デスティニープラン

登録日:2012/02/18 Sat 18:50:05
更新日:2024/03/21 Thu 12:30:40
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これこそが繰り返される悲劇を止める唯一の方法です。
私は人類存亡を賭けた最後の防衛策として、デスティニープランの導入実行を、今ここに宣言いたします!!



デスティニープランとは、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場した社会構想である。
プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルが提唱したものであり、
彼の「人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろう」という思想に基づく。
『DESTINY』の続編である『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』にも登場しており、同作の根幹を担っている。



【概要】

基本骨子は「遺伝子を解析することで一人一人の適性・才能を見出し、全人類が『自己の特性に最も適した職業』に就く」ことで、誰もが幸福に生きられる社会を作るシステム。
人がそれぞれ生まれ持った特性――「性格」「知能」「才能」「重篤な疾病の有無」などを遺伝子解析によって解き明かし、それを踏まえた仕事……言ってしまえば「社会的役割」を当てはめる、というもの。
これには単なる就労選択に留まらず、当人が有する才覚を引き出し伸ばすための環境構築も含まれている。
例えば「音楽の才能を持つ者」ならば、その才能を開花させられる専門的な教育といった環境を与える、という仕組みである。

逆に、当人の能力や才能に見合っていない地位や立場を有する者、特に縁故親のコネクションといった「不当・不公平な手段」で職業や地位を得たものはそこから排除され、ある種革命とも言える交代劇を引き起こす。
無論、排除された人間にも遺伝子解析に基づく「最適な職業」が与えられ、プランの中で生きる権利を有する事となる。

このプランの根幹は「遺伝子」という全人類が等しく生まれ持ち、決して逃れる事が出来ない存在からその個人の「運命」を析出する事。
そしてその「運命」が指示した立場に人を置く――言い換えれば「人類の立ち位置を『個人の適性に合わせること』を最優先にする」事で、年齢や縁故、経験といった「個人の才覚ではどうにもならない」しがらみを取り払い、それによって生じていた人同士の対立や争いを無くす。
最終的には国家間の争いを無くすことも視野に入れた、デュランダル自身も言う通りの「人類存亡を賭けた最後の防衛策」である。

とは言え、無論これほど壮大な計画には、様々な反応があった。

  • シン・アスカは、『今の世界を根底から変えようとするシステムだ』と考えた上で、『才能を見出され浮かぶ者がいる一方で沈む者もいるはずだ』と不安を感じており、『野球選手になりたくて頑張ってきた人が、ある日突然「君の能力では無理だ。歌手になりなさい」と言われて「はい、そうですか」と納得できるものだろうか』とも考えていた。
  • ラクス・クライン達は「人々から決定権を国家が取り上げて管理する」と捉え、「世界を殺すシステム」だと断じた。

実際のところはプランへの参加は自発的なものとしつつ、デュランダルは世論を操作することで、プランを導入せざるを得ない状況にもっていこうとしていたらしく、プランの導入とプラン自体は強制である。
強制性の無い単なる職業案内程度では社会に変革を齎す力にはなり得ないので、プランの目標を考慮すれば当然の話ではある。
戦争の只中で突然の発表に至ったのも、戦争とロゴス壊滅による政治経済の混乱に乗じて、なし崩し的に導入させるためと思われる。

【問題点】

プラン導入に伴う問題点はいくつか指摘されている。

と言うのも、プラン発表の際に掲げられた「徹底した能力主義」といった概要と説明はほとんどが虚偽であり、実際は徹底した生まれの遺伝子による人間の管理社会にする事で人類の競争・努力を排除し長い時間をかけて争いの原因になる様々な方向の向上心を衰退させて戦争を無くすという、人類の発展や可能性を徹底的に否定・排除し生きながらえさせる最終プランである事が監督により説明されている。
こうした大前提を抜きにしても、問題点は多い。

