シザーマン

登録日:2010/11/06 Sat 03:19:41
更新日:2023/08/25 Fri 23:14:53
所要時間:約 7 分で読めます





ホラーゲーム『クロックタワー』シリーズに登場する殺人鬼。
独特なビジュアルデザインと恐怖演出から根強い人気を誇る、ホラーゲームのキャラクターの代表的存在の一つ。
企画自体が名作ホラー映画へのオマージュであることからも解るように、シザーマンもまたジェイソンやレザーフェイスの様なシンボル的存在として生み出された。
世界観が繋がっている『初代』と『クロックタワー2』では奇形の子供という共通項がある。
これは、特に初代の元ネタとも呼ぶべきダリオ・アルジェント作品の多くに共通する特徴でもある*1

以下、小説版で明かされた設定も交えて解説するので、ネタバレに注意。
















『1』おけるシザーマン(ネタバレ注意!)


ボビィ・バロウズ(9歳)
『1』おけるシザーマン。
バロウズ屋敷に出没する殺人鬼。ダンの双子の弟。9歳の少年だが、その顔はミイラか悪鬼のように醜い。服装がバーロー
手にした大バサミで手にかけてきた動物や人間は数え切れず、ジェニファーの父曰く「悪魔の落とし子」。
ジェニファーらメアリー先生に養女候補として連れてこられた孤児院の少女たちを抹殺しようと執拗に付け狙う。
物理的攻撃の一切を無効化する不老不死の肉体を持ち、いかなる手段をもってしても死ぬことはない。

実は、バロウズ家が代々信仰してきた邪教の神「偉大なる父」が異次元より現世に遣わした使徒「偉大なる父の息子」
メアリー・バロウズの胎内に生じた「次元の扉」を通じて現世に降臨した。

使徒として生を受けた者は生後10年をかけてサナギと呼ばれる巨大な胎児の姿に成長し、やがて羽化して成体となり完全な覚醒を迎える。
だがボビィは兄と違って羽化が早すぎた不完全体だったため、数日ほどで死ぬ運命にあった*2
彼を哀れんだメアリーが、時計塔の大時計を停止させて時の流れを止める呪術を行ったことで生きながらえていた*3
最終的にジェニファーの手で大時計を再起動され時の流れを再び動かされたことにより、苦悶と共に時計台から落ちて絶命する。

本作では特定地点のクリックとイベントシーンによってしか出現しないため、次回作と比べて影が薄い。
むしろジェニファーの主な死因は大量の理不尽すぎるデストラップでの死亡の方が多い。

『2』におけるシザーマン(ネタバレ注意!)

ダン・バロウズ(10歳)
ボビィの双子の兄。『2』におけるシザーマンの正体である。

『1』では想像を絶するほどの巨大な肉塊のような見た目の胎児として登場する。
その見た目通り運動機能が未発達な代わりに、備え持った強力な念動力と透視能力でジェニファーを怪異に陥れた。
『2』では前作の醜悪な姿とは打って変わって金髪碧眼の美少年として登場し、事件のもう1人の生存者を装ってエドワードと名乗っている。
時計塔のおかげで不老不死だった弟と違い、彼は正真正銘の不死身。

弟と同じく、バロウズ家の信仰する邪教の使徒として生を受けた存在。
ダンは不完全だった弟と違い順調な成長の途上にあり、屋敷の地下にある広大な洞窟の奥で人目を隠すようにして育てられていた。
地下洞窟に入り込んだジェニファーを殺そうと襲い掛かるが、崖をよじ登っていた彼女が転げ落とした灯油缶の引火による爆発で炎に巻き込まれた。
だが不死であるため死ぬことはなく、火災の熱によって羽化が促進されたことにより時期を待たずして成体として覚醒した。
(リメイクのPS版『1』では焼け崩れた肉塊から人影が起き上がるというシーンが伏線として追加されている)

そして記憶を失った事件の生存者を装って館から抜け出した彼は、ジェニファーたちの近辺に潜伏して機をうかがい、
ジェニファーに強い執着心を抱いていたハリスと事件に強い関心を持っていたバートン教授を唆して協力者として利用*4し第2の事件を引き起こすことになる*5

