モリンフェン(遊戯王)

登録日:2009/05/26(火) 18:35:25
更新日:2024/03/02 Sat 01:12:21
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遊戯王オフィシャルカードゲーム(以下遊戯王OCG)には様々なモンスターカードが存在する。
強力モンスターがいるならば、当然弱いモンスターもいる。

その内の1体がモリンフェンである。


《モリンフェン/Morinphen》
通常モンスター
☆5/闇属性/悪魔族/攻撃力1550/守備力1300
長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔。


モリンフェンはなぜ弱いのか?


遊戯王OCGの基本的な概念として、「☆(レベル)が多いモンスターカードほど攻撃力が高い」「☆が5以上のモンスターカードは、場に出ているモンスターカードをリリース(コストに)しないと通常召喚できない」というものがある。
つまり、「☆4以下のモンスターを場に出す」→「それをリリースして、より強いモンスターを出す」という事でより強力なモンスターを出せるのだ。

モリンフェンは☆5。場のモンスターを1体リリースしなければ手札から出すことができない。

では、☆4以下のモンスターの能力はどのようなものかというと…

《レインボー・フィッシュ》
☆4/水属性/魚族/攻撃力1800/守備力800

ブラッド・ヴォルス
☆4/闇属性/獣戦士族/攻撃力1900/守備力1200

アレキサンドライドラゴン
☆4/光属性/ドラゴン族/攻撃力2000/守備力100

あッ、モリンフェン負けた
そう、攻撃力1550は上級モンスターとしてはあまりにも弱い
というか上記の通り、下級モンスターよりも弱い*1
特にレインボー・フィッシュは第一期に登場したノーマルカードでありながらモリンフェンよりも高い攻撃力を持つ
その長い腕とかぎづめを精一杯振り回したところで、格下に勝つことすら危うい有様なのである。

上記カードには守備力こそ勝っているが、わざわざこのカードを生け贄召喚してまで守備表示にするメリットはほぼない。
上級モンスターだけで比べても、同期ですら攻守ともに上回る《神魚》(守備力1700)が存在しており、ほんの少し後に登場した《千年の盾》や後発の《ネオアクアマドール》(いずれも守備力3000)には遥かに及ばない。
そもそも壁役にするなら、はじめから守備力の高い下級モンスターを使った方が手っ取り早い。

ちなみに、リリース1体で召喚できるモンスターとしては
人造人間-サイコ・ショッカー
☆6/闇属性/機械族/攻撃力2400/守備力1500

邪帝ガイウス
☆6/闇属性/悪魔族/攻撃力2400/守備力1000

デーモンの召喚
☆6/闇属性/悪魔族/攻撃力2500/守備力1200

フロストザウルス
☆6/水属性/恐竜族/攻撃力2600/守備力1700

百戦王 ベヒーモス
☆10/地属性/獣族/攻撃力2700/守備力1500
このカードはモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。
このくらいの数値が基準値。攻撃力1550のモリンフェンの1.5倍以上である。

さらに上の例だとサイコ・ショッカーやガイウス、ベヒーモスは強力な効果も持っており、通常モンスターであるデーモンの召喚も豊富なサポートが存在する等、遥かに扱いやすい。

とはいえ、モリンフェンは「生け贄が必要なモンスターの中で一番攻撃力が低い」わけではない。
下級モンスターよりステータスが低い上級モンスターとは初期ではよくあることであり、よくネタとしてセットで挙げられるレオ・ウィザードシェイプ・スナッチはモリンフェンより攻撃力が低い。
世の中には「☆8・攻撃力0・守備力0・通常モンスター」というカードもあるのだ。
しかもこれはモリンフェンの登場から13年後の2012年のカードである。

《神龍の聖刻印》
☆8/光属性/ドラゴン族/攻撃力0/守備力0/通常モンスター

だが、この攻守0のカードが「遊戯王OCGで一番弱い」とされる事はまずない。
OCGでは「攻撃力の低いモンスターほど出しやすい」という傾向があり、《神龍の聖刻印》もこうしたコンボを前提に作られている為である。
「攻撃力○○○○以下のカードをデッキ(山札)から出す」とか、「攻撃力○○○○以下のカードを墓地(捨て札)から出す」とか、そういった効果のカードが多いためだ。
こうした方法で出すならば☆5以上でもリリースが要らない。