  • 「遺伝子から導き出した才能」がそのまま発現するとは限らない
遺伝子とひとくくりに言っても、生まれたときから発現している遺伝子と潜在的な遺伝子の二種類が存在し、後者の遺伝子は本人を取り巻く後天的環境で発現するか否かが決まってくる。
例えば遺伝子上はスポーツ選手の適性が潜在的にあったとしても、適切な食事や運動ができない環境ではその能力を発揮できない。
仮にプランの導入によって適切な環境の提供が確約されたとしても、そういった潜在的な遺伝子が確実に発現するとも限らず、実際は遺伝子=能力とはいかないのである。
またそもそもの問題として、どれ程遺伝子上は優秀な素質を秘めていても、怪我などの後天的要因によって才能を発揮する事が物理的に不可能な事態に陥れば、当然遺伝子による「最適」は無用の長物と化してしまう。

  • 「才能」と「嗜好」の合致が保障されない
遺伝子的才能があっても、遺伝子による適性と本人の望む職業に高確率で齟齬が生じる為、不満が生じる上に優秀な人間であれば多くの適性があるのが普通である。
その場合、二番目以降に適性のある職業が割り当てられる・選べる仕組みならば、不満が生じるのを抑えられるかもしれないが、そういった説明は本編中には無い。
また先にシンの感想でも触れたように、人生を賭ける程の情熱を投じてきた自分の目標が能力と全く嚙み合っていないと知った時、果たしてその人物は能力に見合った仕事へとその情熱を向けられるか、という問題もある。
適性と能力だけは高くとも奉仕精神や職業倫理は皆無という悪質な医者が居たとして、その人物がプランに守られてなかなか失職しないとすれば、社会においては有益どころか脅威になり得る。
また「職業に貴賎なし」と言っても、当人の嗜好によってはどうしても受け入れられない・働くことが出来ない仕事というのも一定数存在する。
極端な話「事故によって車にトラウマを負った」人に「長距離ドライバーの運転手」が最適と示された場合、その人は心を殺して仕事に従事するか完全に路頭に迷うかのいずれかになる。

  • 「適性」であって「経験」は考慮されない
あらゆる適性(職業)は、前提として積み重ねた経験が必要になってくる。
いくら遺伝子で適性が示されても、職業に就いていきなり仕事でフルパフォーマンスを発揮できるはずもない以上、社会と経済が大きく後退する事は避けられない。
しかも、少なくない人間は自己の職業と能力適性が合致しない可能性があり、場合によっては社会を構成する人類の多くが職業シャッフルされる事になる。
どこまでのレベルで適性を反映させるのかは不明だが、これだけでも導入に伴う社会的混乱が極めて大きいと予想できるだろう。
そして、天才の子どもが天才とは限らないように、親は優秀だったが本人には遺伝子的才能がなく、親やコネ、教育などで経験を得て後天的才能を得た組織の重鎮に納まっているタイプの人間の場合、
このプランが導入されることで地位や権力、果ては職を失うことにもなり、そういった人々からの反発や、それに伴う大規模な社会的混乱も必至である。
また、それがデスティニープランを推進・運営する側の重鎮だった場合、システムを保持する為に不正を行わないかの説明や設定も無く、プランを強行する必要上そういった不正を許容していく危惧もある。

  • 求められる「適性」が確保できるとは限らない
プランは適性自体を操作するものではないため、社会側から見て特定の適性を持った人材が現れるかどうかはいわばガチャである。しかも天井無し。
社会維持だけでも様々な分野において一定以上の従事者が必要なのに、求められる適性を持った人材がどれだけ存在するかもわからない。
人数が足りなければ維持できず、逆に多過ぎれば溢れた人間の行き場はなくなる。
そもそも人間の文明社会というものは生物にとって自然な生活形態ではなく、遺伝子適性任せで就業者を再分配した場合には、人類にとって都合の良い形態を現状維持出来るかは怪しい。
文化活動は人類の生存に不要だからと過度に軽視され駆逐されかねず、采配した結果文明社会が崩壊する恐れさえある。
その事態を長期的に予防するには、あらゆる仕事に適応出来るように今後産まれるコーディネイターを再調整する、といった人道に則るとは言い難く、誰もが自分らしく生きることを目標とした本プランに反する本末転倒な状態にすらなりかねない。

