ゲッターロボ號(漫画版)

登録日:2010/06/11 Fri 10:03:26
更新日:2023/11/01 Wed 00:37:33
所要時間:約 5 分で読めます




『ゲッターロボ號』(漫画版)は石川賢のロボット漫画。「月刊少年キャプテン」にて連載された。


◆概要

1991年に放送されたアニメ『ゲッターロボ號』のコミカライズ作品であるが、アニメ版の放送開始と漫画版の連載開始はほぼ同時スタートと言ってもよく、
他の『ゲッターロボ』の漫画版同様に、アニメ版の原作が本作というわけでも、その逆というわけでもない。
故に本作を(原作版)と呼ぶと誤りになるのだが、単行本化されていないため問題視されることはないものの、当時のコロスペとてれびくんにも安田タツ夫によるアニメ版のコミカライズが掲載されたので、実は(漫画版)もちょっと問題ある表記だったりする。

アニメ版はストーリーや設定の面で前作『ゲッターロボ』及び『ゲッターロボG』との関連性がかなり薄く、登場人物も一新されているが、
漫画版では神隼人、流竜馬などの『G』以前のメインキャラクターも登場する他、ストーリー展開も『ゲッターロボG』までの流れを汲んでいる。
要は「いつもの賢ちゃん」と言うべきか、主要人物の基本設定や序盤のストーリー展開等はアニメ版と共通する部分がありつつも、キャラクターデザインや特に中盤以降のストーリー展開では独自の味付けがなされている。

また、この作品はいわゆるリアルロボット的な要素が取り込まれており、例を挙げれば兵站や他国との共同作戦、兵器の整備などが描かれている他、
ゲッターの戦い方も今までのゲッターとは違って、内蔵している武器ではなく手持ちの火器による射撃戦が重視されている*1
スーパーロボットにカテゴライズされる『ゲッターロボ』作品群においてこの要素が取り込まれた作品は珍しく、そういう意味でも本作は異彩を放っていると言えよう。

独自路線を行きつつも、アニメ放映中はある程度そちらに寄せたストーリー展開となっていたが、連載中にアニメが放送終了を迎えると、そこからはまさしく石川賢の独壇場。
第一作『ゲッターロボ』の敵勢力であった恐竜帝国を復活させ、さらにゲッターサイドには新たなるゲッター『真ゲッターロボ』が登場。
以降は真ゲッターロボを中心に、『命の根源』や『ゲッター線の概念、真理』といった哲学的要素も組み入れ、壮大なる『ゲッターロボ・サーガ』が幕を開ける。


一つのロボット漫画としても、『三人一組のチーム単位の主人公』『前作の主人公たちが成長して登場』『共に戦うライバル』『ストーリー後半に新たな主役ロボが登場』など、
あらゆるロボット漫画のお約束とも言える要素が組み込まれ、それが石川賢の凄まじい画力と高い構成力で描かれた本作は、
連載終了から20年以上経ち、作者である石川賢の急逝から10年以上経った現在もなお『ロボット漫画史上最高傑作』と評され、多くのクリエイター達に影響を与えている。



◆あらすじ

北極圏に要塞「蛇牙城(ベガゾーン)」を築いた狂気の科学者「プロフェッサーランドウ」は世界を我が物にするべく全世界に世界征服の声明を発表してきた。
この事態に対応するために、元ゲッターチームにしてNISERの司令官である神隼人は一文字號、橘翔、大道剴の三人で新たなゲッターチームを結成させる。
そして隼人はランドウ軍に啖呵をきった。
「私たちは全てをなげうってでも貴様の野望を打ち砕く!」
かくしてゲッターチームvsランドウ軍の戦いの火蓋は切って落とされた!