先述の通り、モリンフェンの攻撃力は悲しいくらいに低いので、以下の様なカードが…

《キラー・トマト》
☆4/闇属性/植物族/攻撃力1400/守備力1100
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

《クリッター》
☆3/闇属性/悪魔族/攻撃力1000/守備力600
「クリッター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。
デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。
このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの発動ができない。


あッ、使えない。

そう、攻撃力が低いモンスターを出しやすくするカードは、だいたい「攻撃力1500以下」を指定している。
モリンフェンは攻撃力1550。たったの50超えているばかりに一切サポートしてもらえない。

それどころか、
  • 攻撃力1500以上が攻撃できなくなる《平和の使者》
  • 攻撃力1500以上を破壊して除外する奈落の落とし穴
  • 攻撃力1500以上を3ターンにわたって場と手札から殲滅する死のデッキ破壊ウイルス》(旧効果)
など、初期の環境で活躍していた「攻撃力の高いカードを使用不能にする」系のカードをことごとく食らうのである。ちっとも攻撃力高くないのに。

モリンフェン様が弱いとされるのは、「中途半端な攻撃力がある」のが原因
この余計な50がなく攻撃力が1500だったならここまでネタにされなかっただろう。
頑張ってバイトした結果年間所得が103万円をわずかに超えてしまい、所得税を取られてかえって損をする」みたいなヤツなのである。


なぜモリンフェン様はこんなステータスなのか

前提として、遊戯王OCGで最初に使われていた「公式ルール」は原作の王国編までと同様に「リリース(旧生け贄)」というシステムが存在しなかった事を理解する必要がある。

どんなに星の多いモンスターでも手札からポンと出すことができたので、最強カード《青眼の白龍》を先に引いたほうが勝つという超大雑把なルールであった。
つまり、このルールにおいて、☆の数は単にステータスの強さの現れ程度の意味しかない。

一応、公式大会用に生け贄の必要な「エキスパートルール」も発売後数ヶ月で既に制定されてはいたのだが、ネットが普及していない時代であった事、原作ではまだ「生け贄」ルールが導入されていなかった事、当時としては複雑だった事もあり、販売する側にも遊ぶ側にも標準ルールとして認識されるにはやや時間がかかった。


そんな訳で、最初期のカードは現在のように「この攻撃力で☆5は弱すぎるのではないか」等と深く考えてレベルの数を設定されていなかった。
もっと機械的に「攻撃力と守備力の合計÷700=レベル(小数点以下切り上げ)」という基準で☆が付けられており(一部例外はあるが)、この基準では、攻守の合計が2800以下ならエキスパートルールで生け贄の必要ない☆4、2900以上になるとエキスパートルールで生け贄の必要な☆5となる。

そしてモリンフェンの攻守合計は2850と境目。切り上げなら☆5になるのは当然と思いきや、同じく初期の攻守の合計が2850のカードである《アックス・レイダー》《ケンタウロス》《闇晦ましの城》《幻影の壁》はいずれも☆4であり、☆5なのはモリンフェンだけとなっている。
特にケンタウロスは攻撃力1300/守備力1550とモリフェリンと攻守が逆なだけなのに☆4である。モリンフェン、不憫。

残念なのは1550の50の部分である。
あと50低ければ文句なしに☆4モンスターになり、しかもキラー・トマトなどを利用できるハズだったのだ。

ちなみに、モリンフェンの封入されたパック「Vol.4」では原作で遊戯も使用した超強力な上級カード《デーモンの召喚》や、後に禁止カードとなる(現在は無制限)《聖なる魔術師》などがパックの目玉カードとして登場したので、大多数のデュエリストにとってモリンフェンはハズレとして見向きもされないような扱いをされていた。


なお過去には遊戯王最弱上級モンスターの座はこの《モリンフェン》のほか、純粋にステータスが弱いレオ・ウィザード》《シェイプ・スナッチ》の間で争われていた。


崇拝

その弱さゆえ、一部のファンからは「モリンフェン様」と呼ばれ崇拝されており、【モリンフェンビート】というファンデッキを組む猛者がいたり、2chのオリカスレでは専用のサポートカードが作られたり、挙句の果てにはモリンフェン様を崇拝するためのWikiが作られたりしている。