  • プランを推進する立場の人は、絶対的にプランから外れた立場に立つ
最大の問題点として、プランを実行・維持する為にデュランダル議長はじめプラン推進派がプラン実行後もその地位を保持する必要がある為、推進派はシステムの外で支配層に座る事が絶対条件になってくる。(仮にプラン否定派が検査で代表者に選ばれると、当然プランは即中止されてしまう)
つまり実際はAIではなく一部の特権階級が人類を遺伝子で支配する社会構造になってしまう為、放送直後の時点で視聴者層からもそういった指摘が挙がっていた。

アスラン・ザラ等は「そぐわない者は淘汰、調整、管理される」と予想していた。
キラ・ヤマト等はこれを「逆らうものは排除する」という意思表示と見ている(実際、デュランダル自身もそのように述べている。これについては後述)。

  • 「同じ適性を有する者」同士で結局対立が生じる
仮にプランに従って各々が適性のある職についても、その適性のある人間同士で実力差などから妬み等が生じる可能性はあり、長い時間をかけてそれらを淘汰していくと結局多くの血と涙が流される事になる。
「遺伝子で職業が決まるなら、より職業の適性の高い優れた人間を狙って製造する」方向へと加速する可能性があり、漫画『THE EDGE』でもキラが言及していた。
元々資金力のある人間・家が地位を保持する為に一層金をかけて、子孫が人気の職業に就けるように、より正確に発現するよう高精度の遺伝子調整を行うデザインベビー合戦へと発展し、
結果的に以前より富裕層と貧民層の格差が広がり、プランの説明とは真逆の未来になってしまう。


……とまあ、軽く列挙するだけでもこんな状態である。
デュランダル議長がレクイエムを先制発射という暴挙に出たのも、まともに議論されれば決して通らないプランであり、それを避けるためにメサイア攻防戦前に人心掌握を行い、なし崩しに認めさせるしか無かったのである。
そういった意味では行為として間違いであっても、デスティニープランを実行するという1点で見れば議長の行動は理にかなっていた。

そして作中世界では、クローンであり遺伝子上同一人物であるラウ・ル・クルーゼレイ・ザ・バレルが歩んだ人生の過程でまったく別の人間として別の選択肢を選べる事が描写されているので遺伝子を全てとするデスティニープランを本人は意識せずとも完全に否定している

また、福田監督はデスティニープランを採用した世界を進化の否定としており、「自ら進化しないということは計算外の希望や未来は許されない。言い換えれば、生物種としての自死を意味する。」と酷評している。
戦争の解決を、「才能を適切に見出し不満と争いを無くす」では無く、人類が長期の徹底した人間管理社会で競争・闘争心を失う変化(退化?)で実現させる内容である為、発表時に提唱した概要とはまったく異なる未来を解説している。
また、当然長い時を要する解決法の為、少なくともプラン実行後の数十年~百年単位でプランの体制を巡って戦争や紛争が起きないとは一切説明しておらず、一部の視聴者の「プランが実行されれば少なくとも戦争は無くなる」は完全に誤解である。
むしろ平和を謳った一方的な虐殺や淘汰、それをきっかけとした新たな大戦が危惧される代物であり、後に公開された『FREEDOM』によってそのリスクがはっきり描写されることとなる。


【発表後とその末路】

デスティニープランが発表された後、機動要塞メサイアでシステムが起動し、各国にそのマニュアルが届けられた。
早速遺伝子調査を始めるプラント地区もあったが、多くの国は突然の発表に当惑した。

以前からプランについて知っていたクライン派、オーブ連合首長国やスカンジナビア王国、そして地球連合の一部は反対を表明(オーブや連合についてはプラントと戦争状態なのだから、プラン以前の問題である)。
これらの勢力に対し、デュランダルは『人類の存亡を賭けた最後の防衛策』とし、プランに敵対する者を『人類の敵』と見なし、修理したレクイエムを発射。
プラントに向けて艦隊を発進させていた月のアルザッヘル基地を艦隊ごと破壊。

その後、メサイア攻防戦におけるデュランダルの死でプランは頓挫した。

なお、製作者スタッフはデュランダル派の残党やそれ以外の組織によってデスティニープランが後の世に復活する可能性を示唆している。 
そして、実際に『SEED ASTRAY~天空の皇女~』では世界を誘導して自発的にデスティニープランを導入させようとする者が現れている。