その本性はいとも簡単に人を殺し、殺しを遊びやゲームと言い切る狡猾かつ残忍な性格。
凶器を振りかざして襲ってくるだけでなく、超能力を利用した怪異による罠を仕掛けたり、逃げた先に先回りできる(通称シザーワープ)。小説版では凶器の大バサミを使わずとも、強力な念動力で大の大人を軽々と吹き飛ばしその腕をへし折るなど、弟をはるかに上回る凶悪ぶりである。
それだけ簡単に人を捻り殺せるほどの能力を持ちながらもあっさり殺すことをしないのは人間に恐怖と死をもたらす存在であり、散々弄んで恐怖を存分に味合わせることを旨としているため。
一見簡単に隠れたターゲットを見失ったり撃退されているように見えても、あくまで殺害対象を気まぐれによって見逃しているだけに過ぎないのだ。
ちなみに年相応の感性や嗜好も持ち合わせているらしく、子供番組を見て無邪気に楽しみはしゃいだりもしている。

人心掌握術にも長けており、テレパシー能力で人間の脳に直接語り掛けて意のままに操ることも可能で、ハリスとバートンを唆して利用した他、後見人であるグラニット孤児院のケイも瞬く間に隷属的立場に貶め、手駒として扱っている。
小説版によればクロックタワー事件の際にこの能力でジェニファーを操り、自殺に追い込もうともしたという。動物を操ることもでき、バロウズ家の元執事の邸宅で飼われていたセントバーナード犬を凶暴化させ、ターゲットを襲わせている。
人間の姿は擬態に過ぎず、真っ黒な粘膜と粘液にまみれた醜い獣のような姿が正体であり真の本性である。
なおダンとボビィは2人で1人であり、蘇ったボビィの魂がダンと合一を果たすことで、この世の終末が訪れるという。
(具体的にはラストに出てくる次元の扉から、向こうに潜むあらゆる邪悪が人の世になだれ込んでくるらしい)

最終的にはバロウズ城の次元の扉*6に吸い込まれ、現世から元いた世界へと追放された。
しかし、シザーマンは人間と異なる次元に潜む存在であるがゆえ、魂そのものを完全に滅ぼすことはできず、
いずれまたこの世に生まれ落ちるとされている。

呪われしバロウズ家の歴史

15世紀半ば、イングランドとスコットランドの国境付近を統治していたバロウズ家初代当主セオドール・バロウズは、
百年戦争帰還後、病的なまでに死を恐れるようになり、不死を追い求めて「偉大なる父」と呼ばれる邪神を崇める邪教信仰に手を染めていく。
「死と恐怖を求める神にそれらを献上し永遠の不死を得る*7」という教義に基づいて領内の多くの子供を虐殺したため、『人喰いバロウズ』と畏怖された。
やがて彼は自分自身を生贄に捧げねばならなくなったとも、イングランド国王にその凶行が露見するのを恐れた親族に毒殺されたとも言い伝えられている。

こうして恐るべき凶行は止んだものの、邪神の呪いはその後も長きに渡って一族に残ることになる。
セオドールの代以降、バロウズ家に度々異常な残忍性と超能力を有した奇形の怪物が生まれるようになったのである。
この怪物こそが、後に「シザーマン」と呼ばれる邪教の神の使徒「偉大なる父の息子」だった。

生まれ落ちる度に血を求めて狂ったように暴れたため、その度に仕方なく生贄が捧げられ多大な犠牲者が出たという。*8

この現状を憂えた第13代目当主クエンティン・バロウズは、邪教根絶を決意してただ独り奔走し自分の代に生まれたシザーマンを葬り去ることに成功するものの、
完全な根絶を果たせぬまま邪教派に暗殺されてしまった。*9

その後、1912年にバロウズ家はイギリスからノルウェーへと移住し、以降の80年間*10、クエンティンの尊い犠牲によってバロウズ家に平穏な日々が続いていた。

だが、サイモン・バロウズの代になって再びシザーマンが生まれ落ちることとなり、サイモンはクエンティンが残した教えに従って、シザーマンを葬り去ろうとするものの、
双子への情に支配された*11妻メアリーの妨害にあい追放の儀式に失敗してしまう。