敢えてこのカードの利点を挙げてみると、
  • 闇属性・悪魔族・通常モンスターのサポートカードを利用できる
  • 攻撃力1600以下というモリンフェン様のためにあるかのような指定を持つ《カオスエンドマスター》でリクルートできる
  • BF-疾風のゲイル》など闇属性星3チューナーとシンクロすれば満足竜が出せる
  • フィールドに出さずともHEROと融合して《E・HERO エスクリダオ》になれる
  • モリンフェン様を勝手にライバル視している《エンゼル・イヤーズ》とシンクロして完全体の《カオス・アンヘル-混沌の双翼-》が出せる
  • 《戦士抹殺》で破壊されない
  • 手札コストになる
  • ダーク・ネクロフィア》のコストになる
  • ダーク・アームド・ドラゴン》の(ry
  • 《魔のデッキ破壊ウイルス》の効果を受けない最低攻撃力
  • その中途半端な攻撃力によりダメージ計算で相手を疲労させる
  • 相手のLPが1550以下の時に直接攻撃で勝利できる
  • 普段駄レスしか出来ないヤツでも、モリンフェン様の名を出すだけで沢山返レスがつく
  • メインデッキに投入出来る為、エクストラデッキの採用枠を圧迫しない
  • 厄介なデメリット効果を持たない
  • 《ドラゴン族・封印の壺》に引っ掛からない。社長もびっくりだね!
  • エクシーズモンスターでないので儀式のリリースやシンクロ素材になれる。
  • キラー・トマトでリクルート出来ない最低攻撃力………あれ?
etc.

あれ、モリンフェン様って、もしかして強いんじゃ…



…というのは箇条書きマジックだが、上記3つの点からサポートカードはそこそこ多く、特にカオスエンドマスターのリクルート効果は結構ありがたい。
現在では、この効果を受けられないダーク・キメラ等をはじめとする他の弱小カードよりはマシな立場と評する人は多い。
攻撃した後、「緊急同調」でバトルフェイズ中にシンクロ素材として使うこと等もできる。
高攻撃力メタが軒並み刺さる点についても、そもそもそれらの使用率が下がった事や、奈落の落とし穴と対を成す、攻撃力1500以下を除外する《断絶の落とし穴》の登場などで目立った弱点とは言えなくなった。
攻撃力1500ちょうどのモンスター「解せぬ」

モリンフェンでカッコ良く相手にトドメをさせば、相手の精神にオーバーキル級のダメージを与えられることは間違いない。
不動遊星はこう言っている。「この世に数多あるカードに、役に立たないカードなど一枚もない」と。


余談

ネタにされている事が公式にも把握されているようで、実は歴代アニメの中にちゃっかり4回も登場している。
GXではプロのデュエリストの目にとまりデュエルで使用されていた。
ARC-Vでは沢渡に「クズカード」と呼ばれ捨てられている。

公式のTwitterでも度々このカードは紹介されており、世界大会の宣伝でも環境トップの青眼彼岸のカードと一緒に並べられている。

また、2016年の公式イベント参加の条件の一つにモリンフェン3枚を持参という条件があった。

その後2017年9月8日~9月22日に人気上位2枚のイラストをスリーブ化するカードイラスト大投票が行われ、中間発表では1位になる暴挙で話題となりその後もトップを維持していたが、最終結果では3位に転落してしまいスリーブ化の機会を逃してしまった…かに思われたがこの度人気を顧みて特別にモリンフェン様のスリーブ化が決定した。

更にはスリーブ化告知と同時に公式から「モリンフェン+イグナイト」のデッキレシピも公開されモリンフェン様の活躍の幅を広げることとなった!正直モリンフェン様でなくてもよくね?


2018年には「トーナメントパック2018 Vol.1」に収録され、実に17年ぶりにOCGで再録された。
同じく2018年には遊戯王デュエルリンクスでモリンフェンのアクセサリー(プロテクターとデュエルフィールド)が登場した。


アニヲタWikiが消滅し、現在のアニヲタwiki(仮)への移住が始まった際、真っ先に建てられた項目はこの「モリンフェン」の項目だった。


このカードの元ネタはMtGのWeatherlight収録のクリーチャー「モリンフェン/Morinfen」だと思われる。
こちらは特にネタにはされていない。



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最終更新:2024年03月02日 01:12

*1 ちなみに現在のOCGにおける下級モンスターの攻撃力ラインは1800~2000である。