+ 『SEED FREEDOM』では……
2年後を舞台とした劇場版『SEED FREEDOM』では、デュランダルのデスティニープランを正当継承した形で再度施行しようとした新興国ファウンデーション王国が登場している。

ファウンデーションの支配層は元メンデルの研究者と『コーディネイターを超えるコーディネイター』と言うべき存在で構築されているが、
彼らはデスティニープラン再施行の為にマッチポンプで自国を滅ぼし、その上にレクイエムを強奪しまたしても従わない国に攻撃を行うという暴挙に出ている。
支配は『支配者の資格がある者』が行うという彼らの主張の下でまたしても歴史的大事件を起こした彼らを見るに、デスティニープランはここに来てまた上記の問題点が表面化し周知されたと言える。

それは上にもある「そぐわない者の淘汰」の具体例、自分を特権階級と信じた『支配者』が暴虐を働く危険性それが暴虐でなくなることである。
支配者の素質がある者が必ずしも名君になれる訳ではない。
歪んだ遺伝子社会のもとで「自分は選ばれし者である」という自負を歪んだ方向に向かう洗脳の様に時代の子に持たせてしまうプランの問題点、
「国の繁栄」「大多数or確実に恩恵を得られる少数の幸福」という大義名分の下、少数or大多数を切り捨てられる有能でも冷酷な支配者が生んでしまうプランの実態、
そして「全てが適性によって管理される」のならば適性による効率的な人的資源の割り振りによる生産性向上の逆もできるはずである。
そう、適性的に要らない者=死んで良い者を見つけ出す事が容易となり遺伝子という絶対的な尺度がある以上文句の付けようも無くなってしまう
キラ達が危惧していたように、遺伝子を全ての基準にするのが当然となり市民の自由意思が完全に失われた時、
支配者が暴君や冷酷漢であっても、「適性ある者」が支配者である以上は市民がそれに文句を付ける事は無い。おそらく「暴君」「冷酷」という感覚さえ無いだろう。
極論、プランの象徴であるファウンデーションのように支配者は「支配者だから支配して当然」とばかりに国民に犠牲を強いても心を痛める事も無ければ、 
国民も国民で「支配者がそう言ったのだから」で例え振られた役割が人柱でも従うのが当然になってしまう。

……これと似たような事は『SEED』の時代から既に起きている。サイクロプスによる自爆である。
ミリアリアは自分達が不要と見なされサイクロプス起動までの時間稼ぎにされた事に「そういう命令だから従って死ななきゃいけないの?」と涙ながらに訴えたが、
デスティニープランが浸透し切った世界とは不要な奴を集める事にも、「死ね」と命じる事にも、それに従う事にも、誰も一切抵抗感が無いという事である。
そればかりか遺伝子的に不要な者が簡単に見つかるのでより効率的に行う事さえできてしまう。

流石に平時にいきなり国を挙げた自爆作戦を行う事は無いだろう……と思いきや、そのファウンデーションが世界そのものを支配するという野心の下、
平和な時期に自国民15万人を犠牲にしたマッチポンプを敢行している以上、可能性は常にあり続ける。
ファウンデーションはデュランダルの想定から生まれた存在であり、プランを遂行すれば必然に生まれてくる組織の為、かねてから言われている通り優良でないと見なされた者が始末されるくらいは平気で起こるだろう。
実際、ファウンデーションはデスティニープランに近い実力を非常に重視した国策により目覚ましい発展を遂げた事で国外からも関心を集めているが、
一方で都心から離れた所にはスラムがあり、そこでは犯罪も自動小銃の掃射による取り締まりも横行している。
ファウンデーションは「誰もが役割を与えられ、誰もが平等に幸福になれる」と喧伝していたが、その実態がコレである事実は能力を基準にしても確実に全員が幸せになる事など無い事を暗に示している。

遺伝子による最適化が完全に行き渡った世界とは、無能とされる者にも活躍の機会が与えられるとは限らない。
「無能」の判断を簡易化し、あらゆる意味で「無能の切り捨て」という行為のハードルが下がるどころか無くなるという事でもあるのである。


【その他あれこれ】


  • 「デスティニープラン」の名前が出て来たのは終盤はじめ頃。44話にて概要が説明された。
    しかし急な展開に加えコミカルなSDアニメを交えた説明から混乱した視聴者も少なくない。

