセンサーや通信・戦闘システムの搭載、装甲の強化といった改良が施されている。

しかし何といっても驚きなのがその調達数。なんとざっと800両以上で、加えて初期バッジとして韓国からK2を180両輸入する。
加えて技術及び生産能力のポーランドへの移転も実施され、将来的にはポーランドでのK2生産も実施される。
そしてK2PL採用決定と同年、韓国とポーランドの間でK2の次世代機共同開発計画がスタートしている。


【余談】

当初は140mm砲を搭載予定だった。

トルコの次期主力戦車として、コレをベースにした戦車「アルタイ」をトルコと韓国で共同開発中。
  • 試作車はドイツMTU社製エンジン、Renk社製トランスミッションからなるパワーパックを搭載。
 量産車の初期ロットは斗山インフラコア製DV27Kディーゼルエンジン、SNTダイナミクス製EST15Kトランスミッションの韓国製パワーパックを採用した
  • サスペンションや主砲などの技術を韓国の企業から移転。
  • 複合装甲、火器管制装置など重要部品の一部はトルコが自前で開発。
  • 贅沢品(自動装填など)は省いて安く仕上げる。

現在2年以内の量産開始を目標に試験中である。




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最終更新:2024年02月21日 13:10

*1 もっとも北朝鮮がT-72を入手したこと自体は事実だったが、それはイラン・イラク戦争で損傷してイランに鹵獲されたイラク軍の車両を研究用として入手したものとされており、「大量調達した」という情報は誤報であったという説が有力である(一説には北朝鮮はK1や在韓米軍のM1エイブラムスへの対抗用としてT-72供与をソ連に求めたが、当時中国と対立していたソ連が北朝鮮経由でT-72の技術が漏洩することを危惧して断ったといわれている)。

*2 開発予算はギネスブックに登録されたほど。

*3 くろひょう、フックピョ、海外向け呼称はBlack Panther)。