こうしてシザーマンの恐怖は再びこの世に解き放たれ、全ては時計塔屋敷で発生した事件へと繋がっていくのである。

余談

  • 上述の設定上、『2』でのゲーム中のCGモデルでは明らかに成人男性ほどの体格で描かれているが、ハリスとバートンがどれだけの範囲で犯行に関わっていたのかは漠然としている。
    • ヘレン編のシナリオ2の冒頭デモでは、ゴッツがシザーマンを銃撃するも効果がないというシーンがあるが、小説版においては「高性能の防弾チョッキを着れば不死身の怪物を演じることは可能」として、無防備の太ももを撃つものの微動だにせず、最高の急所ともいうべき股間に狙いを定めるも何故かピンピンしているという描写がある。
      • また、ジェニファー編における第1章での殺人事件はハリスの犯行とされているがゲーム中では受付のソファーを調べると、子供サイズの足跡があるという描写も存在している。*12
    • ちなみにシザーマンとして現れる際には何故か左足を引きずっている。
      • ダンは完全体であり、ハリスもバートンも五体満足のはずなのだが、この所作に何かしらの意味があるのかは不明である。

『3』におけるシザーマン

共通するのは名前だけであり、設定もリアクションも何もかもが別物。
本作では奇形の子供ではなく、単に奇抜な格好をしたテンションの高い兄ちゃんである。
おぼっちゃまともサーカス団の一員とも取れる服装。ぶっちゃけネタにしか見えない。「シザー!」とか叫ぶし。
因みにシザーウーマンなる妹もいる。
尚、兄が“ルディ”で妹が“ジャニス”である。
東洋系で、バロウズ候の配下として多数の領民達を惨殺した。
“魔のモノの配下”の中でも側近的な立ち位置だが、懲役人数は幹部級の斧さんに劣っている。
ハサミの構えは2と同じだが分解した状態で持つ場合も。
とゆうか武器がハサミを摸した剣だが、ハードモードでは日本刀となり、電流が走る。
男の装備に変更もそうだが、お前ら変えるところを間違えていると思う。(他はハンマー男→トゲ付き鉄球、硫酸男→硫酸の噴霧機のデザインが変更でまあ名前に偽りはない)
ぶっちゃけ、シンボルキャラクターであるシザーマンを改変し過ぎたこともあり『3』の不評の原因の一つ。


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最終更新:2023年08月25日 23:14

*1 奇形の犯人や何かしらの身体的欠陥を抱えた人物が重要な役割で登場することで知られている。

*2 二人を取り上げた医師が「彼らの生態器官はまだ発達しておらず、このままだと3日と持たないだろう」とメモを遺している事から、兄も何らかの問題を抱えていた可能性もある。

*3 時計塔を止めただけでなぜ「時が固着した」のかは劇中では不明だが、図書室(もしくはゆりかごの部屋)で読める本の中に何らかの呪術的儀式によって時を止める方法があるらしいことを示唆する描写がある

*4 この点は恐らくは自身の正体を隠すためと、先の事件で犯人が幼い子供だったという事実を知っているジェニファーに対する攪乱の意味合いもあったと思われる。

*5 シザーマンのマスクとハサミのレプリカについては、恐らくハリス/バートンが第1の犯行に際して直接盗み出したものと思われる

*6 唯一、邪教信仰に反対し邪教根絶に挑んだ13代目クエンティン・バロウズがイギリスのバロウズ城に手がかりとして残した

*7 厳密には肉体の不死ではなく魂の不死であり、使徒たるシザーマンによって肉体を滅ぼされた後に魂のみが復活する。そして死した肉体に宿った上で生前と同じように活動できるようになり、人々の恐怖を糧として永遠の時を生きるとされている。

*8 『2』ではこの言い伝えを裏付けるようにバロウズ城に過去のシザーマンのミイラが納められた棺が放置されている。ゲームのみの描写で小説版には出てこない。恐らくはボビィのように不完全体として生まれ落ち死を迎えた個体であると思われる

*9 この事からクエンティンは後世の邪教派の同族たちに“裏切り者”として憎悪を向けられており、小説版でもダンから蔑まれている

*10 小説版によると、バロウズ家の一部は邪教の伝承、拠点であったバロウズ城の管理・維持を目的としてそのまま現地に残っていた模様

*11 小説版ではシザーマンを身ごもった女は強い母性に支配されてしまうという描写がある。

*12 一応、条件を満たした後に閲覧できる設定資料におけるシザーマンのデザイン画では、子供らしい体格で描かれているが、こちらは恐らくゲーム終盤で正体を現したダンを想定して描かれたものと思われる