  • プラン自体は研究者時代から考えていたようで、デュランダルの同僚も知っていた。だが、
    「デュランダルの言うデスティニープランは、一見今の時代有益に思える
    「だが我々は忘れてはならない。人は世界の為に生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だということを
    とノートに残している。

  • 外伝『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』シリーズの一作、『ΔASTRAY』に登場する
    火星への移住者、「マーシャン」の社会制度は遺伝子的素養を重視するという点でこれに近い。
    が、これはあくまで地球圏に比べて人材・物資など厳しい環境下にある火星圏において仕方の無い措置である、とマーシャンのリーダー、アグニス・ブラーエは言及しており*1
    アグニス自身副官のナーエ・ハーシェルを(遺伝子的素養から割り当てられた)異業種からスカウトしたように「遺伝子的素養以外にも重要な物がある」と理解しているためデスティニープランを否定している。

  • 放送前のSEED DESTINYの番宣アニメのナレーションには「繰り返される悲劇を止める事が出来るのは一体?」という台詞がある。
    冒頭のデュランダルの台詞は、これに対する自身の返答となっている。

  • 「遺伝子によって人間の適性を判断し、個人が人生の判断材料とする」という発想自体はそこまで問題のある物ではない。
    デスティニープランが問題とされたのは、「遺伝子を社会の絶対的な基準にし、それを強制させる」という極端な方向に行ってしまったからである。


【他ゲームでの扱い】

本編では説明不足により詳細不明だったため、『スーパーロボット大戦シリーズ』では他作品とのコラボレーションも交え、より充実した内容となっている。
最終的に自軍から反対されるのは本編と変わらないが、プラン自体が充実したためか反対される理由も本編より充実している。

シロッコのクローンによる地球圏の防衛計画。
一応、遺伝子的な欠陥は取り除いた上でのものと説明されてはいるが、真相を知ったレイからは
「自分やクルーゼの悲劇を繰り返そうとしている」と見なされてしまい、デュランダルはレイの手で撃たれてしまう…
(デュランダル自身も「レイとクルーゼを裏切ってしまった」という自覚はあった模様)

黒歴史の遺産の一つで、「ニュータイプに覚醒する人類を探し出す」方法として流用される。
フロスト兄弟はプランの副産物兼被害者という設定で登場しているため、デュランダルを恨んでいた。
後に第3次Zにて、SEED保有者を発見してクロノ保守派(ナチュラル)から隠し、絶望の未来に抵抗しようとしていたことが判明する。

またZシリーズにおけるコーディネイターは、クロノ改革派による保守派への対抗策として生み出された存在で、
ナチュラルとコーディネイターの対立は、クロノにおける保守派と改革派の抗争でもあった。

恐らく独自の解釈が大幅になされた作品。
バジュラクトゥルフといった異星人対策の延長上として提唱される。

この作品におけるデスティニープランは、『「ゼントラ化が可能な者」や「SEED保有者」を見つけ出し、自軍部隊LOTUSのような軍事組織を多く作り、地球圏を防衛すること』が目的。
作中の時点で多数の敵勢力との戦争で地球の軍事力は劣勢に立たされており、一部のスーパーロボットを結集したLOTUSの活躍によって辛うじて撃退できている状況であり、目的は至極真っ当。
さらに、適性職業の斡旋などまで含まれていたのかは語られていないが、少なくともゼントラ化可能かどうかは完全に遺伝子の適性だけで決まる問題なので、原作で指摘されていたプランの矛盾点にある程度の答えが出ている形になる。

加えて言うなら、作中の敵勢力の中でも特に大きな「統一意思セントラル」の存在がある。
その実態は「行き詰ったエネルギー問題を解決するために徹底的な効率化を図った結果、個々人の自由意思を完全に消して全人類を単一の意識の基に統一・システム化したもの」である*2
言うならばデスティニープランを極限まで突き詰めるどころか100万倍して濃縮したような地獄絵図が、仲間を求めて侵食してきているようなものである。
彼らはあらゆる無駄を切り捨てて人類を均一化するが、それはそれとして新たな可能性を見出せる突出した能力を利用しようとする意志はある。
これに真っ向から軍事力で今すぐ対抗することは難しいと考えたデュランダルはそこに漬け込み、セントラルへの協力体制を装いながらカウンターの準備ができる苦肉の策として、遺伝子解析による戦力の発見というプランを考え出したのだ。