◆主要登場キャラ


NISAR

一文字號
この物語の主人公でゲッター1系列のパイロット。二代目ゲッターチームのリーダーでもある。
その身体能力の高さを買われて、隼人に半ば拉致の形でゲッターのパイロットにされた。
性格はワイルドな熱血漢。


●橘翔
ゲッター2系列のパイロットでチームの紅一点。
女性ながら居合い斬りの達人で、性格は二号機担当者らしくクール。
怒ったら怖いので號や剴は翔に頭が上がらない。


●大道剴
元々はNISERに所属している整備士だったが、ゲッターに対する愛を買われてパイロットに。
担当はゲッター3系。ゲッターロボ・サーガにおけるゲッター3系のパイロットは代々悲惨だが、剴は……


神隼人
プロフェッサーランドウに敵対している組織であるNISARの司令官。
翔の父親である橘博士と共にゲッターロボ號を建造しランドウ軍に立ち向かう。
性格はかなりの現実主義者でクール。どんな残酷な命令でも能面のような顔で下す。


敵組織

●プロフェッサーランドウ
北極の蛇牙城を拠点に世界征服を狙う悪の科学者、脳を活性化させた事でアッチの世界に目覚めた。
自身が製造したメタルビースト軍団を率いている。
悪の親玉だが、物語後半になると……


●女帝ジャテーゴ
終盤で復活する恐竜帝国の女帝。地球を我が物にせんと再びメカザウルスを率いて地上に姿を表す。
そのデザインは多分一度描いたらもう二度と同じ姿は描けなさそう。


●ラセツ
ランドウの側近。その正体は恐竜帝国から送られたハチュウ人類の将校。
アラスカ戦線ではドラゴンタートルを指揮するが、急ぐあまりにそのドラゴンタートルを失う失態を犯すなど、指揮官としては無能な一面も。
後にランドウを裏切り、恐竜帝国の幹部として暗躍する。


●ヤシャ
ランドウの部下でドラゴンタートルの総司令官。
ラセツと違い、冷静沈着で作戦一つ一つを大切にする性格だが、作戦の進み具合の遅さに痺れを切らしたラセツにドラゴンタートルの指揮権を奪われた上、
そのラセツの失態によってドラゴンタートルを失い、さらにその罪を自らに着せられそうになって抹殺を目論むが、逆に殺されてしまうなど、敵の中でもかなり不遇。


その他登場人物

●シュワルツコフ
アメリカ軍のパイロットで、スーパーロボット「ステルバー」を操る。
登場したばかりの頃はかなりのレイシストだったけど、ゲッターチーム(主に翔)との交流で態度が軟化していく。
號のライバルとも言える存在で、なにかというと対立している。


流竜馬
終盤で登場する前作の主人公。ボロ寺で空手道場を開いている。
この世で真ゲッターロボを動かせる最後の人間。
ただ本人は、早乙女研究所崩壊事件の影響でゲッターへの搭乗はおろか、ゲッターに関わること自体を厭っている。


メシア・タイール
新興宗教「グリーンアース教」の教祖である少年。
まるでゲッターの意思を感じ取ってるかのような言動で號や竜馬を導く。


◆余談

本作は『ゲッターロボ・サーガ』の中でも異質なことは前述したが、石川賢の漫画作品としても異質な面を持つ。
というのも、「俺たちの戦いはこれからだ!」的な打ち切り(風)EDが多い石川作品において、本作は綺麗に物語が終わる珍しい作品なのである。
それでいて他の石川作品の例に漏れず、最初から最後まで勢いのある豪快なストーリーが続くので、心おきなく読み進めることが出来る。
特に、ラストバトルであるシベリア最終決戦から物語のエンドまでの流れはとても感動モノ。涙なしでは見れない…カモ。ともかく本当に一見の価値あり。
石川賢の高い構成力を垣間見れるだろう。

ただ、綺麗に風呂敷が畳まれたのは石川先生がこの『ゲッターロボ號』で『ゲッターロボ』シリーズ自体を終わらせるつもりだったという事情もあり、
続く『真ゲッターロボ』『ゲッターロボアーク』にてさらに大きな風呂敷を広げるハメになったのは、ある意味皮肉と言えるかもしれない。
こういった事情から、「『號』以降に発表されたゲッターは蛇足」と評する人もいるが、『真』『アーク』も『號』に負けず劣らず面白い作品であるので、
それらを読んだ上で『真』『アーク』をどう評価するかは読者次第である。


ちなみに、時折隼人が「置いてけぼり要員」と評されるのはこの作品に由来しており、終盤まで読めばおのずとその理由が理解できるだろう。


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最終更新:2023年11月01日 00:37

*1 これは後に別作者によって製作された『ゲッターロボ飛焔』にも言える