今作ではシンなど原作ではデュランダルに従ってプラン推進派に属していたザフト軍の面々も、多数の仲間に助けられて自らの意思で進む道を決めているため、
デュランダルに従う道を優先するレイ以外はザフト軍のメンバーも全てLOTUSに残留してデュランダルと敵対する。
しかし今作におけるデュランダルはこういった外敵への脅威のためにアークエンジェルをわざと見逃すなど、全人類のためを真に考えた行動を取る人物になっており、
敵対してもなおプレイヤー部隊から最後まで説得を試みられるなど、上述のプラン運営背景もありデュランダルおよびデスティニープランそのものはそこまで敵視されていない。
あくまで「人類の未来を憂う者として一定の理解ができるが、主義主張の違いから止むを得ず対立しなければならなかった相手」となっている。

シン総士に対して「かつて実行されようしたが、その思想は人々に受け入れられなかった」と語っている。
もしデュランダルがイノベイターの存在を知っていたら、プラン内に「イノベイターに覚醒し得る人間の発見」も盛り込んでいた可能性が高い。

前大戦で「運命」という言葉を一番に嫌う男がこの計画名と内容を聞いていたら間違いなく怒り狂っていただろう。
ついでに声的にデュランダルの宿敵だったであろう男はブチキレるか、自分が頂点である上でその成果をそっくりいただこうとするかどっちかだったに違いない。

また、シンはファフナーパイロットに選ばれた少年少女達の生き様と、彼らを待ち受ける宿命をデスティニープランと重ね合わせていた。
この時、彼は「人は生まれながらに生き方を左右されたりはしない」と暗にデスティニープランを否定しており、原作とは違い反対する立場に回ったようにも見えなくもないが…?

『SEED DESTINY』が原作終了後参戦ということで大きく原作再現はされなかったが、
このデスティニープランと同種の政策を極端な形で導入・実践したオリジナル勢力超文明ガーディムが登場する。
しかしその実情は、合理化とシステム化の名の元に愛や恋愛といった「人間性」が切り捨てられ、種族全体がシステムに隷属する管理社会であった。
人間性が失われた反面、技術力と武力は非常に優れた文明となっていたものの、同時に他種族を頭ごなしに見下し蔑む傲慢な差別意識の権化となり果て、
更には他文明を「管理」や「矯正」の名目で侵略する蛮行まで働いていた。
詳しくは当勢力の個別ページを参照。
彼らの醜悪で歪な傲慢さとプライドは、自分達が開発したシステムからも「害悪」とまで評して蔑まれた。

【余談】

現実でも遺伝子を解析するサービスが一部では始まっている。(一回数十万円程度から行える模様)
遺伝子解析で判定できる内容は身体能力(短距離走向きか長距離走向きか等)、精神面(楽観的か悲観的か等)など多岐にわたり、未だ発展途上で信頼性や倫理面において賛否が分かれているが、英才教育の一環として一定の利用者がいるようである。
また上記の問題点の一部は放送当時の遺伝子研究に基づいた問題点であり、現在では遺伝子研究が進み、個人が先天的に持ちうる「能力」だけでなく、性格や精神の傾向(コミュニケーション能力やストレス耐性など)、
後天的に発症するリスクのある疾患(癌やうつ病など)などもある程度はわかるようになってきている。
遺伝子解析技術の発展次第では、プランを実行した場合に想定される問題のうち、「割り振られた職業に適応できない」や「後天的な疾患で働けなくなる」などの問題が解消される可能性もある。


追記・修正は遺伝子調査をしてもらってからお願いします。

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最終更新:2024年03月21日 12:30

*1 なおデュランダルとの会談でこの火星の社会制度に触れられた際、政治的な非難を予想したアグニスは強い口調で反論しているが、デュランダルはむしろ好意的に見ている旨を発言している

*2 ゲーム内ではセントラルの発生した「向こう側の地球」では他勢力との兼ね合いで人類半数となっているが、原作のアニメバレルでは本当にほぼ全人類をシステム化している。